コンピュータとブロードバンドの急速な普及により、ユビキタス社会*1 が現実のものになってきました。ユビキタス社会を実現する一つのキーとなるICタグの果す役割を見ていきます。
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ユビキタス社会*1
ユビキタスとは、「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながる社会を意味し、家庭や会社からPCを使ったネットワーク接続だけでなく、さまざまな機器が相互に接続し、特に意識せずに、誰でも安心して、簡単にさまざまな通信サービスが利用できる社会環境を指します。総務省では2005年をユビキタス発展期、2010年をユビキタス成熟期として基本コンセプトを定めています。
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ICタグを装着した「モノ」から見たユビキタス社会 |
あらゆるアイテムへのICタグの装着が進み、ICタグの情報をネットワークに乗せることにより、すべてのモノの流れを管理することが可能となります。ICタグが情報の流れとモノの流れをひもづける役割を果たすことにより、製造、流通、販売、消費、廃棄・再利用といったライフサイクル全体を通した有効利用が可能になるのです。
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図1 あらゆるモノにICタグが組み込まれるユビキタス社会
- 製造
生産管理、在庫管理、工程管理、自動検品 など
- 流通
自動仕分け、荷物管理、検品自動化、鮮度管理 など
- 販売
- 販売管理、在庫管理、棚卸管理、自動清算 など
- 消費
- 製品情報入手、賞味期限管理、在庫管理 など
- 廃棄・再利用
- 素材別仕分け、履歴情報入手、リユース管理 など
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この流れをパソコンの製造から廃棄・再利用まで具体例で説明します。
- 製造
- パソコンの組立工程では、部品パーツ(メインボード、ハードディスク、CD-R、電源、ディスプレイ など)を組み込むごとにパソコン本体に取り付けられたICタグに情報が書き込まれます。最終工程では検査結果履歴情報が書き込まれ梱包され倉庫に保管されます。
- 流通
- 倉庫では、パソコンの自動仕分け、在庫管理など。配送では出荷管理、移動管理などに使われます。
- 販売
- 出荷されたパソコンは、販売店で自動検品後に店頭にならびます。販売店では在庫管理、販売管理、自動清算などに使われます。
- 消費
- 家に届いたパソコンはユーザ登録後利用され、パソコン修理履歴、サポート情報の入手などに使われます。
- 廃棄・再利用
- パソコンが廃棄されたときは、製造工程でパソコンのICタグに書き込まれたリサイクル情報をもとに、廃棄工程で製品や部品のリサイクルの可能性を自動判別し、分別することができます。もちろんICタグ自身も再利用されます。
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利用者から見たユビキタス社会 |
利用者にとっては、ICタグが普及することにより、セキュリティの強化や貴重品の紛失・盗難の防止、食料品の安全性向上、環境への配慮など多くの効果がもたらされます。
- セキュリティ・安全・・・安全管理や盗難防止にICタグが使用されています。
- 玄関の鍵、自動車の鍵(イモビライザー*2)、児童の位置確認 など
- トレーサビリティ*3・・・商品・製品情報を消費者の側に提供します。
- 食料品、家電、ペット、自動車、衣類 など
- 物品管理・・・居室の中などで、商品の保管場所や食品の賞味期限を消費者に示せるようになります。
- 冷蔵庫の中の食品、財布、通帳・印鑑、鍵、ブランド品 など
- リサイクル・・・ICタグの情報を元に行えば、分別が容易になります。
- 家電リサイクル情報、中古車情報、ごみ分別 など
イモビライザー*2
鍵に埋め込まれたICチップ(トランスポンダ)のIDコードがキーシリンダーに巻かれているアンテナコイルに送信され読み取られます。車両側のコントローラのIDコードと電子的に照合し、IDコードが一致すると点火しエンジンが始動する仕組みです。盗難防止のために欧州車で実用化されています。
トレーサビリティ*3
トレーサビリティとは「跡をたどること」、「原因などを追跡する」という意味があります。トレーサビリティを実現することで、万が一食品、車、家電で事故などが発生した場合にも食品や製品の回収や原因究明など速やかな対応が可能になるものと期待されています。
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ICタグは生産者だけにメリットがあるのではなく、消費者にとっても、生活を豊かにより便利にする多くの可能性を持っています。今後もICタグの新たな活用方法や実用化のためのビジネスモデルの確立が求められています。 |
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