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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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        中小企業のためのブランディングの基礎知識
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           第1回 「ブランド」とは?

 9月の台風15号で被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げます。
 私は、株式会社サクラ前線・代表取締役の櫻田登紀子と申します。関東を中心に
中小企業のブランド戦略立案・広報戦略立案のご支援をさせていただいています。
今回より6回にわたり、「中小企業のためのブランディングの基礎知識」としてコラ
ムをお届けいたします。

<ブランドの世界へようこそ!>

 初めに、次のカテゴリーで、あなたが購入したことがある、または知っているブ
ランド名を書き出してみてください。同時に、そのブランドを選んだ理由について
も考えてみてください。

 「自動車」「パソコン」「携帯電話」「洋服」「腕時計」「靴」「ボールペン」
 「お茶」「牛乳」

 いかがでしたか? 
 たとえば自動車であれば、知っているブランドはベンツやBMWなどの憧れの高
級車であっても、購入したことがあるブランドは予算や燃費、荷物の積載量や機能
で選んだものかもしれません。
 アウトドアやキャンプなどを趣味とする人であれば、車内に荷物を置ける十分な
スペースが必要ですし、子育て世代であれば、乗り降りがしやすい自動スライドド
アは欠かせないと考えている人もいるのではないでしょうか。ディーラーに知り合
いがいるからという理由を挙げる人もいらっしゃるかしもれません。

 私たちは普段から多くのブランドに触れています。ブランドを選択する時、その
人の価値観や体験が大きく影響しているのではないでしょうか。一方で、後半のカ
テゴリーになるほど日用品となり、思い出されるブランドは大手メーカーのブラン
ドだったのではないかと思います。

 このように、自身の購入体験や個々のブランドに対する知識を振り返るだけでも
たくさんの気づきを得られたのではないでしょうか。

<ブランドって何?>

 「ブランドとは?」と訊かれると、「ヨーロッパの高級品」や「企業や商品・サ
ービスのマークや名称」だと思っている人も多いと思います。これは、時代により
「ブランド」という言葉の持つ意味が変化してきているからです。

 現在は、「ブランド」には様々な定義があります。例えば、一般社団法人ブラン
ド・マネージャー認定協会による「消費者・顧客から見た『ブランド』の定義」に
よると、「ある特定の商品やサービスが消費者・顧客によって識別されているとき、
その商品やサービスを『ブランド』と呼ぶ」とあります。

 これに対し、私が考える「ブランド」(ここでは企業ブランドとします)とは、
「企業の存在意義」や「社会的意義」であり、「わが社は何のために存在するのか」
というブレない軸だと思っています。これは、言い換えれば企業のミッションであ
り、唯一無二の差別化ポイントです。

 例えば、スウェーデンに本拠地を置く自動車メーカーのボルボの存在意義は「原
罪感」であると言われています。これは、「自動車は人の生活を便利にするもので
ある反面、人の命を奪う凶器にもなる。だから世界で最も壊れない自動車を作る」
というミッションに繋がり、「ボルボの車は頑丈で壊れにくい」という「企業ブラ
ンド」になっています。

 次回は、「ブランド」についてもう少し深く掘り下げてお伝えしたいと思います。
どうぞお楽しみに!



            第2回 ブランディングの重要性

 皆様、こんにちは。株式会社サクラ前線 代表取締役の櫻田登紀子です。今回は、
「ブランディングの重要性」というテーマでコラムをお届けいたします。

<ブランドの歴史>
 前回のコラムで、「ブランド」とは企業や商品・サービスの「存在価値」や「社
会的意義」であると書きました。そもそも「ブランド」という言葉は、元来どのよ
うな意味を持っていたのでしょうか。

 「ブランド(brand)」の語源は、家畜などに押した「焼き印(burned)」と言われ
ています。昔、農家では自分の牛を、他の牛と識別するために熱く焼いた鉄印を押
しました。「ブランド」とは、生産者を識別し、他の生産者の製品と区別するため
の手段として用いられてきました。

 しかし、現在の「ブランド」は、単に所有権を示したり、生産者を識別したりす
るためのものだけでなく、競合と差別化し、上述のように消費者の購買決定に影響
を与えることを意図するものへと発展しました。

 現代では、流通の発展やインターネットの普及などにより、消費者の購買時の選
択肢は飛躍的に発展しました。一方で、購買決定までの情報も増大し、購買決定に
至るまでの判断も難しくなっています。そのために、消費者は、その「ブランド」
が信頼できるものであるか、他と違うものなのかどうかで購買決定する傾向が強ま
りました。このように、「ブランド」の重要性はますます高まってきたと言えます。

