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千葉県産業情報ヘッドライン【連載特集】「職場における安全配慮義務 ~社員が辞めない組織をつくる~ 」バックナンバー

  • [2021年12月9日]
  • ID:3115

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      職場における安全配慮義務 ~社員が辞めない組織をつくる~
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                         第1回  安全配慮義務の概要

 はじめまして、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回から6回にわたって、社員が辞めない組織を作るために重要である、職場における
安全配慮義務をどのように取り組んでいけばよいのか、またその注意点やポイント等につ
いてわかりやすく解説していきたいと思います。

 第1回目の今回は安全配慮義務の概要をテーマにお話しします。

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>>> 安全配慮義務とは??
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 字のごとく、「安全」に社員が働けるよう「配慮」する「義務」が企業側にある事を、
『安全配慮義務』と言います。この安全配慮義務は、使用者と労働者間の雇用契約のルー
ルについて定める労働契約法第5条に定義されています。

(抜粋)労働契約法第5条
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働ができ
るよう、必要な配慮をするものとする。」
 
 つまり、企業が社員を働かせる中で発生しうる問題(労働問題)に対して、企業は何に
取り組むべきかを考え、労働問題が起こらないよう行動し、そして万が一社員に起こり得
る問題発生リスクを最大限軽減するように配慮しなければならないという事です。

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>>> 会社でよく起こる労働問題とは??
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 会社でよく起こる労働問題を挙げると、例えば、労働災害や過労死、過労による精神疾
患、パワハラ、セクハラ、職場内のいじめや嫌がらせ等、会社が存在する数だけ他にも沢
山の問題が発生します。よって、この安全配慮義務については、企業が社員を雇用した際
には、必ず日常の社員のマネジメントを行う際に企業は意識しなければなりません。

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>>> 安全配慮義務の「配慮」とは??
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 安全配慮義務と聞くと、あくまで企業は「配慮」するのみで良いのかと考える企業も多
いです。例えば、「うちの会社では配慮するべき事はやるだけやってるよ。」「他の会社
はここまでやってないから十分だよ。」など、企業の主観的な考えのみで安全配慮義務に
取り組んでしまう事もあります。そうなると、「第三者」から見て客観的に各会社の配慮
義務の内容を比較した際に、企業それぞれの安全配慮義務に対する意識の差や取組内容に
違いが出てきてしまうのは当然です。
 この「第三者」という単語が安全配慮義務には非常に大事です。会社がいかに社員を安
全に働かせるよう配慮していたとしても、万が一会社内でトラブルが発生した際に、その
会社と社員の事を知らない「第三者」が当事者同士の事情を聞いた時に、「それは会社が
安全配慮義務をしっかりやっていたね。」と理解してもらえる程度に対策しておく事が企
業にとって重要です。

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>>> 企業が安全配慮義務の対策を怠るとどうなるか??
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 この安全配慮義務を怠ると、労働契約法違反となります。この労働契約法は民法で定め
る雇用契約の定義を更に詳しく説明した法律となり、安全配慮義務違反を起こした場合の
法的な罰則事項はありません。ただ、労働者が企業に対して安全配慮義務違反を理由に民
事裁判を起こした際の損害賠償請求は、非常に多額になるケースが多々発生しております。
上記で労働問題の事例として挙げたトラブルのケースにより違いますが、少額の損害賠償
請求額から何億円という損害賠償請求額になる事もあります。
 この損害賠償請求には、治療に必要な「医療費や交通費」、会社で就業できなくなった
場合の「休業補償」、例えば万が一障害が残った場合に将来働ける分の給料が貰えなくな
った分の生活補償的意味合いの「逸失利益」、労働者の精神的なダメージによる「慰謝料」
等を理由に請求額が異なります。ですので、安全配慮義務違反となった対象の従業員の年
齢や役職、業務内容によっては多額の損害賠償請求額となる事もあります。

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>>> 安全配慮義務違反から波及する更なる問題とは??
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 安全配慮義務違反を基に社員が企業に対して裁判を起こすと、例えば、未払い残業の支
払いや有給休暇の未消化、不当解雇等、対象社員や対象でなかった従業員からも会社の労
務管理や人事制度に対しての指摘や改善要求等の問題が、会社内に大きく波及する事もあ
ります。また、安全配慮義務違反とされた企業は、会社のイメージや評判が低下してしま
う事で、採用力の低下や離職率の上昇に繋がり、人材の確保難をもたらし得る事も企業と
しては注意しなければなりません。
 
