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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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    事例から学ぶ!クラウドサービスによる業務効率化の実践!
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        第1回 「クラウドサービス」って何?


 クラウドサービスを利用していますか?と聞かれると「あまり利用していない。」
と答える方でも実際はかなり利用している方が多いと思います。

 何気にGoogleやYahoo等で何か検索したり、フェイスブックで友達を探したりしてい
ると、海外のどこにあるか分からないサーバでそのリクエストに応じた処理(=サー
ビス)が行われています。さらにすでにiPhoneやAndroid端末などのスマホやiPadなど
のタブレット端末をお持ちの方は、バリバリにクラウドコンピューティング技術を使
っていることになるでしょう。
 定義のような話は避けるとして、利用者、とりわけ中小企業にとっての「クラウド
サービス」とは、結局、何でしょうか?

 誤解を承知で書きますと、
(1)みんなで使う「割り勘で割安」システムを実現するサービス
(2)モノを所有しなくても済むように、ネット上のモノを簡単に使うためのサービス
(3)ITパワーを使って、今までできなかったことができるようになるサービス
となります。

(1)のおかげで、中小企業でもIT投資が楽になってきました。機能を抑えたりする
ことで、無料でのサービスも増加しています。ちゃんとした業務サービスも徐々にそ
の種類が増え、1ユーザ辺りの価格も安くなっている状況です。

(2)は、サーバやソフトに関わるモノですが、中小企業ではIT技術者が不足気味の
ため、管理しなくてもIT利活用できるメリットは大きいと思います。

(3)は、例えば、ゲームアプリなどは個人でも多くのユーザが使えるサービスを提
供し、増加していく分だけ借りるリソースを“稼働しながら”、増やしていける特徴
があります。実際、1日で数10万人増えても、大丈夫です。

 さて実際に中小企業がクラウドを使用するには、どのようなアプローチがよいので
しょうか?
 筆者は「ITサービスを借りる」という感覚が必要だと考えています。なおこの場合
のITサービスとは、主にハードウェアの貸し出し、システム開発環境の貸し出し、ソ
フトウェアの貸し出しのことです。
 そして、何をどのくらい借りるのがよいのか? どのように借りればよいのか? 
どこから借りればよいのか? を考えることです。
 例えば、業務アプリケーションをサービスとして新たに借りるのか? それともシ
ステム開発環境を借りて、今まで使ったアプリ資産を乗せるのか? そのような判断
が必要となってくるのです。
 詳細は次回以降で、解説いたします。

 次回は「具体的なクラウドアプリケーションの紹介?軽減税率補助金でモバイルP
OSを導入しよう?」と題して、具体的なアプリケーションを紹介して、ビジネス上
での優位性を中心に述べてみたいと考えています。



 第2回「具体的なクラウドアプリケーションの紹介
                〜軽減税率補助金でモバイルPOSを導入しよう〜」

 前回は「クラウドサービスって何?」と題して、クラウドサービスが中小企業に
とって、「IT」を安価で手軽なものにする状況を解説いたしました。
 さて今回は数ある「クラウドサービス(=アプリケーション)」から、筆者が衝
撃を受けた実務アプリと補助金活用で話題のモバイルPOSアプリについて、ご紹介い
たします。


(1) 衝撃アプリ(あくまで個人的な感想です)

・MISOCA(ミソカ) 株式会社MISOCA
 見積書、納品書、請求書作成+郵送依頼可能アプリ。郵送依頼しなければ、無料で
使用可能。弥生ユーザにとっては、弥生との連動(平成28年3月31日から弥生IDでロ
グイン可能)は特筆もの。当然、顧客管理や商品管理もある程度可能で、小規模企業
や個人事業主にはお勧めです。

・freee(フリー) freee株式会社
 クラウド会計アプリ。少額(1980円/月)で見積〜決算までの会計業務が可能。同
様なアプリで家計簿的な使い方がご希望であれば、「マネーフォワード」というアプ
リもお勧めです。

・TeachmeBIZ(テーチミービズ) 株式会社スタディスト
 マニュアル作成アプリです。今までのOffice系ソフトと比べ、生産性が1/5以下に
なっているような感触です。ただ、5000円/月がミニマムプランなので、実際に作成
し、メンテする予定がなければ、気軽に導入という対象ではないので、無料期間(30
日)にてご確認ください。


(2)モバイルPOSアプリ

 現在、話題となっている「軽減税率(※)」が導入されるとまず領収書の様式が変
わります。お手持ちのタブレットやスマートフォン端末を活用し、安価なクラウド型
POSレジに切り替えるよい機会になるかと思いますので、一部をご紹介いたします。

・Air(エア)レジ  株式会社リクルートライフスタイル
 iOS、Androidのどちらも可。機能は一般的だが、初期もランニングも無料。お試し
にどうぞ。(注 2016年3月28日にAndroid版アプリの提供終了となりました。)

