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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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              ゲーミフィケーションでチームを活性化
                  (スキルアップとコミュニケーションアップ)
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              第1回「ゲーミフィケーションってなに?」

 はじめまして。株式会社エクソンの荒巻と申します。今回、このメルマガで「ゲ
ーミフィケーション」をテーマに担当することになりました。

 できるだけ平易な言葉で、具体的にイメージを湧かせて、取り組んでみたいなと
思うようなメルマガを書いてみたいと思っています。

 さて、みなさんは「ゲーミフィケーション」って言葉は聞いたことがありますか? 

 ボードゲームなど(例えば人生ゲームとか)のゲーム型式で、体験や対話を通じて
学びを深めるという仕組みを意味します。

 接客業における顧客満足度の向上や店舗マネジメント、商取引を再現することで
の経営者として稼ぐ力と計数管理などを学ぶことを少人数から大人数で楽しく飽き
ずに学ぶことができます。

 事業を行う上で、従業員の人材育成は必ず行わなくてはならないことです。一般
的に人材育成は研修に参加する。もしくはOJT(オンザジョブトレーニング)として現
場で学ぶ。もしくは、インターネットの研修コンテンツをつかったeラーニング、課
題図書などでの自学習などがあります。

 しかし、学校の勉強を思い出していただきたいのですが、座学ばかり続けば眠く
なる。人前での発表などは恥ずかしくて緊張してしまう。OJTでは実務が忙しくなっ
て振り返る暇が無く定着が社員任せ。

 なかなか、効果が見えにくい、また参加へのモチベーションが上げにくいという
のもよく聞く話です。私も逆に1日中座っているような研修に参加するのは苦痛に
感じるときもあります。

 また、理論や事例ばかりを詰め込まれても、それを自分の仕事にどう応用すれば
良いのか悩むこともたくさんあります。答えを教えてくれるような学習では考える
力がつかずに指示待ち族を作りかねない懸念もあります。

 ゲーミフィケーションが万能とは私も申し上げるつもりはありませんが、ゲーム
という平易な体験を通じて感じる事はたくさんあります。

 ゲーム中に受講仲間の行動や他の人への指導フィードバックから「気づきが得ら
れる」。

 ゲームの進行の中で、同じ目標に対して進むチームメンバーと、積極的にコミュ
ニケーションをすることで「団結感が増す」。

 ゲームを中断振り返ることで、瞬間の判断間違いや正しい方法を、ミスしたその
場面が「記憶に鮮やかな時に学べる」。

 今時の若い従業員などにはゲーミフィケーションを組み込んだ社員教育が効果的
に感じませんか? また、ベテラン社員や上司なども一緒にチームを組むことで社内
のコミュニケーションの活性化や、お互いの実務では見えない特性が把握できるな
どの効果も出ると思います。

 ぜひ、このメルマガを読んでいる事業者の皆さんも、社員教育、人材育成にゲー
ミフィケーションを組み込んでみてはいかがでしょう?

 次回は、もう少し具体的に座学型研修などと比較してのゲーミフィケーション の
メリットデメリットをお伝えします。



         第2回「ゲーミフィケーション導入のメリット・デメリットは?」

 みなさんこんにちは。株式会社エクソンの荒巻です。前回から始まりましたゲー
ミフィケーションってなに?というメルマガの二回目になります。

 今回は、実際会社に、業務に、組織に、チームにゲーミフィケーションを導入し
たらどんなメリットがあるのか。また、デメリットが考えられるのかをお伝えし
ます。

 さて、前回のメルマガでゲーミフィケーションとは「例えば人生ゲームみたいな
ボードゲームのような仕組みをつかって学びを深める」と書きましたがみなさん
覚えていらっしゃいますでしょうか?

 実は、多くの会社ですでにゲーミフィケーションは導入されています。広い意味
で捉えるとゲーミフィケーションと言うのはもう日常のビジネスで活用されていま
す。

例えば・・・

 皆さんの会社の営業部の壁には、営業担当者や店舗ごとの売上や販売数などの棒
グラフが張り出されていませんか?

