「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】
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採用のコツ・最適マッチング2
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第1回 採用のコツのまとめ
昨年度は、メインテーマを「採用のコツ・最適マッチング」と称して求める人材と
(1)採用方針〜(2)採用の段取り(社内広報とツール)〜(3)書類選考・面接
のポイントについてお話ししてきました。ここまでを簡単にまとめておきましょう。
まず、採用方針(採用計画)については、中期経営計画(3年〜5年)に基づき方針
を立てていきます。なぜ中期経営計画かというと、「求める人材を未来の戦力として
考え、教育・訓練を実施しながら成果を積み重ねていく」と考える方が効果的で採用
された人材のモチベーションアップにも繋がります。
企業理念や経営計画から求める人材像を明確にすることで、採用マインドが高い
企業としてのアピール度も高くなります。採用目的(何のために)、採用したい人材像
(どんな人を)、必要なスキルや経験、期間、採用人員(何名)を明らかにします。
次に、採用の段取りについて、応対担当者の選定、採用活動についての社内広報、
ツールの準備についてお話ししました。時間を味方につけるためにも採用関連の
ツールや自社の情報・アピールポイントをきめ細かく伝えるツール類は、ぜひ準備
しておくと良いでしょう。
書類選考・面接については、募集広告の段階で、できる限り「選考基準」について
明示しておくことがポイントです。採用後のアンマッチを避けるために、面接では
「傾聴」をこころがけ、応募者がたくさん話せるよう「引き出す質問」等を用いると
効果的です。書類選考・面接の結果は合格・不合格の如何に関わらず、応募者全員に
速やかに文書で通知すると良いでしょう。
ここまでが前回(昨年度)のまとめです。
(参考:昨年度連載バックナンバー)
https://www.ccjc-net.or.jp/headline/bn/h23/fujikawa.html
今回、同じテーマではありますが、もう一歩踏み込んだ内容で(1)新卒・第二新卒者
の採用、(2)即戦力としての中途採用についてお話ししていきましょう。
「新卒者」については、一般的な新規卒業者の他に、高等学校等卒業後いったん
就職し、退職後、再び大学・専門学校等に入学・卒業する者も含まれます。
「第二新卒者」についての明確な定義はありませんが、大学・専門学校・高等学校
を卒業後、就職したが、短期間(主に2〜3年)のうちに退職し就職活動している者や
転職を志す者のことを言います。卒業後未就業のフリーアルバイター(25歳以下)
を含む場合もあります。
今回の連載では、以上のような様々な応募者の採用についてお話ししていきたいと
思います。
次回、第2回は新卒者・第二新卒者の採用についてお話ししていきます。
第2回 新卒者・第二新卒者の採用
新卒者のエントリー時期は、専門学校生(2年制)の場合1年生の後半(12月頃)
4年制の場合も3年生の後半(12月頃)から徐々に求職活動(エントリー)を
開始していきます。(2年制の短期大学・一般の4年制大学も同様です。)
企業においても4月〜5月の学内合同企業説明会に向けて2月〜3月にかけて学校に
対して求人のエントリーを行います。
中小企業にとっては、この時期の採用は大企業と重なることからなかなか勇気が
いる時期であることは事実です。選考は4月以降になりますが、中小企業においては
やはり大企業と重ならないように、7月から選考を開始し8月に結果を出すのが一般的
なようです。
今年、ある企業の応募者の中に 専門学校に入学して、1年生の後半(12月頃)
から就職活動に入りましたが内定には至らず、さらに就職活動することへの不安
から、4年制コースの3年生に編入したという学生がいました。
しかしながら、3年生の後半(12月頃)からまた就職活動に入り、正味2年間しか
学業に専念できなかったということでした。
この応募者は筆記試験の結果も良くなかったのですが、特別枠で社長面接を行い
ました。しかしながら、採用には至りませんでした。
もう一人、応募者の中に専門学校の4年制コースを卒業、在学中は就職活動をせず
