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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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       中小企業で必要な最低限のメンタルヘルス対策とは
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       第1回 メンタルヘルス対策の法的な要件とは



  みなさんこんにちは。ヒューマン・タッチの森川隆司と申します。今回、
「中小企業で必要な最低限のメンタルヘルス対策とは」とのお題で、3回に
わたって情報を発信させていただくことになりました。
 
 私自身も臨床心理士という立場であり、船橋を中心に企業の皆さんへの
メンタルヘルス対策を専業にして活動させていただいております。少しでも
お役に立つ情報をお送りできれば幸いです。



 まず、初回は「メンタルヘルス対策の法的な要件とは」との視点です。


 「メンタルヘルス対策なんて、何故にわざわざお金と労力掛けてやらないと
  いけないの?」

 「そんなお金があれば、がんばっている従業員達で分けるよ」

 「不調の人には辞めてもらって、新しい人を雇用する方にお金を使うね」

この様にお考えの読者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。



 数年前までは、私達現場で対策の支援をさせていただいている人間も、

『メンタルヘルス対策の企業としての目的は「リスクマネジメント」と「生産性の
向上」につきます!』とお伝えしていました。

 かけたくない「コスト」ではなく、「生き生きと仕事が出来る職場づくり」を
目指す「投資」であり、その先にある「生産性の向上」「売上や利益の最大化」に
直結する、まさに「経営課題です」とお伝えしていたのです。


 しかし、今、流れは大きく変わってきています。

 私はメンタルヘルス対策支援センターで促進員という立場もいただいております。

 労働基準監督署や労働基準協会さんとのセミナーなどでは、

現状では「出来ればやっておいたほうがよいこと」

としてメンタルヘルス対策をお伝えするのではなく、

「やらなければならないこと。マストの対応です!」とお伝えしているのです。


 特に、従業員数が50名を超える規模の事業場をお持ちの皆さんは、上記がより
大きな意味を持ってきます。

 以下に、メンタルヘルス対策が「マスト」であるの現状での背景を考えてみます。

■労働契約法第
安全配慮義務(健康配慮義務)
「使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができる
 よう、必要な配慮をする」

■労働安全衛生法
・衛生委員会での調査審議(50名以上の事業場)
「衛生委員会での調査審議、の対象となる「重要事項」の中に、「労働者の精神的
 健康の 保持増進を図るための対策の樹立に関すること」が明記されている」

・長時間労働者への医師による面接指導の実施 (全ての事業場)
「事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、
 疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を
 行わなければならない。 」

■労働者の心の健康の保持増進のための指針
・「こころの健康づくり計画書を作成し、4つのケアを推進すること」

■こころの健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

■業務災害の認定基準
・平成23年 「判断指針」→「認定基準」策定。


 さらに昨年、審議未了のため継続審議となった「労働安全衛生法の一部を
改正する法案」では、メンタルチェック義務化などの職場のメンタルヘルス
強化の内容が盛り込まれています。近いうちに法制化されることと思います。


 「生き生きと働ける職場づくり」としてのメンタルヘルス対策から、
「実施なければならない施策、投資」という理解が、これから急速に広がって
いくのだと感じています。




            第2回 こころの健康づくり計画書とは


  みなさんこんにちは。ヒューマン・タッチの森川です。
 第2回目の今回は、「こころの健康づくり計画書とは」とのお題でお話しさせて
いただきたいと思います。

  このコラムをお読みの皆さんは、「こころの健康づくり計画書」の存在は
ご存知の方が多いのではないかと思いますが、まずはこの計画書の説明から
させてください。

 「こころの健康づくり計画書」とは、、

 厚生労働省は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針、
平成18 年3 月策定)を定め、職場におけるメンタルヘルス対策を推進しています。

 その中で、「4つのケア」を推進していくことが求められています。「4つのケア」
とは、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等に
よるケア」及び「事業場外資源によるケア」であり、それらが継続的かつ計画的に
行われることが重要とされています。


  そのための計画こそが、衛生委員会等において信義を行い作成される「こころの
健康づくり計画書」になるのです。


 「こころの健康づくり計画書」には、以下の内容を盛り込むことが求められています。

1.事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
2.事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
3.事業場における問題点の把握及びメンタルヘルスケアの実施に関すること
4.メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保及び事業場外資源の活用に
  関すること
5.労働者の健康情報の保護に関すること
6.心の健康づくり計画の実施状況の評価及び計画の見直しに関すること
7.その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

 中災防や厚労省のパンフレットなどで、「こころの健康づくり計画書」の記入例が
出ています。それらを参考に作っていただいてももちろんかまわないのですが、
ご覧になられた方はわかると思いますが、少し面倒くさい内容になっています。

 これから初めて計画書を作成する企業にとっては、作成に躊躇するところも
あるのではないでしょうか。

 私が促進員の立場でも、またメンタルヘルス対策の業者の立場でも、作成する
企業様(特に規模が50名から200名規模の中小企業様)には、記載内容として簡潔に
以下のポイントだけをお伝えしています。

