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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

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           中小企業で活かせるクラウド
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       第1回「改めて考える「クラウド」って、何?」


 皆さんはクラウドコンピューティング技術を活用してますか?

 たぶん99%の方は、クラウドコンピューティング技術を活用したサービスを利用
しているはずです。

 そもそもGoogleやYahoo等で何か検索したり、フェイスブックで友達を探したり
していると、海外のどこにあるか分からないサーバ(雲の上のサーバ)で、その
リクエストに応じた処理が行われています。
 さらにすでにiPhoneやAndroid端末などのスマートフォン(スマホ)やiPadなどの
タブレット端末をお持ちの方は、バリバリにクラウドコンピューティング技術を
使っていることになるでしょう。

 定義のような話は避けるとして、利用者、とりわけ中小企業にとっての
「クラウドコンピューティング技術」とは、何でしょうか? 

 誤解を承知で書きますと、
1.みんなで使う「割り勘で割安」システムを実現する技術
2、モノを所有しなくても済むように、ネット上のモノを簡単に使うための技術
3、今までできなかったことをやりたいので、思い切りITパワーを使えるようにした技術
となります。

1.のおかげで、中小企業でもIT投資が楽になってきました。
機能を抑えたりすることで、無料でのサービスも増加しています。ちゃんとした
業務サービスも徐々にその種類が増え、1ユーザ辺りの価格も安くなっている
状況です。

2.は、サーバやソフトに関わるモノですが、中小企業ではIT技術者が不足気味
のため、管理しなくてもIT利活用できるメリットは大きいと思います。

3.は、例えば、ゲームアプリなどは個人でも多くのユーザが使えるサービスを
提供し、増加していく分だけ借りるリソースを“稼働しながら”、増やしていける
特徴があります。実際、1日で数10万人増えても、大丈夫です。

 さて実際に中小企業がクラウドを使用するには、どのようなアプローチがよいの
でしょうか?

 筆者は「ITサービスを借りる」という感覚が必要だと考えています。

なおこの場合のITサービスとは、主に
「ハードウェアの貸し出し」
「システム開発環境の貸し出し」
「ソフトウェアの貸し出し」
のことです。

そして、
「何をどのくらい借りるのがよいのか?」
「どのように借りればよいのか?」
「どこから借りればよいのか?」
を考えることです。

例えば、
「業務アプリケーションをサービスとして新たに借りるのか?」
それとも
「システム開発環境を借りて、今まで使ったアプリ資産を乗せるのか?」

そのような判断が必要となってくるのです。
詳細は次回以降で、解説いたします。

 次回は「中小企業でのクラウド活用成功事例」と題して、具体的に活用して
成功している中小企業を紹介して、ビジネス上での優位性を中心に述べてみたいと
考えています。



              第2回「中小企業でのクラウド活用成功事例」


 前回は「改めて考える「クラウド」って、何?」と題して、について述べま
した。今回はクラウドを活用して実際に成功した中小企業4社を紹介いたします。

 有名な例では、県内理美容業の株式会社オオクシです。
 早くからクラウド型POS連動システム(ASP)を利用しており、データセンター
は沖縄にあるため、震災時にも全く問題なく稼働しています。いち早く業務を復旧し、
競合店舗がまごつく間に4月には、最高売り上げを計上しました。
 BCP(事業継続計画)対策としてもクラウド効果が表れた好例です。
 業務のスピードアップとしても効果大です。
 各店舗の販売時点情報管理データは瞬時に海の向こう側のサーバに送られ、すぐに
分析データが作成され、各店舗にアドバイスするための簡単な資料づくりが瞬時に
行われます。これで目標達成ができているかどうかのPDCA(計画・実行・評価・改善)
サイクルと問題解決のPDCAサイクルのダブルサイクルで、店舗固有の改善をスムーズ
にしています。
 ITを十分活用していますが、サーバ管理やディスク管理等の保守をしなくても
いいため、逆に「本業への集中」が実現しているのです。
 
 2点目の株式会社ツルガは、2週間(正月休みの前後で社長が試行開始)で顧客
管理システムであるSFA(Sales Force Automation)システムを導入し、効果を
いち早く実感している企業です。
 同社は特殊ネジやTSキャップ(ボルトナットの防錆用カバー)の企画開発を行う
ネジの専門商社で、大阪府にある従業員15人程の企業です。
 SaaS(Sofwear as a Service)=ソフト貸し方式のシステムにより、本部と
営業間で商談の進行状況を共有し、顧客対応の改善、営業効率の向上を通じた
売上向上、利益率向上を実現しています。