<意思決定を左右するブランド>
 企業が商品・サービスを初めて市場にリリースしたばかりの時は、この商品・サ
ービスの「ブランド」は消費者・顧客の意思決定に大きく左右されることはありま
せん。しかし、リリース後、消費者・顧客が、この「ブランド」との接触を繰り返
すことにより「ブランド」を評価することになります。「品質が良かった」「接客
が良かった」「アフターフォローが良かった」などのプラスの評価がされた場合、
「ブランド」の価値は高まっていき、「このブランドなら安心」という購買に結び
ついていきます。

 一方で、「品質に問題があった」「店員の対応が悪かった」「アフターフォロー
が不十分だった」などのマイナスの評価がされると、消費者・顧客の購買に結びつ
かないどころか、悪い評判がたち、最悪の場合、経営が立ちゆかなくなる事態に繋
がることもあります。

 皆さんの経験の中で、ブランドがマイナスになった「ブランド」を思い起こして
みてください。

 いかがでしたでしょうか。プラスのイメージと同じくらい、あるいはそれ以上に
マイナスのイメージは強く印象に残ることがあります。大手食品会社による食中毒
事件など、「ブランド」が大きく毀損されたケースは長い時を経ても心の中に刻ま
れています。ブランドイメージがマイナスになる要因には、「人」が関わることも
多いものです。私たちは、自社の「ブランド」がマイナスの状態に陥らないよう、
従業員教育も含め経営に責任を持たなければなりません。

 このように、「ブランド」をプラスの状態に成長させる活動を「ブランディング」
と言います。昨今のように、商品・サービスの機能や性能、品質での差別化が難し
くなる中で、顧客の心の中に深く働きかけるブランディングが重要となります。こ
のため、従来のように場当たり的にブランディングを行うのではなく、プラスの状
態に成長させるために、「なぜ、どのような意図をもって行うのか」という目的を
明確にし、一貫性・継続性のある活動に結び付けることが重要です。

 次回は、ブランディングのステップについてお伝えします。どうぞお楽しみに!



                    第3回 ブランディングのステップ

 10月は台風が襲来し甚大な被害をもたらしました。そんな中、福島県にあるスパ
リゾートハワイアンズが、いわき市内の断水地区の住民を対象に、10月16日(水)
から10月31日(木)までの平日限定で「プール・温泉施設の入場を16時以降無料開
放」するというニュースが流れました。
 スパリゾートハワイアンズと言えば、映画「フラガール」でも有名ですが、幾多
の経営苦難を乗り越えてきた大型レジャー施設です。これまでのヒストリーと、今
回の被災者支援は、スパリゾートハワイアンズのブランディングを象徴するような
ニュースだったと思います。

 さて今回のコラムは、「ブランディングのステップ」というテーマでお届けいた
します。

<ブランドとは?振り返り>

 みなさんは、「東京ディズニーランド」に行ったことがありますか? その時、
どのような感想を持ちましたか?

 「従業員が笑顔で迎えてくれて、とても気持ちがいい」
 「パークがいつもキレイでゴミひとつ落ちていない」
 「ジャングルクルーズのお兄さんが雨の中でも元気で一生懸命だった」

 おそらく、誰もがどこかで感動し、「また来たい」と思われたことでしょう。
 「東京ディズニーランド」では、お客様のことを「ゲスト」、従業員のことを
「キャスト」と呼びます。この「キャスト」の数は、ディズニーランドとディズニ
ーシーを合わせた「東京ディズニーリゾート」で20,000人と言われています(2016
年11月に参加したディズニーアカデミーより)。
 この、20,000人ものキャストが同じクオリティのサービスを提供できるのはなぜ
でしょうか。それはキャスト全員が、ディズニーテーマパークでの創始者であるウ
ォルトディズニーの「親と子が一緒に楽しめる場所を作りたい」という想いを理解
しているからです。キャスト達はウォルトの想いを実現するために「ゲストにハピ
ネス(幸福)を感じてほしい」という共通の想いを持って仕事をしています。

 この共通の想いこそが、企業の存在意義です。企業の存在意義は、企業が目指す
方向性であり、「わが社は何のために存在しているのか」ということです。この
「企業(あるいは商品・サービス)の存在意義」こそがブランドの出発点です。先
に挙げたスパリゾートハワイアンズの存在価値の一つは「地域への貢献」なのかも
しれません。 

