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千葉県産業情報ヘッドライン【連載特集】「中小企業のインボイス制度への対応」バックナンバー

  • [2023年6月29日]
  • ID:3430

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中小企業のインボイス制度への対応

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 第1回「消費税のしくみ」

税理士の大西と申します。

今回より全6回にわけて、令和5年10月1日から始まるインボイス制度について

解説をしていきます。

第2回 インボイス制度の概要とインボイス登録の方法

第3回 「売り手側」としてのインボイス制度への対応

第4回 「買い手側」としてのインボイス制度への対応

第5回 インボイス制度の支援措置

第6回 インボイス登録をするか、しないかの検討

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(1)消費税額の計算方法

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インボイス制度を解説する前に、まずは消費税の計算のしくみを知っておく

必要があります。

消費税は、商品やサービスの購入時に支払われる間接税です。

税率は現在10%で、一部の食料品や新聞、医薬品などの一部の商品やサービ

スは税率が8%です。

事業者が商品やサービスを提供する際に消費税を課し、顧客が商品やサービ

スを購入する際に支払います。

事業者は、顧客から受け取った消費税額から自分たちが仕入れや経費と一緒

に払った消費税額を控除して、その差額を税務署に納税します。

 計算式 : 納税額 = 受取った消費税額 - 支払った消費税額

例えば、ある事業者が商品を10,000円で販売した場合、消費税額は1,000円と

なります(税込11,000円)。

その商品の仕入れが5,000円で消費税額が500円(税込5,500円)であったとす

ると、納税額は以下のように計算されます。

 納税額 = 1,000円 - 500円 = 500円

つまり、この場合、事業者は500円の消費税を税務署に納税することになりま

す。

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(2)仕入税額控除について

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ここで、上記の例でいうと、支払った消費税の500円を控除できなければ、税

務署への納税額が1,000円になってしまうことがわかると思います。

ですから、支払った消費税をきちんと控除できることが事業者にとって大切

です。これを「仕入税額控除」と言います。

消費税には軽減税率や非課税品目が存在するため、企業はこれらを正しく判

断し、適切に仕入税額控除を行う必要があります。

次回以降に解説しますが、インボイス制度はこの仕入税額控除に関わるので、

とても重要です。

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(3)消費税の免税事業者

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消費税では、「基準期間」における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、

納税義務が免除されます。

基準期間とはその事業年度の2年前を言います。

個人事業主であれば、令和3年の課税売上高が1,000万円以下のときは令和5年

は消費税の免税事業者となり、消費税の申告と納税をする必要はありません。

法人の場合、基準期間は前々事業年度です。

例えば、令和5年3月期の場合、基準期間は令和3年3月期です。

また、新たに事業を開始した個人事業主の1年目と2年目と、新たに設立され

た法人の設立1期目および2期目の基準期間はありませんので、原則として納

税義務が免除されます。

次回以降に詳しく解説しますが、免税事業者がインボイス登録すると消費税

の課税事業者になりますので今まで消費税の納税をしていなかった事業者で

も、消費税の納税をする必要が出てきます。

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(4)簡易課税制度

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簡易課税制度とは、消費税の納税額を売上に係る消費税額(以下「受取った

消費税額」)から簡単に算出することを認める制度です。

中小企業の事務負担を軽減することが目的で、対象となる課税事業者なら任

意で選択することができます。

簡易課税制度を選択できるのは、「基準期間(前々年事業年度)の課税売上

高が5,000万円以下」であることが条件です。

通常、課税事業者になると「一般課税方式」(以下「原則課税」)が適用さ

れます。

原則課税では、上記でご説明したとおり、受け取った消費税額から自分たち

が仕入れや経費と一緒に払った消費税額を控除して、その差額を税務署に納

税します。

一方、簡易課税制度では、受取った消費税額の合計金額に、みなし仕入率を

掛けて仕入税額を計算し、納税額を算出します。原則課税と簡易課税では、

インボイス制度についても違いが生じます(詳しくは次回以降で触れること

になります)。

簡易課税制度ついて、詳しくは、国税庁のWEBサイトにてご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

次回からは、インボイス制度の具体的な内容について解説していきます。


 第2回「インボイス制度の概要とインボイス登録の方法」

税理士の大西です。

前回は、消費税の基本的な仕組みについてご説明しました。

今回は、いよいよインボイス制度の概要について解説して参ります。

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(1)インボイス制度の概要

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インボイス制度は、令和5年10月1日から始まります。「インボイス制度」の