 次回は、「コロナ禍における安全配慮義務に係る課題」について解説します。


        第2回 コロナ禍における安全配慮義務に係る課題

 こんにちは、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回は職場における安全配慮義務の第2回目として、コロナ禍における安全配慮義務に
係る課題やポイントについてお話しします。

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新型コロナウイルスの影響による働き方の変化とは??
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 新型コロナウイルスの蔓延は、会社と従業員間の雇用関係や職場環境への大きな変化を
もたらしました。人との接触を減らす事を目的とした在宅勤務やテレワークの実施が例に
挙げられます。職場に来て業務を行う事から、自宅やサテライトオフィスで業務を行う事
にやり方が変更されたことで、日常の業務がやりにくくなったり、社員同士のコミュニケ
ーションの減少に繋がったり等が見られました。

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コロナ禍で起きうる労働問題とは??
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 上記で説明しました通り、業務がしにくくなることで通常よりも多くの労働時間がかか
ってしまう事による残業時間の増加や、過労による心身への過重な負荷・メンタルヘルス
不調による就業能力の低下、また従業員ごとの業務の達成度、進捗等の不透明感による従
業員間の不満の蓄積、それに伴うハラスメントやいじめ、嫌がらせ等、多くの労働問題が
各会社で聞かれるようになりました。
 「在宅勤務やテレワークだと上司は従業員の働きぶりをずっと監視出来ないから、前よ
り楽に働けるでしょ。」と考える経営者の方もいらっしゃるかと思いますが、一方では上
記に挙げた労働問題も発生している事を理解しておくことが重要です。

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新型コロナに感染しない職場作りへの配慮とは??
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 これまではコロナ禍での「労働問題」の側面から安全配慮義務についてお話してきまし
たが、もう一つ注意しなければならない側面として、「新型コロナウイルスに感染する恐
れのない職場にしようと企業は配慮しているか」という事も重要です。労働安全衛生法第
68条では、新型コロナウイルス等の伝染病にかかった従業員の就業禁止を定義しています。

(抜粋)労働安全衛生法第68条
「事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者
については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。」

 ただ、従業員が新型コロナウイルスに感染した経緯として、会社の劣悪な職場環境が影
響していたとなると、「従業員が自身の安全を確保し労働する為に企業が配慮出来ていな
かった」となり、企業の安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

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コロナ禍でも安全に就業できる職場とは??
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 上記の理由から、従業員が新型コロナウイルスに感染するリスクを会社がいかに減らし
ていくかについて、日頃から企業は真剣に考え、そのために取るべき対策を確実に行動に
移していく事が重要です。例えば、厚生労働省から出されている「新型コロナウイルス感
染症対策の基本的対処方針」や「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止す
るためのチェックリスト」を使いながら、会社が従業員の新型コロナウイルスの感染を防
ぐための対処策を練る事が重要です。ただ、会社の業種によっては対処すべき事項が特殊
である場合や、会社の規模によってはチェックリスト全ての事項に関して対処する事が困
難な場合等、どう対応していけばよいか戸惑う経営者の方もいらっしゃるかと思います。

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まず始めるべきコロナ対策の職場づくりとは??
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 コロナ禍でも安全に就業できる職場作りの為には様々な対処策がありますが、会社がま
ず最低限対応するべきこととして、
(1)上記厚労省のチェックリスト等を見ながら、対策済み/未対策/今後対応すべき事を
   社内で整理する
(2)整理した内容を宣言書、通知文として作成し、その内容を会社から従業員へ周知する
(3)従業員側が民主的に決めた労働者代表と経営者間で、宣言書や通知文についての意
   見をもらい、労使での合意書を取り交わす
(4)都度従業員から出てきた相談に関して対応する担当者を決定し、会社は誠意対応する
以上が、コロナ禍における企業の安全配慮義務を遂行する上で重要です。

 次回は、「労働者の定着と使用者の安全配慮義務」について解説します。


         第3回 労働者の定着と使用者の安全配慮義務

 こんにちは、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回は職場における安全配慮義務の第3回目として、労働者の定着の為に必要な使用者
が安全配慮義務に取り組むべき意義やポイントについてお話しします。