<ブランディングのステップ>

 「企業(あるいは商品・サービス)の存在意義」を構築するためのブランディン
グのステップは次の通りです。

STEP1:企業の強みとターゲット設定
 自社が有する経営資源を把握し、強みを抽出します。この強みを活かした商品・サ
ービスを、どの市場の、どのようなお客様向けに提供するかを決めます。

STEP2:差別化されたポジションの確立
 商品・サービスを提供する市場において、競合他社との違いを明らかにし、自社独
自性を顧客に理解していただく必要があります。STEP2では、「顧客に最も理解され
やすい場所」に自社製品を位置付けます。

STEP3:ブランド・アイデンティティの確立
 STEP3では、ポジションの確立によって見出された自社の独自性を、顧客にどう認
知されたいかを端的な言葉で表現することを学びます。

STEP4:刺激の設計
 ブランド・アイデンティティに基づいた、「ネーミング」「ロゴ」「キャラクター」
「キャッチコピー」等を設計します。この時、企業が意図した「ブランド・イメージ」
を築くために「一貫性」を持ち「意図的」「継続的」に設計されなければなりません。

 次回は、ブランディングの各ステップについて詳しくお伝えします。どうぞお楽し
みに!



             第4回 企業の強みとターゲット設定

 今回は、ブランディングのステップの中の「企業(あるいは商品・サービス)の
強みとターゲット設定」というテーマでお届けいたします。

<環境分析をしてみよう>

 みなさんは日常生活の中で、利き手を使ってお箸やペンを持ちますよね。利き手
でない手で食事をしたり文字を書いたりすることはとても困難です。
 事業も同様で、利き手を活かす方が効率的です。企業(あるいは商品・サービス)
の強みとは、この利き手のことで、自社(あるいは商品・サービス)の利き手が何
なのかを知るために環境分析をする必要があります。

 環境分析では、お客様のニーズや世の中のリスクを明らかにし、自社(あるいは
商品・サービス)にとってのチャンスと戦略の方向性を探ることです。
 チャンスは、環境の中に「ある」ものではなく、事実を基に「発見」「創造」す
るものです。チャンスを逃さず活かすために、自社(あるいは商品・サービス)が
不足している点も洗い出し、どのように補っていくかを考えます。

 環境分析の手法には様々なものがありますが、ここでは、代表選手の3C分析に
ついてお伝えします。

 3C分析とは、自社(Company)・お客様(Customer)・ライバル(Competitor)
の視点で分析することです。この“3つのC”について、それぞれ見て行きましょ
う。

(1)自社(あるいは商品・サービス)(Company)を知る
自社(あるいは商品・サービス)の持っている強みと不足している点について把握
します。具体的な例は次の通りです。

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 経営理念、社風、人材、社員(職員)の能力、売上高、市場シェア、収益性、
 品質、価格、販路、販売促進、技術力、組織、情報システム、など
 ------------------------------------------------------------------------

(2)お客様(Customer)を知る
自社の商品・サービスを購入する(あるいは購入する可能性のある)お客様を把握
します。具体的な例は次の通りです。

 ------------------------------------------------------------------------
 お客様のニーズ、お客様の不満、市場規模、成長性、市場トレンド、技術トレン
 ド、 社会トレンド、購買決定プロセス、購買決定者、など
 ------------------------------------------------------------------------

 3C分析では、お客様のニーズと自社(あるいは商品・サービス)の強みがマッ
チするポイントを探ります。お客様の「不平・不満・不便・不安」などを知ること
も重要です。

(3)ライバル(Competitor)を知る
 自社の商品やサービスの競争相手を把握します。具体的な例は次の通りです。

 ------------------------------------------------------------------------
 誰が競争相手か、競争相手の魅力は何か(売上高・市場シェア・顧客数、など)、
 競争相手に不足している点は何か、など
 ------------------------------------------------------------------------

 直接的な競争相手だけでなく、今後参入してくることが予想される相手や、代替
品となりうる商品やサービスを漏れなく把握することが必要です。例えば、ケーキ
店の直接的な競争相手は近隣のケーキ店ですが、間接的な競争相手はコンビニのス
イーツやネット販売のお取り寄せなどです。