「インボイス」という名称は通称で、正式には「適格請求書」と言いますが、

ここでも「インボイス」と呼ぶことにします。インボイスとは、「売手が、

買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、登録

番号のほか、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する

ものをいいます。具体的には以下の1~6を記載したものです。

 1.適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

 2.取引年月日

 3.取引内容(軽減税率の対象品目である旨)

 4.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率

 5.税率ごとに区分した消費税額等

 6.書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

詳しくは、国税庁が公表している「適格請求書の記載事項」をご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-09.pdf

ざっくり言いますと、今までの一般的な請求書と違うのは、「登録番号」を

記載する点です。

ですので、インボイスを交付することができるのは、税務署長の登録を受けた

「適格請求書発行事業者」に限られることになります。また、大前提として

インボイス登録をするのは各事業者の任意です。

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(2)インボイス制度が始まったら

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令和5年10月以降は次のように対応します。(詳しくは第3回以降で解説します。)

<売手側>

 売手である登録事業者は、買手である取引相手から求められたときは、イン

ボイスを交付しなければなりません。また、交付したインボイスの写しを保存

しておく必要があります。

<買手側>

 買手は仕入税額控除の適用を受けるために、原則として、取引相手(売手)

である登録事業者から交付を受けたインボイス(※)の保存等が必要となります。

(※)買手は、自らが作成した仕入明細書等のうち、一定の事項(インボイスに

記載が必要な事項)が記載され取引相手の確認を受けたものを保存することで、

仕入税額控除の適用を受けることもできます。

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(3)インボイス登録の方法

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インボイス制度の開始に伴い、事業者がインボイスを交付するためには、納税地

を所轄する税務署長に対して登録申請書を提出し、適格請求書発行事業者になる

必要があります。

税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合、

「登録通知書」(登録番号や公表情報等が記載されています。)が届きます。

以前までは、インボイス制度開始日の令和5年10月1日に登録を受けようとする

事業者は令和5年3月31日までに申請する必要がありましたが、支援措置により

令和5年3月31日以降であっても、令和5年9月30日までに申請すればインボイス

制度が開始する令和5年10月1日を登録開始日として登録されることとなりました。

申請手続きについて、詳しくは、国税庁のWEBサイトにてご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_shinei.htm

次回は、「売り手側」としてのインボイス制度への対応について解説していきます。


 第3回「「売り手側」としてのインボイス制度への対応」

税理士の大西です。

前回は、インボイス制度の概要とインボイス登録の方法についてご説明しました。

今回は、「売り手側」(インボイスを発行する側)がインボイス制度開始後

(令和5年10月1日以降)はどのように対応すべきかについて解説して参ります。

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(1)インボイスを渡す相手が事業者(法人や個人事業主)の場合 

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インボイスの登録を行って適格請求書発行事業者となった場合、売上が発生したら

相手方からの求めに応じてインボイスを交付する義務が課されます。また、

インボイスを紙で交付することに代えて、電磁的記録を提供することもできます。

これはインボイスのPDF等をメールで送る、といったことを含みます。交付した

インボイスの写しや、電磁的記録で提供したインボイスの電磁的記録には保存義務

があります。具体的には、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日

から2月を経過した日から7年間保存しなければなりません。

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(2)インボイスを渡す相手が一般消費者の場合

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飲食店や小売店のように、不特定多数の一般消費者に販売を行う事業者がインボイス

の登録を行って適格請求書発行事業者となった場合は、簡易適格請求書(以下、簡易

インボイスと呼びます)の発行が認められています。簡易インボイスの記載事項

については、以下の通りとなります。

 1.適格請求書発行事業者名および登録番号

 2.取引年月日

 3.取引内容(軽減税率の対象品目は※など印をつけて判別できるようにする)

 4.税率ごと(8%・10%)に分けた合計額(税抜きまたは税込み)と適用税率

 5.税率ごと(8%・10%)に分けた消費税の合計額または適用税率

通常のインボイスより記載事項が簡易になっています。具体的には、「書類の交付を

受ける事業者の氏名又は名称」の記載を省略できることです。つまり、店舗で発行する

レシートや手書きの領収書であっても上述の記載事項に合わせることで、簡易適格

請求書として扱うことができることになります。

この簡易インボイスの発行ができるのは以下の業種です。

 1.小売業

 2.飲食店業

 3.写真業

 4.旅行業

 5.タクシー業

 6.駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)

 7.その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

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(3)インボイスの交付が免除される取引

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次の取引は、事業の性質上インボイスを交付することが困難なため、インボイスの交付

義務が免除されます。

 1.3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送

 2.出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売

 3.生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売

 4.3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等

 5.郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス

また、海外への輸出(免税取引)、もともと消費税がかからない非課税取引及び不課税取引

のみを行った場合についても、インボイスの交付義務は課されません。

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(4)インボイス制度の開始に向けた準備

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それでは最後に、売り手としてどのような準備をしておけば良いのでしょうか?