・ユビレジ  株式会社ユビレジ
 iOSのみ対応。iPad用として紹介されており、freeeやSalesforceなどの外部連携あ
り。

・スマレジ  株式会社プラグラム
 iOSのみ対応。機能が豊富で弥生やマネーフォーワード等との連携あり。

※軽減税率の補助金情報抜粋  詳しくはコチラ、http://kzt-hojo.jp
(複数税率に対応したレジ機能サービスをタブレット、PC、スマートフォンの汎用端
末と付属機器を組み合わせて、レジとして利用する場合の導入費用を補助対象としま
す。)

 以上、お試ししてみて、ご検討ください。

 次回は「中小企業でのクラウド活用成功事例」と題して、具体的な成功事例を紹介
して、ビジネス上での優位性を中心に述べてみたいと考えています。



 第3回 中小企業でのクラウド活用成功事例

 こんにちは、千葉IT経営センターの野村です。
 前回は、「具体的なクラウドアプリケーションの紹介〜軽減税率補助金でモバイ
ルPOSを導入しよう〜」と題して、モバイルPOSアプリや便利なアプリをご紹介い
たしました。
 なお6/7(火)には、消費税軽減税率対策講座として、無料セミナー「やってみよ
う!タブレット端末を使ったPOSレジ・カード決済入門講座」が、「きぼーる(千葉
市)」にて開催されます。詳しくは千葉IT経営センターのホームページをご参照く
ださい。
http://www.it-keiei.or.jp/ccs

 さて今回は無料のクラウドサービスを活用して、経営課題を解決している事例に
ついて、ご紹介いたします。

(1)クラウド会議室アプリ:Chatwork(チャットワーク)

 工務店K社は、電話や口頭、付箋メモ書きでの業務伝達の限界を感じ、クラウド
会議室アプリのChatworkを導入。
 現場の作業を止める電話が激減し、伝達ミスがほぼ無くなった。現在、社内だけ
でなく、協力会社まで広げ、スピーディで確実な業務プロセスを手に入れたT社長は
「神さまのツール」と呼んでいます。
 電話やメモ書きのアナログ伝達が根強く使われている業界では、品質とスピード
のビジネス優位性が高まる好事例です。

 印刷業N社ではプロジェクト毎の伝達に使用しています。例えば、新型機器の開
発では、外部のコンサルタントとも共有し、アドバイスを随時受けられるような体
制を構築しています。

 その他の会議室アプリでは、小生の場合、サイボウズLIVEを多数のプロジェクト
で使用しています。現在10グループほどで、活発な情報交換に使用しています。

(2)請求書サービスアプリ:Misoca(ミソカ)
(連載第2回「具体的なクラウドアプリケーションの紹介 〜軽減税率補助金でモバ
イルPOSを導入しよう〜」にて紹介)
https://www.ccjc-net.or.jp/headline/bn/h28/nomura.html

 広告会社R社では、請求書郵送サービス以外にも請求金額の回収保障サービスま
で活用しています。過去の経験から、新規取引先の信用調査やトラブル発生時の手
間を回避し、「安心」を担保しています。

 システム会社K社では、会計ソフトとの連携で事務処理負荷(特に月末)を大幅
に短縮しています。またiPhoneで外出先から請求書をその場で発行、郵送まで手配
しているそうです。

 ベンチャー企業、ネット関連企業、個人事業主を中心に、見積書から請求書作成
と発送依頼が出来るサービスが受け、拡大している注目アプリです。
 小生も「0円」で、今年度から活用しています。

 以上、他にもご紹介したいアプリは多数ありますが、手軽なクラウドサービス導
入事例をご紹介いたしました。

 次回は「PaaSクラウドサービスによるシステム構築事例」と題して、クラウドサ
ービスの利用に留まらず、新ビジネスとしてクラウドサービスの活用を始めた事例
を紹介したいと考えています。


 第4回「PaaSクラウドサービスによるシステム構築事例」

 前回(5/19)は、「中小企業でのクラウド活用成功事例」と題して、2つのクラ
ウドサービス(Chatwork、Misoca)を解説いたしました。
 さて今回は自社のビジネスモデル変革にPaaS(パース=プラットフォームを提供
するクラウドサービス)と呼ばれるシステム開発用のクラウドサービスを活用して
いるケースについて、ご紹介いたします。


(1)陣屋コネクト

 箱根鶴巻温泉の1旅館であった陣屋は、倒産の危機から世界最大の顧客管理クラ
ウドサービス「Salesforce」(セールスフォース)ベースで社長自らがクラウド型
ホテルシステムを構築し、蓄積したデータを分析。その結果、「週休2日(平日)に
よる稼働率の平準化」、「食べ残し分析による無駄の排除、人気メニューの拡大」
等で、ITによる「採算力」と「おもてなし力」を向上させ、見事V字回復しました。
 そして、そのクラウドシステムと業務ノウハウを同業者に提供し、旅館業に「シ
ステム業」をプラスしました。現在では180施設以上で使われています。


