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千葉県産業情報ヘッドライン【連載特集】「ブラック企業と呼ばれないための労務管理」バックナンバー

  • [2023年9月21日]
  • ID:3476

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ブラック企業と呼ばれないための労務管理

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 第1回「日本企業の労務の現状」

こんにちは。社会保険労務士の假谷(かりや)と申します。

今回から、「ブラック企業と呼ばれないための労務管理」をテーマに6回の連載

をさせて頂きます。皆様の企業経営の一助にしていただけますと幸いです。

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(1)ブラック企業と呼ばれないためにどうすべきか?

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ひところブラック企業という言葉がはやりました。

ブラックかグレーかホワイトかという議論がなされることもあります。

しかし、たいていの場合、ブラックか否かということは、主観で話されることが多く、

一つでも法律違反(と考えられること)が起こると、「□□社ってブラック企業

だよね」と噂する関係者がでてくることもあります。

ブラック企業と呼ばれないために、重要な対策は2つあります。

 〇労務のトレンド(注目をされていること)を理解すること

 〇正しい法律を理解すること

です。

今回は、まず昨今の労務のトレンドを知っていただくために、厚生労働省の統計

を解説します。

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(2)厚生労働省の統計から労使紛争の現状を知る

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厚生労働省は、毎年この時期(7月の初め)に前年度の「個別労働紛争解決制度

の施行状況」を発表します。

日本中の労働基準監督署や労働局へどのぐらい相談があるかという統計です。

結果は以下の通りです。

令和4年度の総合労働相談件数は

 約125万件(124万8,368件)

 前年度比0.5%アップ

 100万件を超えているのは15年連続

数字が大きすぎてぴんと来ない方も多いかもしれません。

数字を少し小さくするためにウィークディ(行政機関の営業日)で割ってみましょう。

124万8,368件を242日で割りました。

 一日当たり5,158件

です。

日本には47都道府県あります。これを47で割ると約110件。

つまり、今日も日本の国のどこかで

一日約5千件、一都道府県では約100件の相談があるということになります。

もっとも、この数字は氷山の一角です。

企業内で起こっているトラブルは、この数字の比ではありません。

筆者の肌感覚ですが、大きな労使トラブルは一つの企業で大体4年に一度程度

起こるようです。

ときどき、「うちの会社はまったく労使紛争がない」という企業に出会うことが

あります。

それは、企業努力によって従業員の労働環境が整えられているか、単に運が

よかったかのどちらかになります。

労働環境が整っている会社であれば、問題はありません。

しかしながら、多くの場合、労使紛争は対岸の火事ではありません。

もしかすると明日は我が身かもしれません。

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(3)行政へどんな相談が多いのか?

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労働相談には2種類あります。

法律に違反しているレベルの相談と、民事と呼ばれる契約がどうなっているか細かく

精査する必要のあるレベルの相談です。

前述の統計においても、法律に違反しているレベルの相談と民事上の個別労働紛争

相談がそれぞれ分けて発表されています。

トータルの相談件数は前述の通りです。

ここから民事を見てみましょう。

 民事の相談は年間27万2,185件

全体の約22%に当たります。

民事の相談内容のトップ3は以下の通りです。

 1位 いじめ・嫌がらせ

 2位 自己都合退職

 3位 解雇

「いじめ・嫌がらせ」は、平成26年(2014年)度から10年間、1位です。

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(4)昨今の法改正を受け知っておくべき法律

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労働諸法令は改正が多いといわれています。

その中でも、最低限知っておくとよいと考えられる労務管理に関する施策をこの記事で

解説していきます。

次回からご紹介するのは、以下の内容です。

 ●ハラスメントについて企業が気を付けること

 ●知っておくとよい最近の法改正など(2回に分けて)

 ●高齢者の活躍について

 ●中小企業の賃金の決め方

では、また次回お会いしましょう。


 第2回「ハラスメントについて企業が気を付けること」

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(1)増えたハラスメント(いじめ・嫌がらせ)

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パワハラ、セクハラ、マタハラ、カスハラ、モラハラ等々。

ハラスメントはたくさんの種類があります。

ハラスメントとは、「いじめ」や「嫌がらせ」です。

それが職場で行われている場合は、企業の責任となります。

労働諸法令で、規制をされているのは、パワハラ、セクハラ、マタハラ

(正確には、職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント

といいます)

の3つです。

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、公式なガイドラインはありませんが、

厚生労働省の出しているマニュアルがあります。参考にしてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

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(2)法規制があるハラスメントに企業はどう対応するか?