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会社の人材確保難の現状とは??
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 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少などを背景に、各企業が従業員を採用する事は大
変難しいという現状があります。また、新規大卒就職者の3年以内の離職率が約3割という
統計が出ているように(参照:厚生労働省「平成29年3月卒業者の状況」)、人材を採用
できたとしても、すぐに会社を退職してしまい、なかなか従業員が定着しないという事実
もあります。
 今回お話する安全配慮義務も、会社が真剣に取り組む事で、労働者の定着に大きく影響
する非常に重要な内容です。従業員が安全で健康に働ける事が、職場の離職率低下の抑制
に繋がるという事を、アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ氏は「動機
付け要因」と「衛生要因」の二要因理論で唱えています。
 つまり、給与や福利厚生、人間関係等「会社の職場環境が整備されていないと、社員が
不満を感じる」という事です。例えば、就業意欲がそれ程高くなかった従業員が、会社の
職場環境が悪い事を憂いて突然辞めてしまう等が挙げられます。

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コロナ禍だからこそまずは安全配慮義務の徹底を
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 新型コロナウイルスの影響により企業の売上低下が長期的に続く影響で、従業員を一時
的に休業させなければならなかったり、給料の減額や福利厚生等を見直さざるを得なかっ
たり等雇用の維持に四苦八苦する企業も増えてきております。
 このようなコロナ禍の雇用状況について、もちろん企業として従業員にしっかりと状況
や事情を説明し、必ず会社側の対応の方向性や意図について、雇用する従業員の納得や合
意を得る必要があります。また、それと同時に、従業員に対して安全で健康に働ける環境
を提供できているかに関しても、企業が日頃から積極的に情報発信する事が非常に重要で
す。働く従業員も、コロナ禍で給料が一時的に下がってしまうという今の日本の社会背景
を頭の中では理解しつつも、いじめや嫌がらせ、ハラスメント、コミュニケーションの低
下、メンタルヘルス不調等の労働問題が重なって発生すると、「このままこの企業で働い
ていて大丈夫なのか?」と就業を継続する意欲が低下し、その後退職者の増加に繋がって
しまう事があります。

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社員の定着率アップの為の安全配慮義務対策とは??
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 退職者をいかに減らし、長く従業員に会社で働いてもらうかが定着率アップの為に重要
です。その為には以下の二つの視点から企業は安全配慮義務対策に取り組む事が重要です。
(1)社会情勢的に会社が対応すべき内容に着手する
 例えば、今のご時世ですと、新型コロナウイルス感染症に罹患するリスクを抱えながら
業務に取り組む従業員の不安をいかに減らす事が重要であるという話題が、テレビ等のメ
ディアや親戚・友人等の日常会話で語られる事で社会情勢的に注目されるようになってき
ました。その為、会社はそのような社会情勢の背景を理解しつつ、安全配慮義務を遂行し
ているという具体的な対策として、
・テレワークを徹底する
・テレワークが難しい業種であれば、デスクの距離を離したり、休憩や食事の時間をずら
したりする
・小学生等の子供を持つ従業員の為の特別休暇を整備する
・従業員がコロナワクチンを接種するための休暇を整備する
等、企業は従業員が安全に働けるよう配慮し、社内環境の整備に取り組む事が重要です。
(2)従業員ごとの特性や性格、価値観等を考慮して対応する
 会社に在籍する社員の中には、様々な価値観で働いている従業員がいます。
例えば、
・就業時間が終わったら定時で帰りたい
・残業してでもやりがいのある業務に取り組みたい
・有給休暇等の休暇を取りたい
・自由奔放に仕事を任せてほしい
・一つ一つ丁寧に教育してほしい
等、皆様の会社の従業員を思い出して頂ければ、色々な価値観の社員がいる事をご納得さ
れるかと思います。そのような社員の様々な希望や考え方を認めず、会社の一方的な指示
の下働かせてしまえば、従業員の不満や精神的な負荷が高まり業務効率が低下したり、メ
ンタルヘルス不調になったり、またそれが影響して他の従業員や上司、部下に対して高圧
的な態度を取ってしまったりと、会社の職場環境をさらに悪化させてしまう事に繋がるケ
ースがあります。
 安全に働かせる配慮とは、残業時間の減少や過大な業務量等、他者からはっきり見える
「物理的」な部分だけでなく、「働き甲斐」や「働きやすさ」等の従業員自身が本当に求
めている「心理的」な部分からもアプローチ・対策する事が、より良い職場環境を築き、
会社が円滑な安全配慮義務を遂行できる事に繋がります。

 次回は、「『問題社員』への対応方法」について解説します。


                           第4回 「問題社員」への対応方法

 こんにちは、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回は職場における安全配慮義務の第4回目として、「問題社員」への対応方法やその
注意点についてお話しします。