 他にも、業務成績だけではなく、業務改善のアイデアの提案件数や、会社全体・
チームなどで何らかの目標を設定して表彰をする制度などはありませんか?

 実はこういったのも広義のゲーミフィケーションと言われています。

(1) 誰もがすぐ理解できる公平なルール(ビジネスシーンを可視化)
(2) 遊び感覚で簡単に競争に参加出来る(気軽な感覚で参加促進)
(3) 参加者でゴールが常に共有されている(参加者に視覚などから情報共有)

 なんとなく、簡単にゲーミフィケーションを仕事に導入する事ができそうな気が
しませんか? 実はちょっとした工夫で従業員を巻き込んで気軽に取り組むこともで
きます。

 このメルマガでは「人材育成や社員教育にゲーミフィケーションを」というテー
マですので、通常の座学研修との比較などでまずはお話しをしたいと思います。


ゲーミフィケーション導入のメリット

・研修や学習に対しての心理的なハードルが低い。

・参加者がわいわいコミュニケーションを取りながら進むので熱気が高まりやすい。

・途中で間違ってもやり直すことが気軽にできるので、自分の失敗や間違いを振り
返ることが簡単にできる。

・身体を動かしながら進行するので、飽きたりすることがない。


ゲーミフィケーション導入のデメリット

・年長者になるとルールを理解するのに時間がかかり、参加途中でモチベーション
が下がる可能性がある。

・ゲームマスター(講師)の力量で学習効果に大きく差が出ることが多い。

・知識や情報付与をするための学習には比較的不向き。

・実務との関連性が読み取りにくく導入選択が難しい時がある。


 次回は、実際にゲーミフィケーションを利用してどのような人材育成や教育がある
のか事例をお伝えします。



          第3回「ゲーミフィケーションでの人材育成の事例紹介」

 みなさんこんにちは。株式会社エクソンの荒巻です。九州北部の豪雨災害で被災
された皆様には心よりお見舞い申し上げます。はやく、日常の生活に戻れることを
心より祈っています。

 さて3回目の今回は、実際にゲーミフィケーションを社員教育に導入して効果を
上げている事例をお伝えします。

某IT技術者派遣企業様

対象「新卒新入社員(技術系・営業系・共通系)」
時期「入社新入研修への組み込み」
テーマ「社会人として稼ぐ力の大事さを感じ取って貰い、チームで協力しながらビ
ジネスを推進するコミュニケーション力とマネジメント力を身につける」

 一般的に、学卒の新入社員研修では、入社する会社の仕組みやガイダンス、社会
人としての心得、ビジネスマナー、業務に必要なスキル(この会社は特に技術者は
プログラム言語スキルが重要視されていました)などを1週間〜2週間ぐらいで研修
し、そのあと仮配属などでのOJT(オンザジョブトレーニング)という流れが多いと
思います。

 その中で、新入社員の像が変化してきたことも背景にありますが、ビジネスパー
スンとして重要な「稼ぐ」という意識が希薄になってきた危機感を経営層が感じて
きたようです。技術職を派遣することが主業務ですから、仕事を取ってくるとか、
利益を上げるとかよりも、会社の文化として「プログラムの開発を仕様通りに進め
られる人材」にいつのまにか変化しました。

 お客様のビジネスを考えるとか、仕様書の背景を考えずに仕事をすることで、人
材として将来のSE(システムエンジニア)やPM(プロジェクトマネージャー)へス
テップアップさせるためにはビジネスパーソンとしての基本である「稼ぐ力」を技
術屋さんにももたせる必要があると判断されたようです。

 お客様の立場にたってプログラミングを考える、仕様の求める背景を想定しなが
ら開発を進める。新入社員の段階からそんな意識を持って貰いたいという経営層か
らの課題を解決する必要がありました。