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法律によって定められている企業の義務は大きな項目で4~5つ

(ハラスメントの種類によって違います)、

小さな項目で10~11個ほどあります。

少し数が多いので、ここでは、重要なことを3つだけ説明します。

 1.ハラスメントが起こる前:起こらない施策をとる

 2.起こっている最中:相談窓口で相談を受ける

 3.起こった後:速やかに対応して行為者及び被行為者へのケアを行う

ということになります。

この施策において、問題となりやすいのは、

・「予防策」がとられていない

・「相談窓口」が機能していない

・「事件発生後」何の対応策もとられていない

のいずれかに該当する場合です。

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(3)ハラスメントの予防策とは

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法律では、ハラスメントの予防策とは、就業規則にハラスメントについて

記載をして、加害者に対する懲戒規定を定める、それを周知・啓発すること

とし、企業に義務付けています。

もちろん、法律上の義務ですので、就業規則に記載し、周知をすることは重要です。

しかし、予防策としてもっとも効果的なことは、啓発、つまり教育です。

もともと人類は子どものいじめから夫婦ゲンカ、大きなところでは国同士の戦い

(つまり戦争)に至るまでいさかいを止めることができずにいます。

子どものいじめを失くさずに大人のいじめや嫌がらせを失くそうということに

無理があります。

予防策として大切なことは人に嫌がらせや意地悪をしたり、悪口を言ったりする

ことは良くないことだということ、人と自分の価値観は違うものであり、

時に双方に正しさがあるということを教育することです。

本来、このような倫理的な教育は家庭や学校で行われるべきでしょう。

大人になってから、人格形成にかかわることを学んでも

なかなか修正できないからです。

しかしながら、子どものいじめがなくならない現状をみると

倫理や道徳的な教育が学校教育で機能しているとは考え難いです。

よって、あらためて企業での教育が必要になります。

ハラスメント、特にパワハラについては、「指導」と「ハラスメント」の線引きが

難しく、ことが大きくなると結果的に民事で争われることになります。

また、最近は「ハラハラ社員」という人もいます。

なんでもハラスメントだと言い、周囲を困らせるタイプの人たちです。

つまり、指導する側も、指導される側も、悪意をもった行動を慎むこと、

価値観の違いを認めお互いに相手の良いところを伸ばしていく関係性を保つ

ことを知る必要があります。

これを教育することが、防止策の一歩となります。

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(4)相談窓口を作ったら、担当者へ教育を

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法律上の義務だからとりあえず相談窓口を作ったという話を伺うこと