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問題社員とは??
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 問題社員は具体的な定義としては決まっておらず、「この社員は問題社員だ」と考える
範囲は会社によってまちまちです。ただ、企業の皆様が考える問題社員の代表例としては、
・仕事中の指示を全く聞かない
・他の社員とのコミュニケーションを取らない
・周りと協力して働こうとする協調性がない
・会社が求める能力に著しく足りていない
・無断欠勤や早退、遅刻が多い
・非違行為を行い、会社に迷惑をかけている
事が挙げられるかと思います。上司や部下等の関係当事者のみが問題社員と考えているだ
けでなく、他部署の人からも訴えがあるなど複数の人からクレームが来ていたり、またそ
の問題が今後職場全体に大きく波及する可能性があったりする事などが「問題社員」の行
動として考えられるでしょう。

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問題社員をそのままにしておくと職場はどうなるか??
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 上記で述べた通り、問題社員がそのまま職場で働いていると、チームで働く従業員の士
気や業務効率の低下を引き起こすケースがあります。また、対外的な顧客への営業力が落
ち込んでしまったり、顧客満足度の低下によるクレーム対応が増えたりする等のマイナス
面もあります。
 また、会社によっては業績や成果を基に給与や賞与等の人事制度に反映している所もあ
る為、問題社員の行動次第では周りの社員の就業環境が乱され、その結果思うような成果
を周りの社員が発揮できなくなり、就業意欲低下による残業の増加やメンタルヘルス不調
の発症等、社員の心身の健康に影響を与えてしまうケースがあります。
 しかしながら、周りの社員は問題社員だと思っていても、問題社員である張本人は自分
の行動や考え方は特に問題ないと考えている等、当事者同士の認識に大きく違いがある事
が会社のよくある悩みとして聞きます。
 よって、企業が問題社員対策に真摯に取組み、安全配慮義務を遂行していくステップ1と
して、その当事者同士の認識の違いを埋め合わせる作業が重要です。

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当事者同士の認識の違いを埋め合わせる作業とは??
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 問題社員の行動には、その行動の裏付けとなった原因やきっかけが必ずあります。周り
の社員から報告を受けて、最初から「あの社員は問題社員だ。」と経営者や人事担当の方
は決めてかかるのではなく、必ず
・問題社員とされている社員
・問題社員について報告をしてきた社員
・上記当事者の上司や同僚等の関係部課の社員(上記当事者に合意を得てからが望ましい)
にヒアリングを行い、現状把握を行う事が重要です。上記当事者同士でのヒアリングを行
う中で、当事者同士の話している内容の中に矛盾点やズレが生じるので、そのポイントに
絞ってさらに面談やヒアリングをする事が大事です。

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現状把握から分かる職場・業務改善のポイント
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 問題社員対策に真摯に取組み、安全配慮義務を遂行していくステップ2として重要な事は、
問題社員を含めてヒアリングした結果から判明した、職場内の業務改善や風土改善を行う
ために、「具体的に何が出来るか、どのように対応していくか」を企業として真剣に考え
ていく事です。例えば、
・社員の業務進捗管理の方法が適切かどうか
・各社員への業務分担にばらつきがないかどうか
・社員同士、上司から部下へのコミュニケーションの方法に問題点がないかどうか
等ポイントごとに改善できる内容を考えて、各部課のリーダー職や上長に対応策を報告し
てもらうようにしましょう。

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就業規則等で会社全体に周知徹底する
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 問題社員対策に真摯に取組み、安全配慮義務を遂行していくステップ3として重要な事は、
会社全体のルールブックである就業規則や服務規程の適宜見直しを行い、会社で働く社員
全体に対するメッセージとして、宣言書や通知文を作成する等の社内への周知徹底を行う
事です。当事者同士やその関係者だけの問題だけでなく、当事者ではない他の部署の社員
にも就業する上で身に着けておくべき姿勢として共有し、会社としてあるべき社員の模範
例を就業規則等で規定しておくことが重要です。また、就業規則で規定する事は、今後入
社する社員や会社を退職してしまう方へ「問題が起きた際に都度対処し、良い就業環境に
しようと会社が配慮してくれている」事を理解してもらう意味でも重要です。そうする事
で、今後企業で新卒・中途採用活動を行っていく上でも、上記のようなひたむきに職場風
土を改善しようとする姿勢は、企業イメージの向上に繋がり、採用力や定着率のアップに
寄与すると考えます。