【1.取引ごとにどのような書類を交付しているか確認しましょう】

 現在の取引がインボイスの交付が求められる取引かどうか確認しましょう。インボイスは、

 請求書、領収書など名称は問いません。都度「納品書」の交付か、月締め「請求書」の

 交付か、レシート・手書き領収書の交付があるかなど確認しましょう。

【2.交付している書類等につきどう見直せばインボイスとなるか検討しましょう】

 インボイスは、登録番号、適用税率、消費税額等の記載が必要となります。何をインボイスに

 するか、どう交付するか、システム改修等も含めて考えましょう。

【3.売上先に登録を受けた旨やインボイスの交付方法等を共有しましょう】

 登録を受けた旨や何をインボイスとするか、交付方法等について、貴社と売上先で認識を共有

 することが円滑な準備にとって重要です。

【4.インボイスの写しの保存方法や売上税額の計算方法を検討しましょう】

 写しの保存は、コピーに限られません。電子データや一覧表形式、ジャーナル、複写式の控え

 なども認められます。

【5.必要に応じて価格の見直しも検討しましょう】

 今まで免税事業者だった方は、商品やサービスの価格について消費税を加味して見直しましょう。

次回は、「買い手側」としてのインボイス制度への対応について解説していきます。


 第4回「「買い手側」としてのインボイス制度への対応」

税理士の大西です。

前回は、「売り手側」(インボイスを発行する側)がインボイス制度開始後

(令和5年10月1日以降)はどのように対応すべきかについてご説明しました。

今回は、「買い手側」(インボイスを受け取る側)がインボイス制度開始後は

どのように対応すべきかについて解説して参ります。

その前に第1回で解説した消費税の「仕入税額控除」について簡単におさらいです。

消費税の納税額は、事業者が顧客から受け取った消費税額から自分たちが仕入れや

経費と一緒に払った消費税額を控除して、その差額を税務署に納税するのでした。

ですから、事業者が仕入れや経費と一緒に支払った消費税をきちんと控除できる

ことが大切です、これを「仕入税額控除」と言います。

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(1)仕入税額控除の適用要件

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インボイス制度が開始されたあと、仕入税額控除を適用するためには、「一定の

事項を記載した帳簿及び適格請求書(インボイス)の保存」が要件となります。

第2回でも解説した、インボイスの登録番号が記載されたものが「適格請求書

(インボイス)」です。この一定の事項を記載した帳簿及びインボイスを7年間

保存することが仕入税額控除の要件となります。ですから、仕入先や外注先、経費の

支払先からインボイスを受け取れなければ仕入税額控除ができない、ということに

なりますので注意が必要です。一部、インボイスを受け取らなかったとしても帳簿

のみの保存で仕入税額控除が認められる取引もあります。

「帳簿に記載すべき事項」や「帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引」

について詳しくは、国税庁が公表しているこちらの資料をご確認ください。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-14.pdf

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(2)インボイスを受け取らなかった場合

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仕入先や外注先などが小規模な会社や個人事業主で、免税事業者だったとします。