があります。

法律を守ることは結構ですが、その先の、相談窓口の担当者への教育が

大切になります。

傾聴というスキルは、トレーニングをしなければ身につかないものです。

また、ハラスメントの窓口という観点で考えた場合、「何をどう聴くか」という

点も重要になります。

時に相談窓口の対応によってハラスメントは、鎮火することも、炎上することも

あります。

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(5)事件発生後は、とにかく迅速に

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事件発生後の対策は「迅速」の2文字に尽きます。

企業が放置をしていれば、被害者は従業員を大事にしない会社であると思い、

加害者はこの程度のことは問題にしないい加減な会社であると判断をします。

場合によってはその行為は増長するかもしれません。

通報があったら、すぐに対応をしましょう。

では、また次回お会いしましょう。


 第3回「知っておくとよい最近の法改正など 前編」

今回と次回は、ブラック企業と呼ばれないために知っておくとよい最近の法改正

などについて2回に分けて解説をさせて頂きます。

法律の成立や改正には、必ず政府の意図があります。

政府には、世の中をこうしたいというビジョンがあり、それを実現するための

ツールが政策や法律です。

昨今、労務の世界で、政府は働き方改革に焦点を当てています。

働き方改革に関する法改正は多岐に渡ります。

ここでは、最低限知っておいていただきたい改正をピックアップして紹介いたし

ます。

まず冒頭に労働契約とは何かを説明します。

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(1)労働契約とは

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労働契約とは労働者と企業が対等の立場で結ぶものです。

対等の立場ですから、一度締結をすると、労使双方を縛るものとなります。

昨今企業側の義務違反が問題になることが多くあります。

しかし、労働者側にも義務は存在します。

労働契約が、労働者は労働をし、企業がその対価として賃金を支払うという

ものだからです。

まず、労働者には職務専念義務というものがあります。

契約した労働時間は職務に専念するという義務です。

つまり、業務中にインターネットサーフィンや私用のメール送信、あるいは

業務に関係ない私的な趣味を行うということは契約違反ということです。

問題は、日常的に企業がそれらを黙認している場合、民事で争ってもなかなか

認められにくいということです。

適切な指導は、その都度行い、記録に残すことが大切です。

また、労働者の自主的な残業を残業時間とするか否かというご相談も多く

あります。

労働時間とは、本来会社の指揮命令下にあるものとされ、労働者が自主的に行う

ものは労働ではありません。

しかし、こちらも、企業が知りながら黙認をしていると、「黙示の指示」と

いうことになり、明確に声に出して伝えてはいないけれど、暗黙のうちに指示

していたということになります。

日頃から正しい法律上の義務を労働者に伝え、適切な指導を行うように

しましょう。

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(2)「働き方改革」関係の法改正

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〇中小企業の月60時間超割増率の引き上げ

★2023年4月から施行

法律で定められている賃金の割増率は、以下の通りです。

 1日8時間1週40時間を超えた労働に25%の割増

 深夜労働(夜10時から朝5時まで)に25%の割増

 法定休日労働に35%の割増

これらのルールに加え、

 1か月60時間超の時間外労働に50%の割増

が施行されています。

このルールは大企業ではすでに(2010年より)施行されていましたが、

中小企業には2023年4月1日から適用されています。

この点において、気を付けるべき点は2つあります。

 時間外労働の多い企業は、総人件費が増えるということ

 賃金の計算を自社で行っている企業は、賃金計算ソフトの設定を変更する

 必要がある

ということです。

法律は社内のルールより優先します。

社内の賃金規程が古いから、支払わなくてよいというものではないので注意が

必要です。

〇年次有給休暇の取得義務化

★2019年4月から施行

年10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、年次有給休暇を

5日間取得させなければなりません。

〇建設業・運送業・医師等の時間外労働の上限規制

★2024年4月から施行

時間外労働の上限規制とは、以下の通りです。

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〇36協定で定める時間外労働の上限を原則として

月45時間、年360時間とし、特別な事情がなければこれを超えることができない。

〇特別な事情(臨時の業務)がある場合

以下のいずれも満たさなければならない。

 時間外労働が年720時間以内

 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

 時間外労働と休日労働の合計について、各月の平均(※)が全て1月当たり

 80時間以内

 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度

------------

(※)各月の平均とは「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」

「6か月平均」を指します。

大企業においては2019年4月から、中小企業においても2020年4月から時間外

労働の上限規制が適用されていました。

しかし、建設業・運送業・医師等は業務の性質から、すぐに働き方を変更する

ことは難しいと考えられ、5年間の猶予期間が設けられていました。

この猶予が切れるのが、2024年3月です。

よって、建設業・運送業・医師等のついても、2024年4月から一般の業務と

ほぼ同様に上限規制がかかることになります

(一部特例の適用が有りますので、業界ごとに確認をしてください)。

これは『2024年問題』とも言われ、法令が施行するまで、残り8か月を切りました。

該当業種の会社では、働き方を工夫する会社が増えています。

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(3)まとめ

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労働諸法令の改正は目まぐるしく、ついていけないという企業もたくさん