 

         第5回 男女共同参画・女性活躍推進に係る留意点

 こんにちは、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回は職場における安全配慮義務の第5回目として、男女共同参画・女性活躍推進に
係る企業で留意すべき点やその際のポイントについてお話しします。

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男女共同参画・女性活躍推進とは??
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 少子高齢化による日本の生産年齢人口の減少に伴い、多様なバックグラウンドを持っ
た人々が、就業する上での制限を出来るだけ無くしていく事で、働き手の確保を促進し、
将来の日本を積極的に担っていく人々の数を増やしていく『一億総活躍社会の実現』が
安倍前首相の時代に提唱されました。その『一億総活躍社会の実現』の取組の例として、 
「女性も男性もみんなが包摂され活躍できる社会」や「女性が輝く社会」を築いていく
為の法律や施策の整備が、「働き方改革」の一環で進んできています。

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「働き方改革」に伴う各種法律や施策の整備内容とは??
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 このような働き方改革の取り組みの為に、日本では現在各種法律の改正がされ、また
それに伴い企業へ具体的な取組をするよう促す施策の整備が進んできています。
 代表的なものとして「育児・介護休業法」があります。2017年1月1日の大改正(最長
2歳まで育児休業の再延長が可能になった事、マタハラ・パタハラなどの防止措置義務の
明確化)を筆頭に、今年2021年1月1日の改正では、子の看護休暇・介護休暇が1時間単位
で取得できるようになった事等、女性も男性も仕事と生活の両立がしやすくなるような
整備が進んできています。
 また、今後予定される改正内容として、社内での育児休業制度の周知義務や労働者に
対して育児休業を取得するかの意向を確認する義務、また育児休業等を利用しやすい雇
用環境の整備義務等、法律の改正だけでなく、各企業に実際の行動に移してもらうよう
な整備が始まってきています。

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「男女共同参画・女性活躍推進×安全配慮義務」とは??
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 上記のような男女共同参画や女性活躍を推進する社会を目指していく為に、様々な法
改正や環境の整備がされている中で、これまでお話してきた「企業の安全配慮義務対策」
がどのように関わってくるのかというお話をしていきたいと思います。
 例えば、出産後も自身のキャリアを磨き続けたいと思っていた女性の従業員が、出産
後は軽易な作業を任されたり、自身のこれまでの職歴と関係ない業務に就かせたりする
事で就業意欲が低下し、上司や同僚、部下との軋轢が生じ、ハラスメントやうつ、メン
タルヘルス不調の問題に発展し慰謝料や損害賠償請求の問題に繋がる事も考えられます。
また、大きな損害賠償金の問題にならなかったとしても、仕事と生活の両立が出来ない
事で会社を退職してしまったり、その様子を見ていた周りの従業員が自身の将来の働く
姿を描けず、ドミノ式に退職してしまったり等の問題が発生する可能性はあります。男
性社員、女性社員どちらも安全かつ健康に働けるよう企業が配慮する事は非常に重要です。

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まず企業が取り組むべきポイントとは??
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 そのような背景から、企業が積極的に男女共同参画・女性活躍推進社会に向けた具体
的な取組を行う事が重要ですが、まず何から取り組むべきかをお伝えしたいと思います。
 その代表的なものとして、
・社内の従業員の男女比率、年齢比率、社歴、業務経験等の事項を従業員ごとに整理する
・今後社内で特に男女共同参画・女性活躍で取り組むべき、周知するべき事項をまとめる
・厚生労働省等から出ている法改正・施策資料を利用し、勉強会・意見交換会を行う
・育児休業や介護休業等、実際に従業員から取得の意思表示があった場合は、制度周知よ
りもまずは本人との面談やヒアリングを特に熱心に取り組む
等が重要です。法改正の内容や厚生労働省から出ている企業の事例等を参考にして、企
業が何に取り組むべきかを考える事も重要ですが、まずは企業の風土や体制、そして財
務面等を総合的に考慮して「長期的かつ無理なく」男女共同参画・女性活躍推進に取り
組む事が重要です。その為には、まず自社の現状をよく見つめ、より良い会社にする為
の行動や解決策を考え、実際の行動に移す事が重要です。そして、その企業の取り組み
が企業目線の一方向の取組に終始するのではなく、従業員の気持ちを汲み取った双方向
での取組にする為にも、勉強会や面談等の従業員と直接意見交換を行える機会を持つ事
が重要なポイントとなります。

