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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

       
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      激変するエネルギー事情に対する中小企業の取り組み
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           第1回 激変するエネルギー事情


 2010年9月にわが国のエネルギー基本計画が見直され、2007年の実績をもとに
2030年の姿を推定しています。それによれば、一次エネルギー供給量は原油換算
で5億1,700万klへとわずかに減少するとされ、電源としての発電電力量も10,200
億kwhとほとんど変化しないものの、その構成は、火力発電は66%から26%に大幅に
減少し、原子力は26%から53%に、再生可能エネルギーは9%にいずれも倍増すると
いうものでした。

 しかし、2011年3月の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発の事故により、
東京電力管内の電力需給がタイトになり、急場しのぎの計画停電を余儀なくされ、
さらなる節電を要請されて、大口需要家には夏場には前年対比15%削減の電力使用
制限令も発令されました。

 電力会社は昼間の電力不足を補うために揚水発電をフル稼働し、国民全体は大きな
危機感をもって節電に努力して事前の使用予想量を大きく下回って乗り切ることが
できました。続いて冬場も火力発電の増強と節電の継続により電力需給の支障も
発生しませんでした。

 しかし、産業界では安価で安定な電力調達を行うために事業の海外移転が進行し、
多くの中小企業がその影響で経営苦境に陥っていることは否めません。

 その後、現存する国内の50基の原子力発電は、定期点検で停止すれば、国内全体に
広がった脱原発のムードで再稼動することができず、ついに5月5日にはすべてが停止
し、国内の電力供給の約90%は基本計画では縮小するはずの火力発電に頼ることになり
ました。

 そのための燃料としてのLNGの使用量が増え、わが国の貿易赤字に拍車をかけて経済を
圧迫するだけでなく、発電単価を引き上げることになりました。

 そこで、脱原発を進めて再生エネルギーへの転換をすればとの意見もありますが、
その開発・普及には時間を要し、原子力発電停止の不足分を補うことができず、リスクを
覚悟で関西電力大飯原発の再稼動が進められています。

 まさに発電コストの高い火力発電に頼るかの綱渡り状態になっています。

 東京電力ではすでに4月からは大口需要家に対して平均17%の値上げが始まっており、
対象顧客約235,000件のうち、約177,000件が合意されたとされています。大口需要家
以外の中小企業や一般家庭に対しても東京電力は、電力料金の10.28%の値上げを政府
に申請していますが、東京電力にとって利益率の高い顧客であり、企業にとっては
大きなコストアップ要因であり、一般家庭にとっては生活に大きくのしかかる問題
のため値上げ幅についての検討が真剣に行われています。

 このように東京電力福島第一原発の事故を契機にエネルギー事情が激変し、中小企業
にとっては電力コストの高騰で経営を圧迫することは必至で、より一層の節電をはじめ
省エネルギーをすることが必須となります。

 その取り組みには太陽光発電などの再生可能エネルギーにも取り組むことも経営収支の
改善だけでなく、国内の産業発展にも寄与することになることへの認識も重要と思います。


 次回からは節電を含む省エネルギーへの取り組みについて触れていきたいと思います。




                   第2回 変化するエネルギー事情への対応



 前回は原子力発電の停止に伴う電力量の不足を補うためには、当面は火力発電に
頼るしかなく電力コストの高騰で、中小企業者は経営収支を圧迫させられると話し
ました。

 2010年度のわが国の総発電量の再生可能エネルギーが占める構成比率はわずか
約10%でしたが、これを引き上げるため、政府は、電力供給の中長期的対策として、
企業などが太陽光発電などで発電した電気の全量買い取りを電力会社に義務付ける
「固定価格買い取り制度」を7月1日から施行しました。この税込み買い取り価格は
1kwhあたりで、太陽光では42円、風力では23.1円などと個別に定められており、
最長20年間、買い取りを保証するもので、再生可能エネルギー発電所が建設しや
すくなり、普及が加速するものと期待されます。

 ただ、電力会社は買い取り費用を企業や一般家庭の電力料金に「再生可能エネル
ギー賦課金」として上乗せすることになっており、再生可能エネルギーの普及と
負担のバランスに目が離せません。

 このように再生可能エネルギーの普及は期待されるものの立地やコスト面での
課題も大きく、まだまだ原子力発電に依存しなければならず、政府は、2030年時点
での国内のエネルギー供給の基本計画を見直すこととし、電源構成の原子力発電の
比率を0%、15%、20〜25%と、三つの選択肢を示し、パブリックコメントなどでの
「国民的議論」を7月中に進めて、8月にまとめることとしています。

