■ブランディングは、儲からない?
「ブランディングをすると儲かるんですか?」
そう聞かれたとき、私はこう答えます。
「はい、儲かります。ただし、“正しく”取り組めば。」
しかも、儲かるだけではありません。ブランディングは、こんな悩みにも効果を発揮します。
-安売りが続いている
-広告を出しても反応がない
-お客様が定着しない
-採用がうまくいかない
一見バラバラに見えるこれらの課題も、実は「根っこ」が同じかもしれません。
そして、これらの課題を解決に導くのが、ブランディングの力です。
ブランディングとは、「価値で選ばれ、自然に売れる仕組み」を整えること。
だからこそ、しっかり利益が残るのです。
この連載では、売れない時代をしなやかに、そして強く生き抜くための実践的なブランディングについて、全6回でお届けします。
「できそう」「やってみよう」と思っていただけたら幸いです。
■私も“誤解”していたブランディング
私は現在、中小企業診断士として活動していますが、以前は約20年間、ホテルを経営していました。
当時の私は、「ブランディング=ロゴや広告、企業イメージをよく見せること」だと誤解していました。
いま振り返れば、もっと早くブランディングに取り組んでいれば、経営はずっと楽になっていたと思います。
■誤解1:小さな会社にブランディングは不要?
皆さんは、「うちは小さな会社だから関係ない」「BtoBだから必要ない」「一人でやっているから意味がない」
そう思っていませんか?それは大きな誤解です。
ブランディングは、業種や規模にかかわらず、すべての事業に欠かせない戦略です。
■誤解2:大企業と同じやり方でいい?
実は、大企業と中小企業では、ブランディングの進め方がまったく異なります。
ところが多くのブランディング関連書籍やセミナーでは、
「名前を思い出してもらえるか(=想起)」を中心に語られ、事例は大企業ばかり。
多額の広告費や専門スタッフが前提となっているケースも少なくありません。
そのため、多くの中小企業は「うちには無理だ」と感じてしまうのです。
中小企業のブランディングに必要なのは、「大きな資金」ではなく、「伝える意志」と「価値の設計」です。
■誤解3:ブランディング=差別化?
たしかに、“違い”は大切です。
でも、今は良いモノがあふれる時代。品質や価格だけの差別化には限界があります。
奇抜さや話題性で一時的に注目されても、持続的な成果にはつながりません。
ブランディングに必要なのは、単なる差別化ではなく、「価値の設計」です。
■「価値の設計」が明暗を分けた和菓子店の事例
では、「価値の設計」について、ある老舗の高級和菓子店を例に考えてみましょう。
この店は、味には自信があり、長年の常連に支えられてきました。
しかし、「語らずとも、伝わるはず」と考え、情報発信にはあまり力を入れてきませんでした。
やがて常連のお客様の高齢化とともに売上が減少。
若い世代からは「特徴がわからない」と言われ、新規顧客の獲得が難しくなりました。
一方、近くに開店した新しい和菓子店は、お客様との日々の会話から要望を拾い、それを商品や店づくりに反映。
さらに、商品に対する想いやこだわりを丁寧に発信し続けたことで共感を呼び、徐々に「選ばれる店」となっていきました。
では、何が違ったのでしょうか?
味?価格?パッケージ?
そのすべてだったかも知れませんし、そのどれでもないかも知れません。
決定的な違いは、「なぜそのお菓子を買うべきか」という理由が、お客様に伝わっていたかどうかです。
つまり、「価値の設計」が売上に明暗をもたらしたのです。
「価値の設計」とは、「誰に、どんな価値を、なぜ私(当社)が届けるのか」を明確にし、それを「伝える意志」を持って、あらゆる接点で一貫して発信できるように整えることです。
商品やサービスはもちろん、接客、SNS、Webサイト、ロゴ、パッケージに至るまで、伝える価値を意図的に揃えていく営みがブランディングです。
その結果、価格ではなく「共感」や「納得」で選ばれるようになり、値引きに頼らず売れるようになる――それが、ブランディングの効果です。
■ブランディングを育てる小さな問い
お客様にとって、「あなた(御社)から買う意義」とは何でしょうか?
ぜひ、考えてみてください。
その問いに向き合うことが、ブランディングの第一歩です。
■次回予告
次回は、「売上=単価×数量」というシンプルな式を使って、マーケティングとブランディングの役割の違いをひも解きます。
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