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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

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                中小企業のための「事業シナリオ経営」の奨め
         〜変化の時代をたくましく生き抜くために〜
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        第1回  “顧客価値”を探して自社を知ろう


 今回から3回のシリーズで、この激しい変化の時代にたくましく生き抜いていく
ために不可欠なこととして、「事業シナリオ」を作って経営することのお話をします。

 これはJISQ9005規格でガイドしている方法のひとつであり、ISO9001QMSの強化は
元より、これからの企業が戦略的に経営を行っていくための出発点となる大事な
テーマでもあります。
 
 会社がこれから先も継続して存在するためには製品やサービスが売れなければ
なりません。当たり前のことかもしれませんが、これが肝心なところです。
 

 ところで『あなたの会社で売っているものはなんですか?』と聞いてみましょう。
ほとんどの企業は“それは××ですよ”と自社の製品やサービス名を答えます。

 でも違うのです。あなたの会社で売っているものは、提供する製品やサービスを
通して「価値」を売っているのです。

 まずこのことをしっかりと認識していないと、これから先もあなたの会社の製品や
サービスは売れ続けないのです。


 質問を続けてみました。『あなたの会社ではお客様にどんな価値を提供していますか?』

 残念ながらすぐに答えられる会社はなかなかありません。

 A社は『そんなことを言ってもうちは「価値」なんか提供していないよ。会社が
近くにあるから買ってくれているだけだよ』と答えました。

 でも違うのです。きっとそのお客様は、近くにあるから急なときにすぐに入手できる
という便利さ(価値)を買ってくれているのでしょう。だからこの価値が存在する限り
買ってくれているのです。これを「顧客価値」と言いましょう。


 この「顧客価値」が他社に競争優位で提供できるかぎり当社の製品は買ってもらい
続けられるわけです。そのためには、この価値を提供できる「能力」がいつでも発揮
できるようになっていなくてはいけません。

 能力は自社の「特徴」を活用すると他社との競争優位になります。A社の例で言うと、
顧客価値は“入手の容易性”であり、必要な「能力」は“短時間に届けられる能力”
であり、そのために活用している「特徴」は“近隣にある”ということで現在は
競争優位となっています。


 このように「顧客価値−能力−特徴」の構造によって自社の姿を知ることで
“顧客の期待にミートした効率的な経営”が出来るようになります。

 またこれは今回のテーマとする事業シナリオ作りの出発点となります。


 次回はどのように「事業シナリオ」を描いていけば良いかについてお話をします。


★事業シナリオ作成セミナーが2月14日に開催されます。(参加費無料)
http://www.ccjc-net.or.jp/contents_detail.php?co=new&frmId=1365




              第2回 競争優位の「事業シナリオ」を描こう


 
  前回は「顧客価値−能力−特徴」の構造で自社の競争優位要因を浮き彫りに
していくことがこれからの経営に不可欠であることをお話しました。

 今回はこれをベースにした事業シナリオを作ることの重要性について事例で
お話します。

 第1回で登場したA社は顧客価値とこれを提供する自社の姿をあまり意識せずに
経営をしていました。


 しかしA社と同じように、“顧客に近い”という特徴を活かして、“その日の内に
届けることが出来る”と言う能力を発揮して、“入手の容易性”という顧客価値を
提供している段ボール箱メーカーのB社は違いました。

 まず考えたのは自社の持っている能力は本当に他社よりも強いのか?
たとえそうだとしてもこれはいつでもだれでも発揮できるようになっているのか?
ということでした。

 そうでなければ真の競争優位となってはいません。そのことを確認するために
自社の能力をもっと具体的に把握することにしました。


 “その日の内に届けることが出来る”という能力はどんな具体的な能力で支えられて
いるのか?

