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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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                中小企業と省エネ
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 3月11日の東日本大震災による地震、津波、さらに東京電力福島第一原発
事故に影響を受けられた皆様にお見舞いを申し上げます。原発事故は、わが国
のエネルギー政策の根幹を揺るがす大問題に発展し、中小企業者にとっても看
過できない事態であり、省エネの観点から触れてみたいと思います。

         第1回 わが国の最近のエネルギー事情

 1970年代のオイルショックを契機にわが国の製造業などでは省エネが進み、
経済成長を果たすことができました。1990年代に入ってエネルギー消費は、
運輸部門の増加は抑制されましたが、快適さや利便性のニーズから民生部門は
増加してきました。しかし2000年代になって原油価格がバレルあたり30
ドルから2008年に至っては130ドルまでに高騰し、景気も悪化しました。
製造業の生産が低下しエネルギー消費も減少傾向を示していました。
 原油の価格高騰と枯渇の不安を経験したわが国は、一次エネルギーの供給を
安定させるためにオイルショックの時に75.5%であった石油依存度を2008年
には41.9%に大幅に縮小し、石炭22.8%、天然ガス18.6%、原子
力10.4%、水力を除く再生可能エネルギー3.1%とエネルギー供給の多
様化を実現してきました。
 こうした中で昨年6月には、さらに2030年を視野に入れてわが国のエネ
ルギー基本計画の第二次改定が行われました。それには地球温暖化対策のため
に電源構成に占めるゼロエミッション電源(原子力及び再生可能エネルギー)
の比率を現状の34%から2030年には約70%に増加させることとされ、
原発の14基以上の新増設及び設備利用率アップが前提となっていました。
 ところが3月11日の東日本大震災で、東京電力では稼働中の11基の原発
のうち7基が停止し、火力発電も8基が停止して管内の電力供給の不足が明確
となり計画停電が行なわれました。やがて稼動可能な火力発電、水力発電を動
員し国民に節電協力を求めて、4月からは計画停電は回避されるようになりま
した。しかし原発の安全性に注目が集まり簡単には原発の再稼動ができなくなり、
7月から9月にかけて東京電力、東北電力の管内の大口需要家に対し夏場の電
力使用制限令が発令され、それ以外の需要家にも15%節電の要請が出されて
います。まさにお金を出せば電力が使える状況ではなくなりました。

 現在国内にある54基の原発は順次検査のために停止することになっていま
すが再稼動の是非の議論があり具体的な目処がありません。仮にすべての原発
を火力発電で代替するには2012年度の燃料調達費は3.5兆円増え、電力
料金に上乗せされることになり、国内企業への負担は年7.6兆円にのぼると
言われて、わが国の国際競争力の低下は避けられません。ここでエネルギー基
本計画の大幅な変更もさることながら原発がダメなら再生可能エネルギーとい
う意見もありますが、その量は少なく、すぐに脱原発の切り札とはなりえませ
ん。またエネルギーの安定確保ができなければ企業の海外移転も加速すると言
われていますが、海外でのリスクも大きく、国内の大きな雇用不安も発生し、
わが国の将来、ひいては存続にも不安があります。
 とすれば現状では、既存のエネルギー供給設備の安定操業と効率的運用をは
かる一方、国内のすべてのエネルギー消費において賢い使い方を導入して、さ
らなる省エネを積極的に行うしか、道筋がないと言えます。



              第2回 東京電力の原発事故に関連する節電対策

 3月11日の東日本大震災により東京電力では福島第一原発で未曾有の大事故が
発生し、原発の安全神話を否定され、17基の原発のうち稼働している原発はわ
ずか3基のみとなり、発電能力が大きく減少しています。同様に近隣の電力会社
も定期検査などで停止すれば再稼働がままならない状態で、東京電力への融通
もむずかしくなっています。
 このようなことから、東京電力では、この夏の需要電力が発電能力を上回る
ことを予想して、発電効率が低く二酸化炭素の排出量も多い休止中の火力発電
を稼働させたりして発電能力の増強を図っています。
 この電力供給不足は一日のうちでは9時から20時に深刻になります。電力は予
想される需要を見込んで、あらかじめ貯めておくことができません。そのため
夜間に火力発電などの余剰電力で水を上部の調整池に汲み上げておき、昼間の
ピーク時に発電する揚水式水力発電も稼働するなどして、電力需要の変化に対
して瞬時、瞬時に供給(発電)を合わせています。この瞬時の電力の大きさを
kWで表しますが、需要電力が供給電力を超えると大規模停電になり事故を誘発
したり、社会的混乱を生じたりして、復旧には1か月もかかると言われ絶対に
回避しなければなりません。
 そこで、政府は今年の7月から9月にかけての東京電力管内において最大供
給電力を5,380万kW、最大需要電力を6,000万kWと見込み、需要電力に対し供給
電力が10.3%すなわち620万kW不足すると推定しました。そのため、「すべての
需要家に対して最大使用電力を15%抑制すること」を決定しました。すなわち、
契約電力が500kW以上の大口需要家に対しては、「昨年夏の最大使用電力(1時
間単位の最大デマンド)の15%の使用削減」を義務付ける電気事業法27条にも
とづく電力使用削減令を発動しています。ここで最大デマンドは、最大需要電
力計(VCT)で計測される電力であり、1時間の間では使い過ぎた分をどこかで
減らして調整すれば最大デマンドを超えない管理(デマンド管理)もでき、慎
重な管理が要求されています。
 また契約電力が500kW未満の小口需要家に対しては、電力使用削減令の適用は
なく義務ではありませんが、大口需要家と同様に「15%の使用削減」を要請し
ています。この場合、高圧受電の需要家に対しては過去の電気料金の計算書、
請求書、検針票から昨年夏の「使用電力(kW)」の最大値を把握してその最大
値から15%の削減を目標とすることになります。一方、低圧受電の需要家に対
しては、最大使用電力(kW)を把握できませんので、過去の月々の検針票によ
り「使用電力量(kWh)」の変化を参考にして使用削減に取り組むことになり
ます。