あります。

しかし、違反を続けていると最後には企業の存続が危ぶまれるようなことに

なりかねません。

ぜひ最低限の重要な改正を抑え、法律に沿った運営をしていきましょう。

では、また次回お会いしましょう。


 第4回「知っておくとよい最近の法改正など 後編」

皆さん、こんにちは。

今回は、ブラック企業と呼ばれないために知っておくとよい最近の法改正など

の後編をお届け致します。

2つのテーマに焦点をあて、全体像と周辺の法律を解説します。

テーマは、ワークライフバランスと同一労働同一賃金です。

どちらの施策も背景には日本の人口および労働力人口の減少という問題が

あります。

総務省によると、2022年9月15日時点での日本の総人口は1億2,471万人、

12年連続の減少となりました。

前年に比較して82万人減少、

82万人とは、佐賀県の人口とほぼ同じです。

総人口減少と同様に労働力人口(15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を

あわせた人口)も減少しています。

そのため政府は、就業人口(実際に働いている人口)を増やすべく、

様々な施策を打っています。

今仕事をしていない人を就業の場に呼び戻したり、近々仕事を辞める予定の

人たちを就業の場に慰留することです。

政府は働きやすい職場環境をつくることによって、就業人口を増やすことを

考えています。

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(1)ワークライフバランス

  (労働基準法 育児介護休業法 雇用保険法 健康保険法)

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ワークライフバランスにおいて、代表的なものは育児介護休業法の法改正

です。

子育て世代の働きやすさの改善と出生率の増加を目的として、2022年の改正で

産後パパ育休を導入しました。

従業員数1,000人を超える企業では、育児休業取得状況の公表が義務と

なりました。

また、育児介護休業法では、育児休業や子の看護休暇のみならず、介護休業や

介護休暇についても定めています。

出産、育児、介護に関する休業の制度が複雑でわかりにくいとお客様から

お問い合わせを頂くこともありますので、こちらに簡単にまとめます。

〇産前産後休業 女性のみ取得可能

 ・出産予定日から前42日(6週間)

    双子以上なら98日(14週間)

  出産日の翌日から56日(8週間)

 ・出産手当金の受給

〇育児休業 性別に関わらず取得可能

 ・育児休業(原則として子どもが1歳になるまで)

 ・育児のための所定労働時間の短縮措置等

  (子どもが3歳になるまで)

 ・残業などの所定外労働の制限

  (子どもが3歳になるまで)

 ・子の看護休暇(子どもが小学生になる前まで)(原則年5日)の取得

  (子どもが2人以上いる場合は年10日)

 ・育児休業給付金の受給

  (原則として子どもが1歳になるまで)

〇介護休業(一定の介護状態の対象家族の介護)

 ・介護休業の取得(上限93日間)

 ・介護のための所定労働時間の短縮等の措置

 ・残業などの所定外労働の制限

 ・介護休暇(年5日)の取得

  (対象家族が2人以上いる場合は年10日)

 ・介護休業給付金の受給

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(2)同一労働同一賃金という考え方

  (パートタイム労働法、派遣法)

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同一労働同一賃金とは、同じ仕事をしている人は、同じ処遇で働いてもらい

ましょう、という考え方です。

過去日本は終身雇用という文化を持っていました。

そのため、正社員(正規雇用)は定期昇給も賞与や退職金もあるけれど、

パートや契約社員、派遣社員等(非正規雇用)は給料も低めで賞与も退職金も

ないという慣行がありました。

それを、2020年以降、法改正をして、変えていこうということになったの

です。

原則として、同じ仕事、同じ責任の範囲、同じ働き方(転勤の有無等)で

あれば、処遇(給与や福利厚生、教育訓練)も同じにするということです。

逆に言うと、パートタイマーだから、派遣社員だからという雇用形態の差

のみで、処遇に差をつけることはできないということです。

法律の内容は細かく規定をされています。

そのために、どう対応していけばよいかわからないという声を伺うことも

よくあります。

しかし、法改正対策としては、まず基本の考え方を抑えるということから

始めてください。

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(3)何を実行すればよいか?