 まずすぐに考えられたのは、段取り替えができる能力です。
またなによりも社内でそれが当たり前にできるしくみ的な能力も必要です。

 ところでこれは自社だけですむ話ではありません。“段ボール材料をすぐに手に
入れられる能力”とか“外注の能力”も必要であるし、デリバリーの“運送業者を
うまく活用する能力”も必要です。


 そうなると自社の活かすべき特徴も“近くにある”という立地条件だけではなく、
“原料メーカーとのこれまでの長いつきあい”とか、“高い社員の士気”とか、
“地域との密接な関係”なども浮上してきました。


 B社はこのように自社の上流から下流までのサプライチェーンで登場するすべての
事業者との関係の中で顧客価値を提供できる筋書きを考えたのです。


 このような筋書きを「事業シナリオ」と呼んでいます。

 B社はこの事業シナリオを明確にし、そしてこれを実現するため、現状とのギャップを
埋めるための対策をひとつずつ計画的に実施することで今やこの地域で確固たる商売を
することが出来ています。
 
 このように競争優位の“事業シナリオ”を描くことで他社に勝てる戦略性をもった
経営が出来るようになります。


 次回はさらに「変化」を加味した事業シナリオについてお話しします。


★事業シナリオ作成セミナーが2月14日に開催されます。(参加費無料)
http://www.ccjc-net.or.jp/contents_detail.php?co=new&frmId=1365




           第3回 変化の時代を生き抜ける「事業シナリオ」を描こう



 前回は、顧客価値を提供するために、自社とこれを取りまくサプライチェーンも
考慮した総合的な能力を発揮することにより、自社の製品やサービスが売れ続ける
という事業シナリオを描くことが戦略経営の出発点であることのお話しをしました。

 今回はさらに世の中の「変化」を考慮した事業シナリオを描くことの重要性に
ついてお話しします。
 

 第2回で登場したB社は実はまだ不安があります。お客様がどこかへ引っ越して
しまうかもしれないし、物流の仕組みが変わって近くにあるメリットがなくなって
しまうかもしれません。

 つまり「変化」によりお客様がいま提供している価値を認めなくなった時が売れなく
なる時です。また世の中の大きな変化の中でお客様そのものが消えてしまうリスクも
あります。

 そこで必要になってくるのが“変化を乗り越える”事業シナリオです。
 

 C社は中小の板金製品製造業であり、大手の住宅関連製品や電機製品の下請企業として
長年やってきました。
 
 ところが住宅着工件数の減少や大手電機製品メーカーの海外移転の変化を読んで、
自社ブランド製品の開発とこの販売を目指した事業シナリオを明確にしました。

 当社の提供する「顧客価値」としては、大手住宅機器メーカーへは“管理の手間や
新製品開発の手間を省いてあげる”ことであり、このための能力として“小ロットで
生産できる”能力や“低コストで生産できる能力”“新製品開発できる能力”を挙げ、
さらに具体的な能力も明確にしました。

 またこれらの「能力」を発揮するための「特徴」として、これまで培ってきた板金
技術力とアセンブル技術の複合技術力や、海外を含めたグループ会社の存在などを
活用してこの能力強化を進めるシナリオです。

 その結果としていまや厳しい経営環境の中でここ数年の売上は増加して利益も確保
できている企業となりました。


 もちろんこの裏側には様々な成功要因があったわけですが、少なくとも当社が提供
する顧客価値とこれを可能にする当社の能力・特徴を明確にして、当社に関連する
サプライチェーン全体の中でこれらの能力が発揮できるような事業シナリオを描き、
これに向かって全社が一丸となって取り組んだ結果であることは見逃せない事実です。


 第2回で登場のB社もいま新たに“変化に対応した事業シナリオ”を描き始めて
います。


 経営資源に限りある中小企業において、このように事業シナリオを描いて集中的に
資源投下して経営することは大事なことです。

 3回にわたってお話しをしてきたことが、これからの皆様の経営のご参考になると
幸いです。




アイソマネジメント研究所 所長 丸山 昇





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