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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

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           中小企業に役立つ情報システムの考え方
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       第1回 中小企業にとって役立つ情報システム

 経済産業省の調査によると情報システム(IT)の導入後の現状は
  
  1.ITが不良化資産なってしまい活用できていない企業     12.1%
 2.部門システムとしてしかITが利用されていない企業     53.7%
 3.会社全体として有機的にITか活用されている企業      26.7%
 4.企業をまたがってITシステムが連動している企業       7.3%

とある。( http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/it_keiei/action/current/index.html )

 この現状をみると折角費用をかけて導入したITを十分に活用しきれていない企業が
3分の2を占めていることになる。高額のIT投資をしたのに残念である。
 

 別の調査であるが、隣の茨城県の中小企業で導入されているシステムについて調査されている。
2012年の1月時点で茨城県内720社の調査では導入しているITは以下の状況である。
 
   1.販売管理・在庫管理システム       38.9%
   2.会計管理システム          37.8%
   3. 顧客管理システム          25.3%
  4. 生産管理システム          23.8%
  5. 顧客管理システム          25.3%
   6.人事労務管理システム        14.9%

 ( http://www.iis-net.or.jp/tokei/pdf/H23it-gaiyou.pdf )

  千葉県でもほぼ同じ傾向とみて差支えないであろう。この現状を踏まえると何が言えるだろうか?
 
  ITを導入してみたけれど単一の業務の処理しかできていない。販売システムで売上処理をして
出荷伝票を出力し、売掛の管理はともかく入金の管理は全く別の会計システムで管理するので
売上データとして伝票を見てまた入力する。二重入力が発生しているのである。

 二重入力そのものが無駄な作業であるし、データに再入力の時にデータのモレ・間違いなども
発生しやすい。このミスを見つけるのに大変な作業を強いられ、不効率極まりないことである。
業務に十分役立つ仕組みは会社全体を視野に入れて再入力の無い連携された処理がなされて
いかなければならない。部門最適でシステムを導入したり、単一業務だけで業務パッケージを
選定し導入したりするとこの傾向になりやすい。


 中小企業にとってITを導入する目的を明確にしないといけない。経営者は自社の投資可能な
規模の中で、新規に投資するITの目的を明確にする必要がある。企業には課題が3種類の
タイプに分かれる。

   1.経営課題:会社の運営に重要な解決しなくてはならないテーマでコストを削減するとか
                顧客満足度を得て売上高を増加させるとか、現行業務を大きく見直し仕事の
                手法を再設計して社内の業務効率化を図り社内コストの削減と決算の早期化
                などを目指すことである。このテーマ解決にITは効果的に機能する。
 
   2.業務課題:日常常務の効率化をめざすテーマである。記録台帳の記入が手間取るので
                楽にしたいとか、集計業務が大変なので正確にまた迅速に処理をするために
        導入するITである。在庫管理・販売管理・会計処理などがこれに当たる。
        この業務毎にITを導入すると前項の部門最適・業務差異的に陥りやすい。

  3.システム課題:情報漏洩防止やネットワークやサーバの安定運用や、安価な運用を実現
                    させていくことで技術的なテーマが多い。業務利用者とは直接関連しない
                    ことが多いのでIT専門家によって検討され導入されることが多い。
                    
 
  新製品開発・新サービス開発のための調査や設計・技術シミュレーション・マーケティング調査
などにも最近は活用されている。インターネットが普及し検索や容易になってきたためと思われる。
ただし、ネットで検索された情報は発信人の一方的な情報である。内容の信頼度や価値は、利用者
である我々が判断せざるを得ない。
 
  このようにITを導入し十分に利活用するためには経営層のIT導入に向けての目的や企業規模に
見合った投資となっているか(費用・時間・内部工数など)を整理し、期待効果を明確にしなければ
ならない。決してITの専門家に丸投げしないことである。技術的に理解しにくいので丸投げになり
やすいが、完成したITを使って業務をし、経営をしていくのは会社全体であり、その結果の影響は
経営そのものの判断に直結する。冒頭にあった、使えない情報システム、使いにくい情報システムに
しないことである。この経営者の信念に基づいた情報システムが最も役立つシステムとなる。

 ITは経営にとって十分役立つ道具であり、役立たせなくてはならない道具である。

 


              第2回 部門最適システムと全社最適システム

 
  前回企業にとって自社にある情報システムに対して同じ情報を複数回入力する無駄や、
複数のシステムから出力される同じような情報の整合性を突き詰める作業の無駄を記述した。

 茨城県の中小企業の現状の調査や経済産業省のITシステムの利用状況をみても、
中小企業で全社に統一がとれた整合性あるシステムが導入されているとは言い難い。

参考−1 茨城県調査結果
( http://www.iis-net.or.jp/tokei/pdf/H23it-gaiyou.pdf )
参考―2 経済産業省調査結果
( http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/it_keiei/action/current/index.html )

 何故のこのようなことが起こるのだろうか?原因は大きく2つの方面から分析できる。

 一つはデータを利用している部門の都合が強く出ている場合と、もう一つは
情報システムを実現する部門の力量の問題である。
 
 データの利用部門はある目的(例:情報伝達作業の軽減や迅速性の追求などといった
幾つかの目的)を持ってシステム導入を企画検討する。

 例えば【経理部門】では、経理処理を短期間に正確に終了するので自動仕分けが
できて必要な会計情報や経理諸表が美しく印刷される“会計経理システム”を導入
したいとか、【購買・仕入部門】では店舗の商品の売れ筋を早くつかみ、明日の
仕入れの数量や、来店客の施行状況を毎日把握分析したいので“店舗売上在庫管理
システム”を導入したいとかである。