 このようなエネルギー事情から、事業者は単に電力を電力会社から購入して
消費するという従来からの発想ではなく、企業自らが発電することも重要で、
再生可能エネルギーの発電をする企業も増えてきつつあります。

 太陽光発電では、一般家庭用として小型のシステムの量産化が進み、性能も
向上し、低コスト化もさかんで導入検討をするに値すると思います。

 太陽光発電は、日照条件が重要ですが、その立地にかなう場所として、空き地、
耕作放棄地、駐車場敷地などを見直したらいかがでしょう。
 
 工業団地などでは、事業所ごとに太陽光発電システムを設置するのではなく、
各事業所に太陽光パネルを設置し、それらを一括集約化させて、初期投資や保全
管理費の削減をはかることも考えられます。

 また最近は100kwh以下の「地産地消」と言える小水力発電が話題になっています。
千葉県では房総半島南部には房総丘陵があり、それほど高い山もなく落差の大きい
水源はありませんが、降水量が比較的多く水量に恵まれた水域もあり、低落差用の
水車も開発されていて、小水力発電所の設置の可能性もあると思います。とくに
昼間電力の不足を補う揚水式水力発電所のハイブリッド化も入れた事業化を検討
したらいかがでしょう。
 
 関東地方では、いよいよ梅雨空けとなり、夏本番です。今夏が2010年並みの猛暑
であっても、東京電力では電力の供給余力が4.5%あるとし、政府は東京電力管内
では節電目標を設定していませんが、前に述べましたように電力コストは経営収支
に大きく影響しますので、節電をはじめ省エネルギーに取り組みましょう。

 次回からは具体的な事業所内での省エネルギーについて述べたいと思います。




       第3回 事業所内でのエネルギーの使用実態の把握

 
 8月に入って連日の猛暑で冷房なしでは耐えられぬ職場も多いと思いますが、
節電の方はいかがでしょうか。去る7月25日に政府は東京電力の電力料金の値上げ
申請に対し、一般家庭を含む小口需要家には8.46%、それ以外の大口需要家には
14.9%の値上げを認めました。そのせいもあって今年の夏の東京電力管内の
最大電力需要の伸びは鈍く、供給能力の90%以下で推移しています。

 さて、事業所内の省エネルギーの取り組みに話を進めます。

 省エネルギーはエネルギーを管理する立場の方のみならず組織的な取り組み
として、全従業員がその意義を認識して効果的にあたる必要があります。

 電気、蒸気、水、圧縮空気などは定量的に取扱うことはできますが、私たちの
目には見えず実感が伴わず「見える化・可視化」することで使用実態を正しく
認識することが重要です。これを通常、「エネルギー診断」などと言い、自らが
行うかエネルギー管理士などの専門家に依頼して行います。

 電気を例にとりますと、事業所内の配電系統図を作成し、さらにそれに繋がる
主要な電力使用設備のリストを作成します。このリストでは定格電力をはじめ
通常の使用電力、稼働率、1日の運転時間などを調べます。ここで使用電力は
配電盤のアンメーターがあれば測定できますが、なければ電源ケーブルに
クランプ式電流計を取り付けて測定します。運転時間は自動運転の場合は時間計
を取り付けて測定します。

 蒸気の場合も同様に供給系統図及び設備リストを作成し、使用設備毎の供給
圧力、温度及び流量を測定します。飽和蒸気の場合、圧力が分かれば温度も推定
できますが、放熱を検討するためには表面温度計で測定することが有効です。
蒸気流量は測定が容易でありませんが、下流で凝縮させて温水となった時点で
測定することも考えます。

 水の流量は小流量の場合は流路に面積式流量計を組み込んで測定することや
容器やタンクの液位の変化をストップウォッチで測定することもできます。大流量
の場合は、使用ポンプの吐出圧力とモーターの電流の測定でポンプの性能曲線で
流量を推定できます。

 また圧縮空気の使用量は、空気圧縮機を一時的に停止し、空気タンクの圧力低下の
速度から求めることができます。

 このようにしてエネルギーの使用量と使用時間などの測定を行い、職場毎及び
事業所全体の使用実態を把握します。

 この過程ですぐに職場などで着手すれば確実に省エネルギーになるものはすぐに
着手することは言うまでもありません。

 これらエネルギーの流れのうち、主要なものをいくつかを抽出して省エネルギー
を重点的に行うことが最も効果的と言えます。

 省エネルギーの取り組みについては一次的な効果より継続的効果が重要であり、
絶えずその効果に関係する従業員が関心を維持できるように、職場あるいは設備に
温度計、圧力計、電流計、流量計などを設置して、実態把握の「見える化」から、
さらに進めて「見せる化」を行うことも効果的です。みなさんの職場ではいかが
でしょう。