学業のみ専念していた既卒者がいました。
やはり信念を通してきただけあって、成績もよく、面接においても就職活動のため
に訓練された内容ではなく自分を表現することができていました。
結果は、採用でした。既卒者なので即勤務することが可能でした。さらに比較的
余裕のある時期の採用だったので、教育や引継ぎ等もスムーズに実施することが
出来ました。
即戦力として期待もできる内容だったので採用した企業の社長は、「非常に運が
良かった。」と喜ばれていました。
同じような年齢、学歴でも「ここまでちがうか・・」という例を紹介しましたが、
現在の就職活動における現状を、中小企業が勇気をもって見直していく時期がきている
のではないでしょうか。
後者は、第二新卒者として見ることもできます。第二新卒者のメリットは、新卒者と
違い、社会人としてのモラルやマナーがある程度できていること、つまり教育に時間
と費用をかけずに済むことがあります。また中途の転職者と違って年齢が若いため、
柔軟性とポテンシャルがあり、給与も比較的安くて済むというメリットもあります。
様々な採用関連・教育関連の補助制度についても利用できる場合もあります。
今後も新しいカテゴリーとして注目されていくでしょう。
次回、第3回は即戦力としての中途採用についてお話ししていきます。
第3回 即戦力としての中途採用
中途採用において気を付けることは、
(1)即戦力になるかどうかは勿論、(2)前職の経験に対する評価、(3)評価に対する報酬
でしょう。特に(2)と(3)には注意が必要です。
社内に就業規定があるのは大原則ですが、それ以上に具体的な評価システムが
整備されていないと後々のトラブルに繋がりかねないので気を付けて対応しましょう。
「欲しい・欲しい」で「応募者に言われるがままの評価と報酬」ではいずれ、
潜在的な問題が表出するでしょう。
過去に実際に起きたトラブルの中でも、
「採用した時期やその時の景気動向によって様々な評価・報酬で採用してきたために、
昇給時や賞与の支給時に問題が発生している。」
というのが最も多く見受けられます。
景気の良い時期に採用した従業員は「能力<報酬」の傾向が強く、
景気の悪い時期に採用した従業員は「能力>報酬」になりがちです。
採用後に調整しようとしても、上げるのは簡単ですが下げる際には相当な抵抗が
あります。
このような状況を放置していたために、優秀な社員が辞めてしまったという事例は
多く聞いています。
これから優秀な人材を採用しようとする際には、評価システムの構築(整備)は
必須になってきます。評価システムといってもコンピュータシステムに頼るものでは
ありません。
仕組みの内容が重要になってきます。新卒者採用の際にも、評価システムは効果を
発揮します。
新卒者にとっても評価や給与のことは、聞きづらいものです。評価システムによって
将来のロードマップが示せる企業であれば魅力はさらに増すはずです。
さらに中途の採用計画(募集)の際にも、「このランクの従業員が何名欲しい」という
具体的なニーズと、それに対する報酬についても即、提示できます。
いくら優秀な人材に見えても「言われるがままの評価と報酬」を主張され続けた場合
には、それ以上の優秀な人材を失わないためにも、「採用を断念する」という重要な
意思決定もできるはずです。
以上のように、中小企業にとって即戦力の採用については、なかなか厳しいものが
あります。
かと言って不可能ではありません。評価の仕組みができていれば、「やる気と資質」
を自社の基準で適正に評価することが出来ます。教育・訓練によって何ヶ月で自社が
求める必要なレベルに達し、その際の報酬はいくらになるという将来像を見据えた採用も
可能になります。
一度、自社の評価の仕組みと報酬をチェックしてみてはいかがでしょうか。
今回は、採用がテーマなので「評価と報酬」まで踏み込めませんが、機会があればお話し
したいと思います
最後になりましたが、採用は企業を評価する良いモノサシです。採用を通じて優秀な
人材の定着、計画的な教育と訓練で人材力・企業品質のアップを目指していきましょう。
きっと様々なステイクホルダー(※)から良い反応を得ることができるはずです。
3回にわたり、ご清覧ありがとうございました。
(※)ステイクホルダー:企業等の活動に直接・間接的な利害関係者のこと。具体的には、
得意先、消費者、従業員、株主、仕入先、地域社会、行政機関など。
中小企業診断士 藤川 惣二