そのような仕入先や外注先などが令和5年10月以降インボイス発行事業者に

なっていなかった場合はどうなるのでしょうか。その場合はインボイスを受け取る

ことができず、仕入れをした側(買い手)は原則として仕入税額控除の適用を受ける

ことはできません。つまり、今までは免税事業者である仕入先や外注先などへの

支払いも問題なく仕入税額控除ができましたが、令和5年10月以降は、支払先が

インボイス発行事業者でなければ仕入税額控除ができない(=消費税の納税額が

増える)という結果になってしまいます。そのような急な制度変更による事業者への

影響を考慮し、制度開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても、

仕入税額相当額の一定割合を仕入税額として控除できる経過措置が設けられています。

具体的には、令和5年10月1日から3年間は免税事業者等からの仕入れ等については

その金額の80%の仕入税額控除が認められ、令和8年10月1日から3年間は同様

50%の仕入税額控除が認められます。このような経過措置があるので、あわてずに、

まずは仕入先や外注先がインボイス発行事業者になるかどうかを確認しましょう。

そしてインボイス発行事業者にならないという仕入先や外注先などがあったときは

取引条件を見直すなどの対応が必要になります。ただし、取引条件の見直しにあたっては、

「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。

詳しくは、公正取引委員会が公表している「免税事業者及びその取引先のインボイス

制度への対応に関するQ&A」をご確認ください。

https://www.jftc.go.jp/dk/guideline/unyoukijun/invoice_qanda.html

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(3)簡易課税制度を選択している場合

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第1回で解説しましたが、簡易課税制度を選択している場合は、受取った消費税額の

合計金額に、みなし仕入率を掛けて仕入税額を計算し、納税額を算出します。

そのため、仕入先や外注先から受け取った納品書や請求書等がインボイスであっても

なくても消費税の納税額計算には影響ありません。そしてインボイス制度下で要件となる

「インボイスの保存」も簡易課税事業者には仕入税額控除の要件とはなりません。

つまり、これまで通りの計算方式で納税でき、国税関係帳簿や書類の保存方法も変える

必要はない、ということになります。現状、自社が簡易課税制度を選択しているのか、

それとも原則課税なのかを確認し、インボイス制度が開始になることをきっかけに簡易

課税制度を選択することも検討すると良いでしょう。

次回は、インボイス制度の支援措置について解説していきます。


 第5回「インボイス制度の支援措置」

税理士の大西です。

前回は、「買い手側」(インボイスを受け取る側)がインボイス制度開始後

(令和5年10月1日以降)はどのように対応すべきかについてご説明しました。

今回は、インボイス制度の支援措置ついて解説して参ります。

インボイス制度は、事業者にとっては事務負担が増加します。そのため令和5年

1月にインボイス制度の負担軽減措置が導入されることになりました。

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(1)インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する税額控除に関する経過

   措置(2割特例)

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1.対象期間:令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間

2.対象者:対象期間において免税事業者がインボイス発行事業者となり、消費税の

 課税事業者になった事業者

3.取り扱い:売上等にかかる消費税額(受け取った消費税額)から控除する金額を、

 売上額等にかかる消費税額の80%とすることで、納税額を売上額等にかかる

 消費税額の20%とすることができます

注意点は、この措置は消費税の「免税事業者がインボイス登録をした場合にのみ」

適用されます。また、「基準期間(※1)」における課税売上高が1,000万円以下の

小規模事業者に限って適用されます。

ですので、令和5年10月1日前から消費税の課税事業者である場合は、適用されません。

この措置によって、免税事業者がインボイス登録をした場合でもインボイスの保存

を必要とせず、売上等に係る消費税額からその20%相当額を納付すべき消費税額

として計算することができます。

(※1)個人事業者の場合前々年、法人の場合前々事業年度

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(2)一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減(少額特例)

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1.対象期間:令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間

2.対象者:基準期間の課税売上高が1億円以下又は特定期間(※2)の課税売上高が

 5,000万円以下である事業者

(※2)個人事業者の場合前年1月1日から6月30日までの期間、法人の場合前事業

 年度開始の日以後6カ月の期間

3.取り扱い:仕入れや外注費、その他の経費等の支払金額が1万円未満である場合

 には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除が認められます。

つまり、1万円未満の請求書や領収書がインボイスでなかったとしても、上記に

該当する事業者が一定の事項が記載された帳簿を保存にしておけば仕入税額控除

ができる、ということです。この場合の「1万円未満」の判定は、「消費税込みで

1万円未満」が対象です。

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(3)登録制度の見直しと手続の柔軟化

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令和5年10月1日のインボイス制度の開始にあわせて登録を受けるための期限は、

令和5年3月31日とされていました。ただし、今回の支援措置により、4月以降の

登録申請であっても、9月30日までに行われたものについては、インボイス制度が

開始する令和5年10月1日に登録を受けることが可能となりました。

また、令和5年9月末までに登録申請を行ったが、インボイス制度が開始する10月1日

までに登録の通知が来なかった場合でも、令和5年10月1日に遡って登録を受けた

ものとみなされます。その際には、

・事前にインボイスの交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後にインボイスを交付する、

・取引先に対して通知を受けるまでは暫定的な請求書を交付し、通知後に改めて

 インボイスを交付しなおす、

などの対応が考えられます。

※登録通知までに要する期間の目安は、国税庁HP「インボイス制度特設サイト」に

 掲載されています。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm

最終回である次回は、「インボイス登録をするか、しないかの検討」について解説

していきます。


 第6回「インボイス登録をするか、しないかの検討」

税理士の大西です。

前回は、インボイス制度の支援措置についてご説明しました。今回は、インボイス

登録をするか、しないかをどのように検討するのかについて解説して参ります。

なお、具体的な登録方法は第2回をご確認ください。

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(1)消費税の課税事業者の場合

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現在、消費税の納税をしている事業者(以下、「課税事業者」と呼びます)で