 次回は、「職場環境の改善策」について解説します。


                                  第6回 職場環境の改善策

 こんにちは、社会保険労務士の田村陽太です。
 今回は職場における安全配慮義務の第6回目として、皆様の会社でこれから安全配慮義
務を遂行する為の職場環境の改善策についてお話しします。

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なぜ我が社は職場環境を改善すべきか考えてみる事
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 今まで5回の連載にわたって、各企業が安全配慮義務に取り組むべき意義や具体的な事
例をご紹介しながらお話させて頂きました。従業員が安全かつ健康に働ける就業環境を作
れるように配慮しなければならない事を「会社の絶対的な義務だ」と考えすぎてしまうと、
・会社が最低限やるべき取組は何なのか?
・会社が訴えられない為にはどうしたら良いのか?
・ここまで安全配慮義務対策をして本当に意味あるのか?
と会社の取組自体が後ろ向きの気持ちになり、日々の業務改善や職場風土の向上等の取り
組みが長期的に継続できなくなる事がよく起こります。
 企業の安全配慮義務対策を長期的により良いものとする為には、企業が達成したい目標
をまず一つに絞る等、「なぜ我が社は職場環境を改善すべきか」を真剣に考えてみる事が
大事です。

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目標を「ミニ目標」に分け、その為の解決策を抽出する
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例えば、「なぜ我が社は職場環境を改善すべきか」を「若手社員の採用数を増やすため」
という目標に設定するのであれば、20代の求職者の心に刺さるように
・残業時間をあまり多くしないようにする
・休日・休暇を取得しやすくする
・即戦力として重要な仕事を任せるようにする
というように、企業がまず達成すべき「ミニ目標」を作ります。次に、その各ミニ目標を
達成するために会社が取り組むべき解決策を抽出します。例えば、
(ミニ目標)                (解決策)
・残業時間をあまり多くしないようにする       →社員間の業務分担の偏りを無くす
・休日・休暇を取得しやすくする                →稟議・承認作業の簡素化で業務効率を
                            向上させる
・即戦力として重要な仕事を任せるようにする→社員の業務の抱え込みを無くす
というようにリストアップします。

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社内リスクの洗い出しが安全配慮義務対策に繋がる
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次に、現在の会社が抱える課題を仮にそのまま放置していた事により、将来的にどんな社
内的リスクが発生していたかを洗い出します。
(課題)              (リスク)
・社員間の業務分担に偏りがある状態 →就業意欲の低下、メンタルヘルス不調
・稟議・承認作業の複雑化        →残業・労働災害の増加
・社員の業務の抱え込みがある状態   →従業員同士の不平不満、ハラスメント
このように会社でまず達成したい経営目標を考えていくと、おのずと会社で取り組むべき
現状の課題や、そのまま放置していたら安全配慮義務違反となっていただろう原因のリス
クの抽出する事ができ、企業が前向きかつ長期的に安全配慮義務対策に取り組む事に繋が
ります。
 その理由として、企業が裁判等で安全配慮義務違反となる際のポイントは、「従業員の
心身の健康が害される事を会社が予測できる可能性があったか(予見可能性)、企業はそ
のリスクを事前に回避する義務を果たしたか(結果回避義務)」の二点が重要であるから
です。今までの裁判例を見ても、上記「予見可能性」「結果回避義務」の二点に関して企
業が誠意を尽くして対応出来ていたかが争点になる傾向が高いです。その為、会社として
は、まず安全配慮義務違反となる社内の労働トラブルは具体的に何かを理解し、それを引
き起こしかねない今の社内の風土や業務効率向上等における課題は何かを認識する事が大
事です。
 そして、その課題を克服するために会社で対応すべき解決策を考え、安全配慮義務違反
という悪い結果にならないよう、会社で前向きに安全配慮義務違反にならないようリスク
を回避する努力をしていく事が非常に重要です。

 本日までの全6回にわたって、「安全配慮義務」というテーマでお話させていただきまし
た。難しいお話にならないよう、皆様の事業活動でよくある事例をふまえながら精一杯お
伝えしてきました。
 企業が目指すべき経営目標に向かって前進しながら、法律や労働トラブル等様々な人事
労務の事項に関わっている「安全配慮義務対策」に今後とも関心を持っていただければ幸
いです。今までお読みいただき、誠にありがとうございました。

              社会保険労務士事務所 Sun&Career 田村 陽太
              https://www.srcc-suncareer.com/
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