・基本方針
・目標
・実施事項
・担当者
・スケジュール

です。
 
 基本方針とは、会社の理念や社長の考え方など大きな視点から方針を記載いただく
内容です。

 目標は、メンタルヘルス対策に関する目標であり、例えば「全従業員がこころの
健康問題について理解を深める」「管理監督者は職場環境の改善、部下や同僚の
不調に気づく知識やスキルを身につける」「いきいきと働きやすい職場を目指す」
などです。
 
 実施事項とは、目標を達成するために具体的に実施する施策であり、その遂行の
ための各担当者の割り振りも大切になります。

 最後に、年間のスケジューリングを立てて、A4で2枚程度の「こころの
健康づくり計画書」が出来あがります。


 労基署も、この「こころの健康づくり計画書」作成を、自主点検票等の中で
求めています。

 第1回目のコラムでも書きましたが、「こころの健康づくり計画書」作成は、
マストの作成しなければならない事項として広く認知されてきているのです。



            第3回 最低限整えておきたいメンタルヘルス対策とは


 みなさんこんにちは。ヒューマン・タッチの森川です。
 
 第3回目の今回は、「最低限整えておきたいメンタルヘルス対策とは」との
お題でお話しさせていただきたいと思います。

 労働基準監督署から、「メンタルヘルス対策自主点検表」なるものが送られて
きて、「はて困ったなぁ…」というご経験をお持ちの方も多くおられるのでは
ないでしょうか。

 リスクアセスメントと同様に、現状ではメンタルヘルス対策は、例え中小企業で
あっても特に50名以上の事業場は実行を求められます。第1回目のコラムでも
書きましたが、現状ではメンタルヘルス対策で不十分な項目があれば、その
是正のための指導が入ることもあるようです。

 では、具体的にはどのような項目が行政から実施を求められているのでしょうか。

 大きく分けると以下の4点が強く求められています。

 ■衛生委員会等におけるメンタルへルス対策の調査審議
  ・具体的な対策について調査審議しているか 
  ・メンタル不全者の概況を把握しているか 

 ■事業場内体制の整備
  ・推進担当者を専任しているか 
  ・労働者、管理者、事業場内産業保健スタッフ等への教育研修を実施しているか 

 ■心の健康づくり計画の作成 
  ・「心の健康づくり計画」を作成しているか 
  ・内容に「事業者の意思の表明」「推進担当者の専任」「教育研修の実施」が
  含まれるか 

 ■その他
  ・個人情報の取り扱いについて規定があるか 
  ・4つのケアを実施しているか 
  ・職場復帰支援体制が整っているか 

 さらに、前回も触れましたが「ストレスチェック」が労働安全衛生法の改正に
よって義務化される流れがあります。私は上記の4つに加えて

 ■ストレスチェックの実施
  ・個人のセルフケア
  ・組織診断、職場環境改善

も近い将来はメンタルヘルス対策の必須事項になると確信しています。


 メンタルヘルス対策については、上記を網羅するためにどのような個別の施策を
どの範囲まで打つか。経営者の皆さんにとっては悩ましいところと思います。

 「どこまでやればいいんだかなぁ」「これは違反すると罰則があるの?」
「何から始めればよいの?」

 良くいただくご質問です。

 一例ですが、このような質問に対しては、次のようなお取り組みをお伝えして、
様々なサポートをご一緒させていただいています。

(1)指針の作成
(2)こころの健康づくり計画書の作成
(3)推進担当者の専任
(4)相談窓口の設置
(5)ラインケア研修、セルフケア研修の最低限年1回の実施
(6)ストレスチェックとその分析の実施

 (3)についてはお金をかけずに社内で検討可能です。

 (4)は健保などで団体で窓口を設置しているところがあります。皆さんの会社が
入っている健保はどのような窓口を持っているかあらためて確認いただき、
相談窓口が存在すればそれをまずは社外相談窓口にされることをお勧めします。

 (1)、(2)、(5)については、支援サービスやセミナー講師の依頼などを
サービス毎に業者にお願いすることも可能ですが、コンサルタントの時間売りを
している業者もあります。

 例えば年間でコンサルティング時間を必要時間数購入頂き、その時間内で業者が
各種仕組み作りのお手伝い、セミナー講師、個別相談などをこなしていきます。
 個別にサービスを購入していただくよりもはるかに単価を抑えて、なおかつ
専門職の顧問的な存在を得ることができます。中小企業様からは最もご相談の多い、
サービス形態です。

 (6)については、今後、社内の担当者が従業員から用紙を回収して結果を
フィードバックする内製の手法がますます難しくなると考えています。個人情報の
保護や取り扱いについて、ますます管理が厳しくなってくると考えているからです。

 ここについても、外部の専門機関を活用することをお勧めします。責任や個人情報の
管理をはっきりと切り分けることが可能で、なおかつ、個人へのフィードバックに
とどまらず、全国平均や業種平均と比べた自社のストレス状況を把握することが
可能です。問題点を可視化することができ、必要に応じては職場環境改善の支援までを
も受けることが可能です。


 「各種法規や指針に合致した形で、コストを抑えつつ最大限の効果を望む。」

 誰もが希望するメンタルヘルス対策だと思います。上記ご参考になさってください。

 コラムに目を通して頂いた全ての方に感謝致します。ありがとうございました。


株式会社ヒューマン・タッチ
臨床心理士 森川 隆司




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