あっても、インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です。

ですからインボイスの登録を行うかどうかを検討する必要があります。仮にイン

ボイスの登録をしなかった場合は、請求書や領収書を渡す売上先が仕入税額控除を

できず、結果として不利益を与えることになります。一方、こちらとしては課税

事業者ですのでインボイス登録をするかしないかに関係なく今までどおりに

消費税の納税を行うことに変わりはありません。

そのように考えると、課税事業者はインボイス登録をするべきでしょう。

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(2)消費税の免税事業者の場合

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次に、現在免税事業者の方がインボイス登録をするべきか検討しましょう。

第1回でご説明しましたが、「基準期間」における課税売上高が1,000万円以下の

事業者は、納税義務が免除されます。免税事業者がインボイス登録すると消費税の

課税事業者になりますので今まで消費税の納税をしていなかった事業者でも、

消費税の納税をすることが必要になるという点がデメリットです。しかし、仮に

インボイスの登録をしなかった場合は、請求書や領収書を渡す売上先が仕入税額

控除をできず、結果として不利益を与えることになります。それが原因で、売上先

である取引先が離れてしまえば、売上が減少してしまいます。

そこで、売上先がインボイスを必要とするか、以下の点を確認して検討しましょう。

(1)売上先が一般消費者や免税事業者である場合は、インボイスを必要としません。

  例えば飲食店や美容室を営む事業者は、一般消費者が主要な売上先ですので

  インボイス登録をしないということも考えられます。

(2)売上先が簡易課税制度を選択している課税事業者の場合も、売上先はイン

  ボイスを必要としません。

(3)それ以外の課税事業者である売上先は、仕入税額控除のためにこちらが交付する

  インボイスの保存が必要ですが、制度開始から6年間は、免税事業者からイン

  ボイスの交付を受けられずとも、仕入税額の一定割合(80%・50%)を控除でき

  ます(詳しくは第4回を御覧ください)。そう考えると、インボイス登録はしない

  代わりに、売上先で消費税の負担が増える分は取引価格の見直しで対応すること

  が可能かもしれません。

(4)売上先の数が少ない場合は、売上先に直接相談することも考えられます。

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(3)インボイス登録後の事務・納税手続きに対応できるか

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次にインボイス登録をした場合、自社の事務手続きや納税負担がどのように変わるのか、

それに自社が対応できるのか検討しましょう。

(1)インボイス登録をした場合、売上先がインボイスを求めたときは、記載事項を

  満たしたインボイスを交付する必要があります。

(2)現在免税事業者の方であっても、インボイス登録をすると、課税事業者として

  申告が必要となります。その場合でも簡易課税制度を適用することで、仕入税額の

  計算や仕入税額控除のための請求書等の管理等に関する事務負担の軽減を図ること

  ができます。

(3)第5回でご説明しましたが、免税事業者がインボイス登録をした場合の支援措置が

  受けられます。具体的には売上等にかかる消費税額(受け取った消費税額)から

  控除する金額を、売上額等にかかる消費税額の80%とすることで、納税額を売上額等

  にかかる消費税額の20%とすることができます。

ここまでの内容で、免税事業者の方がインボイス発行事業者の登録をするかどうか、検討

する必要性を感じたかと思います。

一般的なご相談であれば国税庁の「インボイス制度電話相談センター」に問い合わせして

みると良いでしょう。

インボイス制度電話相談センター

【電話番号】下記URLよりご確認ください。

【受付時間】9:00から17:00(土日祝除く)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/04-1.htm

また、個別の事情に合わせてインボイスの登録をするかどうか相談したいときは、お近くの

税理士にご相談ください。

以上6回にわたって、「インボイス制度」について解説してきました。長期間にわたって

お付き合いいただきありがとうございました。少しでも皆様のご理解にお役に立てればと

思います。

渋谷中央会計事務所 代表税理士 大西 周

https://shibuya-zeirishi.com/

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