<お客様は誰ですか?>

 お客様のニーズが多様化する中で、全ての消費者を対象とした商品・サービスを
万人に販売することは考えられませんね。
 そこで生まれたのが市場の細分化という考え方です。最初に、不特定多数の顧客
を、その市場の中で共通のニーズを持ち、企業(あるいは商品・サービス)の認識
の仕方、価値観、使用方法、購買行動などが似ている顧客の集団に分けます。

 市場の細分化の切り口は次の通りです。この「切り口の発見」こそが、事業を行
う上で最も困難かつ重要なポイントです。市場の細分化は、以下の要素を組み合わ
せて使うことが多いものです。

(1)人口統計的要素の例
 年齢、性別、職業、学歴、所得、貯蓄、資産、既婚、未婚、家族構成、など

(2)地理的要素の例
 所在地、地域、気候、環境(都市・郊外など)、地域による文化の違い、など

(3)心理的要素の例
 ライフスタイル、性格、価値観、趣味、嗜好、習い事、購買動機、など

(4)行動的要素の例
 商品・サービスに対する顧客の購買状況、使用頻度、求める価値、情報収集手段、
など

 市場細分化によって各集団の違いが把握できたら、自社(あるいは商品・サービ
ス)が狙う顧客を明確にします。ここでは、自社の商品・サービスを最も高く評価
してくれる顧客を選びます。これを見込み客の選定(ターゲティング)と言います。
3C分析の結果を確認しながら、属性を選定していきます。

 次回は、「差別化されたポジションの確立」と「ブランド・アイデンティティの
確立」についてお伝えします。どうぞお楽しみに!



  第5回 差別化されたポジションとブランド・アイデンティテイの確立

 今回は、ブランディングのステップの中の「差別化されたポジションとブランド
・アイデンティテイの確立」というテーマでお届けいたします。

<ポジショニングをしてみよう>

 ポジショニングとは、自社(あるいは商品・サービス)を「対象となるお客様に
最も理解されやすい場所」に位置づけることです。
 競争相手となる商品・サービス群の中から自社(あるいは商品・サービス)を選
んでいただくために、お客様にとってどのような魅力的な価値を提供しているかを
明確にし、認識してもらう必要があります。お客様に対して自社(あるいは商品・
サービス)を差別化するための考え方です。

 このポジション(位置づけ)を二次元のグラフにすることで、見える化できるよ
うしたものがポジショニングマップです。
 ポジショニングマップは、縦軸と横軸の2つの評価軸から構成されたグラフです。
縦軸と横軸にそれぞれ異なる評価軸を作り、評価したい商品・サービスの評価をグ
ラフ上にマッピングしていきます。ポジショニングマップを作成する上で最も重要
になるのが2つの軸をどのように決定するかです。
 ここでは、次の観点でポジショニングマップを考えます。 

【機能的価値】
 商品・サービスの基本的機能(商品・サービスそのものが提供する価値・便益)

【情緒的価値】 
 商品・サービスそのものの機能以外の価値(商品・サービスを使用することで得
 られる心理的価値)

 たとえば時計であれば、正確な時間を刻むのが「機能的価値」で、デザインなど
は「情緒的価値」にあたります。

 「機能的価値」は、合理的な購買の意思決定がしやすいものの、今日のように成
熟化した市場においては、企業(あるいは商品・サービス)を機能的価値だけで差
別化することは困難です。
 一方で、「情緒的価値」は、企業(あるいは商品・サービス)を所有・使用する
ことに対して、心の豊かさや満足を与えられます。消費者・顧客にとっての企業(
あるいは商品・サービス)の価値は、機能や品質だけでなく、デザイン等の情緒的
側面からももたらされます。

 お客様にとっての企業(あるいは商品・サービス)は、機能的価値を高めながら、
どのような情緒的価値をお客様に提供できるかが鍵となります。
 この他に、市場の細分化で抽出した人口統計的要素や地理的要素などのキーワー
ドでも考えてみることで、より多面的に差別化ポイントを確認することができます。

<ブランド・アイデンティテイを作ってみよう>

 ブランド・アイデンティテイとは、企業(あるいは商品・サービス)を、対象と
なるお客様にどのように認知されたいかを明確にし、そのことを言葉で表すことで
す。企業(あるいは商品・サービス)が、どのような差別化された強みを持ち、創
業以来大切にしている経営理念を強く意識しながら、世の中にどのような存在であ
りたいかを、はっきりと打ち出した言葉がブランド・アイデンティテイであり、企
業の存在意義です。
 キャッチコピーではありませんので、カッコよく作ろうとせず、誰にとっても分
かりやすい言葉にしてみることが大切です。