 以上述べましたように、いずれの需要家も節電に取り組むことが必要となり、
まず、電力需要そのものを抑制する「ピークカット」で、最大使用電力を抑え
ることであり、省エネ機器の導入や照明や空調の使用を控えることなどが相当
します。
 さらなる取り組みとして電力使用の時間帯をずらして最大使用電力を抑制す
る「ピークシフト」があり、電力使用のピークを他の時間帯や休日にシフトす
ることなどが相当します。
 これら具体的な節電方法については、次回の「企業における具体的な省エネ
活動」で述べたいと思います。

 7月は低温気象が続いたことと各需要家の節電の取り組みもあって、最大供
給電力に対する最大需要電力を示す電力使用率は低い結果となりました。しか
し、盛夏に向かうこれからは電力不足に決して油断が許されません。



                第3回 企業における具体的な省エネ活動

 8月は連日猛暑が続きましたが、節電への取り組みはいかがでしょうか。
 電力をはじめ、エネルギーの使用は企業活動にとって重要度が上がり、経営
収支さらには企業の存続にも大きく影響し省エネに取り組まねばなりません。
私たちは、電力、熱などのエネルギーを直接見ることができず、とかく疎んじ
てしまいがちです。電力については設備に電流計が組み込まれていたり携帯型
のクランプ式電流計で電流を計測することで電力を把握することができ、熱に
ついても温度計で温度を計測することができて、エネルギーの動きを可視化
(見える化)することが省エネ活動で重要と言えます。

 またエネルギーは効率的に使用しなければなりません。暖房を例にとります
と、電力を電気ヒーターなどによって熱エネルギーとして直接使用するのでは
なく、冷凍機を組み込んだヒートポンプ(熱移動ポンプ)式のエアコンを使用
することにより何倍ものエネルギーとして利用することができます。このよう
に設備を選択する場合、省エネ型のエネルギー効率のよいものにする必要があ
ります。

 熱の見える化にあたっては、ただ温度を測っても思考が進まないことがあり
ますが、熱の伝わり方に伝導、対流、放射の三種類があり、そのどれに相当す
るかを考えれば、加熱、冷却、保温、断熱などの場面で適切な状況把握や対策
が見えてきます。

 それでは最近関わりました省エネ活動の事例を紹介いたします。
(1) ある工場で、照明器具が汚れ、壁や天井が煤けていましたが、従業員が照明
器具を清掃し、壁や天井にペンキを塗って照明器具の間引きをされました。

(2) エアコンの効きが悪く夏季の28℃設定は無理と言われていましたが、エア
コン内臓のファンでは冷風が必要とする所まで届かないことを線香の煙で確か
め、扇風機を併用して克服した企業もあります。
 この場合、扇風機の風を日当たりのよい窓際に当てると逆効果になった例も
あります。日当たりのよい窓際には熱をさえぎるカーテンが有効です。

(3) ある工場では作業室の片隅に電気ヒーターを組み込んだ製品乾燥機があり、
室温が高いことを指摘しますとエアコンの冷房をフルにしても効かないとのこと。
乾燥機とエアコンが競合していることを説明し、乾燥機の保温強化とカーテン
で仕切ることを提案しました。
 同様に別の事業所では隣に乾燥室があるため、冬でも冷房をされており、乾
燥室の間仕切り壁や天井の断熱を提案しました。

(4) ある工場では地下水層から高架水槽に汲み上げて給水されていますが、配管
設備上、ときどき高架水槽からオーバーフローして地下水層に戻る仕組みになっ
ており、給水には支障がなく顕在化していませんでした。高架水槽に汲み上げる
には相当なエネルギーが使われており配管の変更を提案しました。

(5) ある製造工場の設備機械で、冷却水入口バルブを全開にして使用されており
質問すると、「しっかり冷えており、冷却不足がこわい」との返事があり、冷却
対象の箇所や冷却水出口に温度計を付けて必要最小限の水量にすることを提案
しました。

(6) ある工場で軟水化処理水を冷却水として使用し、その回収温水(40℃)を
ボイラ給水に利用され、一方、蒸気加熱で生じた復水(凝縮水)は工場排水と
されていました。そこで蒸気加熱で生じた高温の復水をボイラ給水とし、余剰
となった回収温水は別の工程で使うことを提案しました。
 水のもっている熱エネルギーは見過しやすく温度の高い水から優先的に回収
利用すると有利になります。

 以上のような事例は身近にあることが多く、今一度、職場の省エネを見直さ
れることをおすすめします。

          NPO環境カウンセラー千葉県協議会 理事長 國廣隆紀

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