 しかし、ビジネスを知らない新入社員に、まして技術的な勉強をしてきた若い社
員に「財務会計」や「マーケティング」「セールスコミュニケーション」「商品サ
ービス開発」を座学などでトレーニングしても自分の業務とは関係ないと他人事に
感じさせる懸念が払拭できませんでした。

 そんなときに、ある会社から提案された「ゲーム型式を利用した稼ぐ力を理解さ
せるためのシミュレーションゲーム」でした。

 次回は、実際にどのようなゲーミフィケーションを使って研修を進め、どんな効
果があったのか、お客様からどんな声があったのかをお伝えします。



     第4回「ゲーミフィケーションでの人材育成の事例紹介」

 みなさんこんにちは。株式会社エクソンの荒巻です。千葉の幕張も梅雨が明けて
すっかり夏空になってきました。

 さて4回目の今回から、前回お伝えしたゲーミフィケーションを社員教育に導入し
た企業さんからの声や、具体的な準備や効果に関してお伝えします。

 IT技術者派遣企業では新入社員向けに、ビジネスマンとしての稼ぐ力をつけさせ
たい、技術者として少しでも広い視野を持って貰いたいと言うのが経営層の想いで
した。

 そこで導入したのがゲーム型式の「稼ぐ力トレーニング」です。このトレーニン
グは”ダイナミズム”という起業家向けゲーミフィケーションを、弊社エクソンで
ビジネスパースン向けにルールをカスタマイズした、ゲーミフィケーショントレー
ニング(以下、ダイナミズム改とします)です。

 実際に行った社員教育では、ビジネスパースンとしてのマナーや基本的なビジネ
ススキル、システム開発に関連する技術習得トレーニングを8日間実施したのちに、
ダイナミズム改の実施を1日で設定されています。

カリキュラムはざっと以下のような状況でした。

10:00から17:00までの1日コースは
(1)人事研修担当者からのオリエンテーションとトレーニング目的の共有
(2)トレーナーとアシスタントの自己紹介とルール説明
(3)お手並み拝見としての簡易ルールでのゲーム実施
(4)昼休み
(5)本ルールでのビジネス環境を再現したゲーム実施
(6)ビジネスで稼ぐことの重要性と新卒社員としてのビジョン(座学)
(7)ゲームを終えての振り返りと、技術者として考える稼ぐとは(ワークショップ)
(8)ビジネスパースンとしてのこれからの課題発表と感想の共有(プレゼン)

 ダイナミズム改は、4人チームを5組程度設定して、それぞれのチームがライバル
でもあり、同業の仲間でもあると言う設定をします。私たちトレーナーとアシスタ
ントは、お客様役、取引先役、ゲームコントローラーとして30人定員程度の教室全
体を盛り上げていきます。

 題材としては、ビジネスの基本である小売り業をシミュレーションします。安く
仕入れて、付加価値をつけて高く販売するというものです。

 チームで資金をしっかり管理するためのマネジメントスキル。安く仕入れるため
に取引先や同業者との仕入交渉でのビジネスコミュニケーションスキル。
 事前に情報を分析することでリスク管理や販路開拓をするためのマーケティング
スキルなどを、チーム内でのディスカッションはもちろん、教室内で積極的に動き
回ることでチーム外とも行います。

 成果として、チームの役割分担やその協力姿勢、他のチームと懇意にすることで
仲間作りを通じた仕入ルートの確保、帳面での資金管理やルールとの突き合わせに
よるマネジメントやコンプライアンスのスキルなどが身についたようです。

 ゲームというハードルの低いイメージのトレーニングでしたが、1日を通して新入
社員達が様々な気づきを発見する。人事研修担当者もゲームという場で初めて見る
新入社員の個性の新たな発見があったようです。

 次回最終回は、この導入事例を通じたゲーミフィケーションでの人材育成導入の
際の注意点や留意点を、皆さんの会社が導入を検討するという視点からノウハウを
お伝えします。



          第5回「ゲーミフィケーションでの人材育成導入のノウハウ」

 みなさんこんにちは。株式会社エクソンの荒巻です。皆さんは、お盆休みはどち
らに行かれたのでしょうか?