そのために自部門ごとに使いやすく安価なシステムを探し、購入して利用を始める。
この時に発生するデータを社内の他の部門で利用させる事にはあまり気を使わない。
 

 その一方、情報システムを実現する部門では、現場の業務に対して全社の効率化の
観点から改善策を明示できず、全社のデータの整合性や品質について助言ができにくい
のが現実である。

 例えば【購買・仕入部門】で導入した“店舗売上在庫管理システム”の売上情報から
仕入作業に繋がれば、当然【経理部門】で導入した“会計経理システム”での買掛・支払
の作業に繋がるわけであるが、このデータの接続やデータの概念が異なり潤滑に行かない事
が多い。


 具体的には仕入先が同社で複数部門ある場合、【購買・仕入部門】による仕入では
同社の部門ごとに“店舗売上在庫管理システム”上でコードを付与してしまい、【経理部門】
による支払時には手作業で複数部門を合計して会社毎に“会計経理システム”から振り込んで
いることなどである。
また【購買・仕入部門】では仕入れ実績を“店舗売上在庫管理システム”
で処理していながら、そのデータを帳票に印刷し、【経理部門】ではそれを見て“会計経理
システム”にまた手入力しているケースなどである。


 全社的にデータの品質を保つために入力は一か所にして全社の統一データをして格納し、
そのデータを全社で利用できるように社内に公開し、各部門で効率よく利活用できるように
加工していくべきである。

 
 部門最適システムの追及が全社最適の追及には必ずしも到達しないのは何故なのか。
どうすれば良いのであろうか?
 これについては、次回の連載でお話しすることとしたい。まずは、御社の現状が上述の
事例のような事態に陥っていないかを改めて考えてみてほしい。



                   第3回 システム化の費用と人材育成


 現代ではどんな会社・商店でもシステムを利用していない会社・商店は無い。
データ量が少なければ手作業で作業をしたり、パソコンで簡易処理したり、
場合によっては外部システム・センターや強力なサーバで処理したりしている。

 今やデータは企業経営にとって必須の経営資源である。したがって経営者自身が
データの活用に配慮しなくてはならない。 

 あわせて、経営にとってデータの整合性・品質をどう保つか常に配慮しておく
必要ある。同期のとれた整合性のあるデータは、全社の経営状況を俯瞰的に
表してくれるからである。

在庫が多いのに気がつけば、販売活動が落ちているのか・売れない商品をかかえて
いるのか、販売量以上のものをかかえているのかなどが判断でき、早めの対応もできる。

 
 大企業では情報戦略担当役員(CIO)を配置している。中小企業でもこの役目の機能を
持たせるべきである。データ資源を企業活動にとってどう生かすのか、どのように
企業発展に役立てていくのかを常に配慮するのである。社内にいるシステム担当の
要員がいれば、経営者はその要員と常に意思疎通を図り、データやシステムの問題点の
把握や技術動向・効果的経費の活用などを把握すべきである。もし要員が不在なり外部の
専門家に支援を仰ぐのも一法である。

 しかしながら、基本的には自社に判断ができる要員を育成すべきであろう。
経験やカンによる感性経営も重要な経営手法であるが、データを駆使するID経営(=IT経営)
も大いに役立てるべきである。このためにIT投資をするのであるが、本当に役立つ
システム投資にしないと過大な費用と利用に手間がかかることになってしまう。

 IT導入の事例を他社に学ぶことは重要なことであるが、他社をマネしてはいけない。
事業内容も異なるし、事業規模も異なるからである。学ぶべきは、何を目指してどう
考えたかであり、結果でないことを肝に命じておくべきである。身の丈にあった
システム投資をすべきである。

 システム投資は5年間位の期間でかかる費用と、システム導入での効果をバランス
させて判断すると判りやすい。初期投資が500万円 年間経費80万円(5年で
400万円)合計900万円の例をあげれば5年間で年180万円(5年で900万円)
分の効果が見込まれれば良いことになる。

在庫が削減するとか通信費が削減するとかの経費削減だけでなく、顧客の再来店が高まり
売り上げ拡大が期待できるとか、在庫切れをおこさずに販売機会が増大する効果なども
見込んで良い。

 また近年考慮しなくてはならないのはデータの重要性である。データが損失してしまうと
全く業務ができなくなる。自社にあるデータの保全性(=確実に使用できる様に保持する)を
考えるべきである。東日本大震災で多くのデータ損失が発生した。顧客データや商品データ
を損失しだけでなく、売掛明細のデータを消失し回収の手掛かりさえ失ったケースも多い。
 
 自社の情報機器が不良/不具合を起こした時、または停電でシステムが稼働できない場合、
遠隔地にある搬送センターだけが停電していて出荷作業ができない時などを想定して、対策を
打つべきである。

基本は 

(1)事象・障害などを仮定し列記して

(2)その場合の実務作業手順を決める。1時間までなら待てるとか、もしくは10分しか待てない
とかの、回復目標値を決める。

(3)その実務要求を満たすために必要なシステム要件を考え

(4)システム対策を講じる。例えば、パソコンを2台以上設置するとかデータのコピーを銀行の
耐火金庫に預けるとかといったことである。


 現時点では、情報処理技術レベル・適正費用・安全性・利用し易さなどを考えると、
インターネットにデータを預ける(=クラウドの利用)が優先的に検討されても良い。
出来あがった計画を全社に周知徹底させることも重要で、専門家に見てもらい助言を得てもよい。

最も重要なのは、いつも起こることでないので事象が起きた時に実行できるように、定期的に
訓練(=避難訓練的な実証訓練)を繰り返して常に対策の妥当性を見直すことである。

システムの導入は効果を出して初めて成功といえる。一つでも疑念や不安があれば専門家に
相談してみよう。




 NPO法人ちば経営応援隊 理事長 浅井 鉄夫     

        
   

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