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労務の担当者は、前述のような基本の考え方を理解し、実際に仕組みを変えて

いく場合は、専門家の支援を求めることをお勧めします。

仕組みの変更には、細かい法律の要件があったり、就業規則の改定が必須と

なったりすることもあります。

日本の法律は、比較的難解な文章で構成されています。

それらをすべて労務の担当者が理解をして実行することは難しいものです。

ぜひ専門家の力を借りてください。

ちなみに、このメルマガを発行している千葉県産業振興センターも専門家派遣

を行っています。ぜひご活用ください。

では、また次回お会いしましょう。


 第5回「高齢者の活躍について」

前回日本の人口の減少についてお話をしました。

今回は高齢化率について説明をします。

日本の人口は減少し続けています。理由としては合計特殊出生率が1.3程度を

前後しているからです。

(厚生労働省によると、合計特殊出生率とは、その年次の15歳から49歳までの女性

の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が一生の間に生むとしたときの

子どもの数に相当するものといわれています。)

同時に高齢化率も増加の一途をたどっています。

総務省は2022年9月15日時点での高齢化率(総人口に対する65歳以上の人口の

割合)を29.0%と発表しました。 

高齢化率は約40年後の2065年には38.4%になるとも推測されています。

高齢者に関わる大きな法改正は、高年齢者雇用安定法、国家公務員法そして、

雇用保険法と年金法です。

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(1)定年年齢が変わる?

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現状、民間企業の定年年齢は60歳、そして再雇用は65歳までが義務とされて

います。

また、2021年4月より70歳までの再雇用が努力義務となりました。

国家公務員法も2023年4月改正施行されました。

国家公務員の定年(原則60歳)が2年ずつ1歳ずつ段階的に引き上げられ、

2031年度に原則65歳になるというものです。 

これを受け、民間企業の定年延長についても、議論が本格化する可能性が

ありますので、注意が必要です。

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(2)高年齢雇用継続給付の縮小

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定年後再雇用転換時に賃金が下がった場合、給付をされるものです。

現状は

 支給対象月の賃金が61%未満に低下した場合

 支給対象月の賃金の最大15%

が支給されるというルールです。

2025年4月から

 支給対象月の賃金が64%未満に低下した場合

 支給対象月の賃金の最大10%

支給されるというルールに改定されます。

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(3)年金制度の改定

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年金制度は2022年に大幅に改正されています。

主なものでも、

・繰下げ受給の上限年齢の引上げ

 老齢年金の繰下げの年齢について、上限が70歳から75歳に引き上げられ

 ました。

・繰上げ受給の減額率の見直し

 繰上げ受給をした場合の減額率が、1月あたり0.5%から0.4%に変更され

 ました。

・在職老齢年金制度の見直し

 60歳以上65歳未満の方の在職老齢年金について、年金の支給が停止される

 基準が見直され、65歳以上の在職老齢年金と同じ基準(28万円から47万円)

 に緩和されました。

・在職定時改定の導入

 在職中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給者について、年金額が

 毎年1回定時に改定が行われます。基準日である毎年9月1日に厚生年金保険

 の被保険者である場合は、翌月10月分の年金から改定されます。

があります。

これらには、働きながら年金をもらいやすくするという政府の意図があります。

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(4)まとめ

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人生100年時代と言われています。

人口も労働力人口も減少し、なかなか人が採れない、そんな時代です。

ぜひこれを機会に、企業も高齢者が働きやすい環境を整え、積極的に高齢者の

活躍の場を作って頂ければと思います。

制度設計にお悩みの際は、千葉県産業振興センターの専門家派遣などをご活用

ください。

では、また次回お会いしましょう。


 第6回「中小企業の賃金の決め方」

アメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS)による統計によると、2023年4月の

平均時給は33.74ドル(約4,555円/1ドル=135円換算)でした。

この金額は前年同月比4.4%増となります。

その流れを受けて、日本でも政府や労働組合が賃金アップを求めています。

皆さんの会社ではどのように賃金を決めていらっしゃるのでしょうか。

様々な方法があると思います。

今回ご紹介するのは、賃金制度設計の根本となる考え方です。

参考になさってください。

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(1)賃金の決め方

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労働者の賃金は“経営の観点”と“労働者の観点”の両方から考える必要が