 今回は、事業所内でのエネルギー使用の実態把握について話しましたが、最終回
の次回は、実態把握にもとづく省エネ対策について述べたいと思います。





             第4回 事業所内での実態把握にもとづく省エネルギー



 今年の夏は猛暑でしたが国民の節電努力のおかげで心配された電力不足は発生
しませんでした。しかし、9月からは東京電力管内では電力料金の値上げが始まり
中小企業者などの負担が増すこととなり、さらなる省エネルギーが必要となります。

 これまで事業所における省エネルギーは主要なエネルギーについて取り組めば
効果が顕著であると述べてきましたが、その取り組みは運転改善と設備改善に
大別されます。

 運転改善による省エネルギーは、無駄な加熱、冷却、圧縮などを減らすための
運転条件の変更や運転時間、暖気時間、待ち時間の短縮などを行うことになります。
その結果、所定の品質や成果を得るために無駄なエネルギーを使っていたことが
具体的に分かります。

 またこの運転改善では、運転の時間的なやりくりにより日中のピーク電力を削減
して契約電力を下げることもあります。

 運転改善では、その効果の定量的な把握にあわせて、製品品質への影響のみならず
環境側面、安全確保などへの影響の配慮も欠かせません。

 このような運転改善は事情が一番分かっている従業員の小集団活動で実施するのが
効果的と言えます。

 つぎに設備改善による省エネルギーは、上記運転改善と同様な検討を要しますが、
加えて設備投資を要します。とかく「お金がかかればやらない」という事業者も
おられますが、設備投資と省エネルギーによる経済効果とのバランスで考えて、
償還期間を考慮してメリットがあれば実施します。設備投資の当面の資金は各種の
助成制度を活用することもできます。

 当然、小規模な設備改善は、「Do it yourself」で、職場の小集団活動で行えば、
費用も少なく設備や業務の本質を理解することになり、自分たちの運転操作性を考慮
した改善で、設備への愛着も出たという好例も多くあります。

 最近、経験した省エネルギーについて述べてみます。

(1) ある工場では、製品品質を一定に保つため、年中一定の室温を保っているとのこと
でしたが、建屋構造への配慮はなく、外壁、内壁共に薄いボードで、天井も必要以上に
高く、エアコン負荷の大きいことが分かりました。

(2) ある工場では、天然ガスバーナー加熱による熱風乾燥処理炉があり、その炉内温度
を190℃に制御されていましたが、炉内ガス風量については今まで全く見直しがされて
いませんでした。

(3) ある製品の熱処理工場では、従業員が夏場は暑くて大変ということで、空冷式の
スポットクーラーを設置され、かえって室内の熱エネルギーポテンシャルが上がる
のを承知で運転されていましたが、熱処理炉本体および排気ダクトにはほとんど
放熱防止の保温がされていませんでした。

(4) ある工場では、床上約7mに水銀灯が配置されていますが、幾度か設備の配置換え
があって現状では設備高さは高くても3m程度で、作業面が暗いため作業用投光器が
補助的に配置されていました。照明器具高さを半分にすれば明るさは4倍になり、
大幅な節電の可能性があることを理解していただきました。

(5) ある工場のボイラーからの蒸気配管はバルブ、フランジなどを含めて保温が
されていない部分が多く、従業員が自分たちで保温材を巻きつけて約1.5%の
省エネルギー効果が出ました。

(6)ある金属加工工場では、使用しない加工機械(NCマシン、油圧プレス)も
電源が入っており、油圧装置などの補機もスタンバイ状態でした。

(7) あるアミューズメント施設では、電気ヒータによるサウナがありましたが、
間仕切り壁や天井は普通の部屋とほとんど変わらず隣室の脱衣場は冬でも
冷房運転がされていました。

(8) ある製造工場での冷水配管に蒸気配管と同じ保温施工が行われており、
周囲の湿気で結露し保温材は水浸しになって、保冷の役割を果たしていません
でした。

(9) ある工場では、空気圧縮機が9台並列に接続され運転されていましたが、
圧縮能力のないものや少なくなったものが運転に供せられていました。

 
みなさんの事業所での省エネルギーへの取り組みはいかがでしょうか。




NPO法人サポート技術士センター 理事長 國廣 隆紀



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