《企業の存在意義の例》

 サードプレイス/スターバックス
  第一の場所である家、第二の場所である職場や学校の次の、第三のくつろげる
  場所でありたい

 これでいい/無印良品
  強い嗜好性を誘う商品である「これがいい」ではなく、「これでいい」という
  自信に満ちた満足感をお客さまに持っていただく

 お客様の「こうしたい」を叶える家/ある介護施設
  お客様の立場になり、様々な制約や困難を乗り越えてでも、お客様の希望を叶
  えてあげられる家にしていく

 いかがでしたか? 今回はこれまでで最も険しいステップだったと思います。頂
上まであと一息です。

 次回は最終回、ブランド・アイデンティテイに基づいた「刺激の設計」について
お伝えします。どうぞお楽しみに!



             第6回「刺激の設計」

 10月にスタートした連載も最終回となりました。今回は、ブランディングのステ
ップの中の「刺激の設計」というテーマでお届けいたします。

<ブランドを想起するプロセス>

 ブランドを想起するプロセスは2つあります。
 1つ目は、お客様が企業(あるいは商品・サービス)と接点を持った時にブランド
を思い出す「ブランド再認」です。2つ目は、お客様にニーズが発生した時にブラン
ドを思い起こす「ブランド再生」です。
 例えば、喉が渇いた時にコンビニに行き、店頭でたまたま「お〜いお茶」を見つ
けて購入するのが「ブランド再認」で、喉が渇いた時に「お〜いお茶」を飲みたい
と思い、コンビニに買いに行くことが「ブランド再生」です。

 このように企業は、お客様のニーズと結びつき購買行動に繋がる「ブランド再生」
を目指す必要があります。
 しかし、ブランドはお客様の心の中に集積されるものですので、自社でコントロ
ールできません。片思いの人に「私のことを好きになって!」と神様にお祈りして
いるだけでは好きになってもらえないのと同じです。
 ところが、ブランド・アイデンティティに基づき意図的に刺激(お客様との接点)
を設計することで、お客様の「心」を変化させることができるのです。

<ブランド要素とブランド体験>

 お客様への刺激には、「ブランド要素」と「ブランド体験」に大別されます。
「ブランド要素」は、ブランドを表現する最小単位の刺激のことで、お客様の心の
中でブランドを思い出す引き金になるものです。代表的なのは、ネーミング・ロゴ
・キャラクター・キャッチコピー・パッケージ・色・ジングル(音楽)・匂い・ド
メインです。
 一方、「ブランド体験」は、「ブランド要素」を含み構成された、お客様との全
ての接点です。会社案内やカタログはもちろん、WEBサイトやSNS、店舗の内
装や接客、電話応対まで含みます。「ブランド体験」は、ブランドの世界観を表現
するシナリオであり、ブランド再認量を増やし、ブランド再生率を高める具体的な
取り組みです。「ブランド体験」の設計は、when(いつ)、where(どこで)、what
(何を)、how(どのように)を意識して行うことが重要です。
 
 例えば、スターバックスのブランド・アイデンティティは「サードプレイス」で
あるということを前回お伝えしました。これは、「第一の場所である家、第二の場
所である職場や学校の次の、第三のくつろげる場所でありたい」という想いが込め
られていると言われます。
 この存在意義を実現するために、スターバックスは美味しい珈琲だけでなく、珈
琲の知識をフレンドリーに説明してくれる接客や、フカフカのソファや落ち着いた
ファブリックで「くつろげる場所」を創り上げています。

 このように、お客様との接点である「ブランド体験」は、お客様の心の中で記憶
の集積を生み出し、それらの連想・連結によって、お客様の心の中にある「ブラン
ド・イメージ」を築くことができます。
 「ブランド要素」と「ブランド体験」は自社でコントロール可能なものであり、
「一貫性」「意図的」「継続性」の3点を守り運営管理することにより、お客様の心
の中にある「ブランド・イメージ」を創造することができます。
 「ブランド要素」と「ブランド体験」を適切に運営管理するためには、エクスタ
ーナルブランディング(社外へのブランディング)と同時に、インターナルブラン
ディング(社内へのブランディング)も大変重要です。
 いかにブランド・アイデンティティを社内に浸透させるかもブランディングの大
きな鍵となります。

 以上で、連載「中小企業のためのブランディングの基礎知識」を終わります。
 最後までお読みくださいまして、誠にありがとうございました。

               株式会社サクラ前線 代表取締役 櫻田 登紀子


        

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