あります。

“経営の観点”から考える場合、以下の数字を明確にします。

『労働分配率』や『内部留保の額』です。

一方、“労働者の観点”から考える場合は、

『世間の物価の上昇率』や『賃金の世間相場』の数字を参考にします。

これらの指標は、消費者物価指数や賃金統計です。今まで、これらの指標を

見たことがないという方は、ぜひ一度調べてみてください。総務省や厚生労働省

が定期的に統計の数値を発表しています。

ここでは、経営の観点から見た場合、どのように賃金を決めるかという一例を

ご紹介します。以下の流れで検討してください。

なお、一般的に財務諸表に出てくる人件費には法定福利費は入っていません。

人件費を上げることによって、その他固定費である法定福利費(社会保険料等)

も上がるということを知った上で、検討する必要があります。

 1.労働分配率を計算する

  労働分配率とは、人件費÷粗利で計算ができます。

 2.労働分配率を以下の基準で確認する

 ・業界の平均と比較する

 ・内部留保から検討する

 ※業界の平均は目安でしかありません。

  内部留保が潤沢にあり、多少労働分配率を上げても経営に影響のない程度で

  あれば、賃金を上げるという選択肢もあるという意味です。

 3.仮に労働分配率が現状適正である、あるいは、少々高く、経営的に人件費の

  総額を上げることは難しいと判断をした場合、以下の方法を検討する必要が

  あります。

 ・既存の業務のやり方を抜本的に見直す

 ・人員数を検討する

となります。

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(2)採用と定着という問題

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日本では、労働力人口が減少をしているため、今までと同じ仕事のやり方をして

いると、企業は存続しにくくなります。

本来は、抜本的に仕事のやり方を変える必要があります。

しかし、いきなり企業内の仕組みを変えるといっても難しい場合もあるでしょう。

よって、今は、採用を繰り返しながら、将来を見据えて、仕事のやり方、

あるいは制度や仕組みそのものを変えてください。

最も重要なことは社内環境を整えて、定着率を上げることです。

新しい人材が入社をしても、社内の環境が悪ければ辞めてしまいます。

社内環境を整えるには3つの側面から考える必要があります。

 1.人間関係

 2.教育(人材育成)のしくみ

 3.処遇

これらのどれが欠けても、人の定着は安定しません。

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(3)企業経営において何を目指すか?

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この答えは経営者によって色々でしょう。

何が正解というものではありません。

ただ一点だけ、言葉の語源から考えた場合、こういう考え方もあるということを

説明致します。

企業経営とは、経済活動の一種です。

経済の語源は“経世済民”、すなわち世を経(おさ)め民を救うという意味です。

企業が第一に救える人は従業員とその家族であり、商品を使っていただく

お客様です。お取引先も救うことができるでしょう。

“経済”活動をしている企業にとって重要なことは何でしょうか?

私は永続することであると考えます。

日本には1,000年以上続いている企業が9社あります。世界に目を移すと最古の

企業は805年ですから、日本は稀有な国とも言えます。

どの国に学ぶ必要もなく、永続の秘けつは国内にあります。

永続している企業は、時代に応じて変化をしているということ、そしてお客様に

求められている商品や価値を生み出し続けています。

経営者の方は、ぜひ、今一度、企業経営において、何を目指すのか?社会に

どう貢献していきたいのか?を考えてみてください。これらに焦点を当て

考えることが、皆様の会社の発展につながると考えます。

さて、6回に渡りお付き合いいただき有難うございました。

読者の皆様とのご縁に心より感謝致します。

この記事が、皆様の経営の一助になることを切に願っております。

また、どこかでお会いできることを楽しみにしております。

その際は、ぜひ「産業振興センターのメルマガ見たよ」とお声がけください

(^^)

和貴社会保険労務士法人 代表社員 假谷美香

https://waki.or.jp

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