 さて今日の5回目の連載で、ゲーミフィケーションというテーマのコラムは終了し
ます。ありがとうございました。今回は、実際に導入したお客様の声なども交えて、
導入検討する際の留意点などをお伝えして終わりにさせていただきます。

○ゲーミフィケーションでの人材育成で得にくいコト

(1)業務上の知識をゲーミフィケーション単体で得ること
(2)即実務に活かせる形で習得すること
(3)研修成果を客観的な数値として定量的に測定すること

 ゲームだけで実務に使える知識や技能は得られるとは考えない方が良いです。自
分の会社をシミュレーションした専用のゲームでもない限り、実際の個社それぞれ
の業務とは微妙に異なっています。また、ゲームの点数が研修成果ではありません。
あくまでもゲームでの結果としてコミュニケーションネタ程度に。

○ゲーミフィケーションでの人材育成で得られるコト

(1)ゲームという共通体験を通じたコミュニケーションの広がり
(2)ゲームという仮想体験を通じたトライアンドエラー手法の理解
(3)ゲームと組み合わせた座学やワークショップの浸透促進効果

 とにかくゲームであるため失敗をしても痛手がありません。様々な方法を試すこ
とができます。どの手法がいちばん効率良いのか。どの手法がいちばん全員の理解
を得やすいのか。新しい手法を考えるときのメンバーの発想の違い。などなど、実
際の業務ではお客様を考えるとチャレンジしにくいことがたくさんあります。
 気楽な環境に置かれることで大胆な発想や、日常とは異なる気づきを得られ、座
学オンリーやシナリオに沿ったロールプレーイングとはちがった成長が得られます。

○ゲーミフィケーションでの研修などを実施する際にしっかり検討いただきたいコト

(1)目的は何か、研修効果として何を得たいのか
(2)ゲームを実施する際のゲームマスターの力量は十分か
(3)座学やグループディスカッションで実務に必要な知識とゲームの振り返りでの
     気づきを得られるカリキュラムになっているか

 これは、ゲーミフィケーションでの人材育成に限らず、目的と成果を関係者全員
でしっかりと共有をすること。またゲームの実施中にも、繰り返し確認することを
忘れないで下さい。ゲームはとにかくスピードが上がってくるモノです。日常に流
されるごとく、ゲームに勝つことが目的にすり替わらないようにしなくてはいけま
せん。

 その為にも、ゲーミフィケーションでの研修などは、最初に必ずゲーミフィケー
ショントレーニングのプロに依頼して下さい。

 そして、プロの講師に、どんな業務をやっているのか、どんな悩みがあるのか、
何を期待しているのか、どんな成果を目指しているのか。こんなことを事前にしっ
かりと話し合いをしてから導入することが大切です。

 ゲーミフィケーションでの研修は、誰にでもできる様なゲームルールや設計にな
っている分だけ、一般論として面白かったで終わってしまう可能性があります。そ
のためゲームマスター(講師)の力量が重要となります。

 エキサイティングでメチャクチャ気づきがあって、自分の弱点と課題がハッキリ
して、今後何を学び、加えないといけないかなどを仲間と共通言語にできるか。と
ても差が出る手法です。

 人こそビジネスの全てである中で、人材育成はこれからの中小企業の生命線です。

 最初のウチはゲーミフィケーションでの人材育成に違和感をもつ部分はあると思
いますが、ぜひぜひ皆さん導入の検討をしてみてはいかがでしょうか?
  
                株式会社 エクソン 代表取締役 荒巻 順
                       
 以上5回にわたって「ゲーミフィケーションでチームを活性化(スキルアップと
コミュニケーションアップ)」をお送りいたしました。
 次回の連載は「中小企業での3Dプリンター活用事例と取り組み方」をテーマに
野村真実氏により5回にわたって連載していただきます。

                                  株式会社 エクソン 代表取締役 荒巻 順


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