(2)株式会社AmidA

 印鑑のECサイト「ハンコヤドットコム」としてスタートした同社は、手作りの基幹
システムからサイボウズ社のクラウドサービス「Kintone」(キントーン)ベースに
置き換え、柔軟でスピーディーなカスタマイズ開発を手に入れました。ECサイトから
の受注情報などやその他社内データもリアルタイムで取り込めるデータ収集ツール
「DataSpider」(データスパイダー)もクラウド上で連携させ、効率的な業務プロセ
スを構築しています。今では「マーケティング・プラットフォーム事業」も立ち上げ、
データ分析力を売りとする企業にまで成長しています。


(3)TIJ東京日本語研修所

 留学生を中心に日本語を教えている当研修所は、同じく「Kintone」を用いて、学生
の語学力や生活態度まで細かな項目を管理できる独自のシステム構築を進めています。
当社は留学生の生活を守るというフィロソフィーを持っており、強みを活かせるシステ
ムを必要としていました。また自社でもある程度、カスタマイズが可能である事、クラ
ウド上で販売が出来る事で、「システム業」への参入も開始しています。

 以上のように、その道のプロが専用システムを構築し、同業者にノウハウやシステム
を拡販するビジネスモデルを武器にする事例が多く見られるようになってきました。自
社以外の蓄積データも分析し、時代の流れを読むことで、経営判断に活用しています。

 次回は「これからのクラウドサービス」と題して、IoTやビッグデータ活用など大
企業中心に進められているサービス開発が中小企業にどのように影響してくるのかを予
測したいと考えています。


 第5回「これからのクラウドサービス」

 前回は「PaaSクラウドサービスによるシステム構築事例」と題して、中小企業がク
ラウド上にシステムを構築し、販売する事例を解説いたしました。
 さて今回はこれからもっと本格化するクラウドサービスについて、ご紹介いたしま
す。

(1)IoTクラウド
 モノのインターネットを意味するIoT(Internet of Things)は、工作機械や車両
などを中心に進化を遂げ、ネットを通じて、工場まるごと、街まるごとを繋ぐ概念とし
て定着しています。例えばスマホの中では、GPSセンサーで「位置」を、ジャイロセン
サーで「傾き」を、加速度センサーで「慣性」を、照度センサーで「明るさ」を、近接
センサーで「距離」を測り、伝えていますが、いろいろなモノが同様な機能を持ち始め
ています。あらゆるモノに付けられたセンサーやコンピュータから瞬時に(あるいは一
定間隔で)データが収集され、遠隔モニタリングや分岐に留まらず、遠隔からの処置も
可能となってきています。
 なおIoTの標準化はまだまだ定まっていませんが、プラットフォームサービスが株式会
社ソラコム(SORACOM)などから提供され、自社ですべてを準備しなくてもIoTのビジネ
ス活用に乗り出せるようになりました。中小企業としてもサービス実験や自社のサービ
ス提供が安価に可能となっています。

(2)クラウドロボティクス
 ロボット技術やAI技術が進化し、クラウド上の蓄積データから最適解を導き出し、自
律型のロボットが動き始めています。例えばAmazonは、ピックアップロボット「Kiva」
が倉庫の棚から自分でピックアップし、配達ロボットのドロ−ンに渡す構想で実験を始
めています。なお千葉市のドローン配達事業は、特区に選定され、世界初の実用地域と
なりそうです。(現在、Amazonの仕組みを使うかは未定)
 また中小企業でもソフトバンクのペッパーが接客したり、製造ラインの異常発見など
見回り役で使われたりという事例がニュースを目にするようになりました。5年後には
多くの会社からいろいろなロボットが提供され、日常生活の中で当然のように見かける
ようになると予測してします。自社とどう関係するのか、そろそろ検討されてみてはい
かがでしょうか?
 一方、特に危険な場所でのロボット活用は、日本では福島原発事故を中心に研究され
て、応用範囲が広がりつつあります。高所の工事現場や火災現場のなど、頼もしいロボ
ットが登場してくるでしょう。

(3)クラウドソーシング
 ランサーズやクラウドワークスを中心に、知名度が上がり、多くの企業がすでに活用し
ていると思いますが、まだ様子見している中小企業の方へのご紹介です。自社のあらゆる
業務処理をクラウド上で依頼し、プロのサービスを受けられるのがクラウドソーシングで
すが、利用登録やお願いの仕方(仕様の伝え方)などが不慣れだと敷居が高く感じますね。
 またクラウドソーシングのサイトも多くなり、どこを使えばよいかも悩みます。その辺
りは利用経験の多い「ITコーディネータ」に気軽にご相談ください。

 以上、本稿で「クラウドサービスによる業務効率化の実践」を5回に渡って解説してきま
したが、以下の言葉で締めくくりたいと思います。
〜ビジネスの3大要素「人、モノ、金」は、今の時代「クラウドソーシング」、「クラウド
コンピューティング」、「クラウドファンディング」で、解決しましょう!〜

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。




             (一社)千葉IT経営センター 代表理事 野村真実



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