 3点目の株式会社クレブは、新潟県でスキー場を中心にスポーツ用品の卸、小売、
レンタル業を営む従業員数18名ほどの企業です。
 自社で利用していたパッケージソフトをPaaS(Platform as a Service)
=開発環境貸し方式にて利用することにより、受注や在庫の管理について、
営業先を含めて共有できる環境を実現し、売上向上を実現しています。
 また従来本社にてサーバを管理していた際には災害リスク大でしたが、クラウド
サービスへの移行によりシステムの安定運用やデータの安全な管理が低コストで
実現したと評価されています。

 最後の株式会社グレイスは、東京都内に6店の飲食店を経営している企業です。
 つぶやきツールのtwitterを活用して利用客に対して店舗の案内、キャンペーン
告知、予約受付等を行い、顧客とのコミュニケーションを日常的に実施しています。
 twitterは無料で利用できるクラウドサービスで、多くの個人顧客が日常的に
利用しており、顧客とのコミュニケーションにtwitterを用いることにより、
新規顧客を含めて幅広く情報を提供することができるようになっています。

 以上、4事例を紹介しましたが、共通的なクラウド効果としては、
「情報共有のスピードアップ」効果がすぐに出るということが言えます。

 次回は「中小企業のためのクラウド活用シナリオ」と題して、クラウドを
企業内でどのように取り入れればよいのかを中心に述べてみたいと思います。



             第3回「中小企業のためのクラウド活用シナリオ」

 前回は「中小企業でのクラウド活用成功事例」として、事例を紹介いたしま
した。最終回の今回は、クラウドを企業内でどのように取り入れればよいのか
を中心に述べてみたいと思います。


 分野毎に考えるクラウド化の判断ポイントは、以下の通りです。

1)自社の特徴を活かしたい分野(例:特殊な生産管理システムなど)は、
クラウドアプリ(SaaS)活用が難しい分野であり、アプリ資産を継承できる
スタイルで検討する。

2)自社の特徴にあまり関係ない分野(例:販売管理など)は、出来合いの
クラウドアプリ活用を検討する。特に離れた場所からいつでも知りたい情報は
クラウド上に置くのがよい。

3)BCP対策分野(遠隔バックアップなど)にて、データを分散させたい場合は、
遠隔地のハードディスクだけ(IaaS)を借りることを検討する。

4)セキュリティ上、問題が発生しやすいものは、クラウド化を十分に熟考する。

 ちなみに中小企業で一番活用されている分野は、一般事務(Gmailや各種グループ
ウェア等)で、次に営業支援・顧客管理と続いており、業種に関係なく使われる
分野に実績が集中している状態です。

 まずはメールシステムやグループウェアの運用コスト削減検討時や新たな業務
システム導入案件発生時(たとえば、顧客管理を始めたいなど)にクラウド活用
の検討を始めるのが常套手段ではないでしょうか?
 既存の基幹システム(たとえば、製造業の生産管理など)導入から着手するのは、
リスクが高いと考えます。
 またクラウドの利点はお試しができる点であり、社長業の業務周り(スケ
ジュール管理や文書管理、など)からまず始めることも検討の価値があります。

 なお素直に取り入れるための段取りとしては、
(1)慣れ:まず無料クラウドを組織ではなく、個人レベルでの「試し」で
実際使ってみる。(グーグルAPPS、Evernote、DROPBOX、等)

(2)見極め:現在の業務プロセス上、面倒なこと(量が多い、頻繁、手順が
複雑、等)で、本気でIT活用したいのか?を整理してみる。

(3)調査:(2)の課題解決策(クラウドサービス)をネットで探し、いくつか
を比較する。

(4)試行:有料の場合、クラウドサービスの無料期間中(1か月程度)で
テストする。

をお勧めいたします。自社で調査や試行が困難な場合は、ITベンダーや
ITコーディネータ(http://www.it-keiei.or.jp/)に相談してみてください。

 なおクラウドサービスの選択が得意な「クラウドソムリエ」
(注:資格名ではありません。)
参考:http://www.ipa.go.jp/jinzai/jigyou/docs/report_20110915_01.pdf)
の研修も各地で始まっており、やりたいことを伝えれば、どのようなサービス
を組み合わせればよいかを答えてくれるはずです。

 今は約20数年前にインターネットが本当に使えるのかという議論があった
ときと似ています。そのころのインターネットは動きが遅くトラブルも多く、
業務で使えるものではありませんでしたが、結局世界を変えてしまいました。
クラウドも同じようになる、避けて通れない進化であると筆者は考えています。

以上、「中小企業で活かせるクラウド」を3回に渡って報告してきましたが、
以下の言葉で締めくくりたいと思います。
「IT=武器は日々進化する、使う側も進化しなくてはいけない。
そのために“ワクワクする気持ち”と“使いこなす覚悟”を持ちましょう!」


          社団法人 千葉IT経営センター 代表理事 野村真実

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