「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】
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農商工連携で新たな事業展開を〜地産商品で千葉ブランドづくり〜
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第1回 農商工連携が求められる背景
農商工連携促進法が施行されたのは2008年7月。
以降5年余の間に全国各地で様々な取り組み事例が増えています。
この法案は農水省と経産省が協同で進めたものですが、この2つの省が協力
するのはとても珍しいことです。
つまり、農商工連携は大変重要な政策だと考えられます。
地域の活性化や雇用の創出、という意義もあり、今後も推進する動きは続く
でしょう。
千葉県は東京都に隣接し、農産物、水産物、畜産物に恵まれ、花や果物も豊富。
加えて幅広い分野の企業も多く存在しており、農商工連携には最適な環境です。
既に海産物加工のように様々な連携は行われていますが、既存ビジネスの多く
は、1次産業は原材料の仕入れ先、というものです。
昨年は食材の名称偽装が問題になり、消費者の目は益々厳しくなっています。
産地が明確な素材が豊富にあることは千葉県の強みです。
その価値を共有し、1次産業者と商工業者がお互いの資源を持ち寄り、対等に
連携すれば、千葉県ならではの新しい価値のある商品やサービスが生まれるの
ではないでしょうか。
農商工連携の他に「農山漁村の6次産業化」という言葉も最近のニュースで
よく目にすると思います。農水省HPには、「農商工連携は6次産業化の一つ」と
あるので、目的や意義はほぼ同じと言えるでしょう。
農商工連携は、1次産業者と商工業者が連携し、新しい商品やサービスを開発、
販路の拡大等を行うものです。対して6次産業化は1次産業者が主体となり、加工
品製造や店舗運営等を行うものです。
この連載では、枠にとらわれず両方を紹介します。
農商工連携・6次化の成功例として山形県の「平田牧場」を見てみましょう。
2頭の養豚からスタートし、販売価格の安定のために直接販売する販路を開拓、
ソーセージなどの加工製造販売、三元豚の開発を進め、現在は銀座や丸の内など
都内の一等地に飲食店も展開しています。6次化のモデルともいえる事例です。
加工品製造販売を始めたのは昭和46年ですので、農商工連携という言葉もない
時代の先進的な事例と言えるでしょう。
成功の要因として私が注目しているのは、早い時期から直接販売を行い、顧客
との信頼関係を築き、顧客の声を直接聞いてきたこと。
そして、県内のJAや生産者と飼料米を開発、地域の資源を有効に活用し、地域
活性化に繋げたことです。
顧客の支持を得て、地域に還元する。よい循環を生む事も農商工連携の重要な
役割です。
では、他の1次産業者も同様の展開ができるかといえば、商品開発はしたけれど
販路がない、本業が忙しく手が回らない、等で行き詰まる方が多いのが現実です。
そもそも、1次産業の仕事と、加工品製造・顧客への販売、は全く別のスキル
ですので、うまくいかないのは当然です。
そこで、商工業者のノウハウをマッチングし、事業の成長を支援する取り組み
が必要なのです。
次回も事例を紹介しながら、農商工連携を進める際のポイントをご紹介します。
第2回 農商工連携事業の多様な展開
第1回では、今後ますます農商工連携が進められていくであろう背景と、代表
的事例(生産者が生産者に直売、加工品を製造、直営店を経営)を紹介しましたが、
読者ご自身のビジネスとどう関わるのか、と感じた方もおられたのではないで
しょうか。
今回は、商品開発に留まらない最近の事例をご紹介し、多様な業種の方々に
農商工連携参画の可能性を感じていただきたいと思います。
(1)食品以外の加工品開発
金沢の老舗酒蔵・福光屋は、1960年代から酒米の契約栽培を始め、デザイン
性の高いラベルで商品コンセプトを訴求、ブランディングを先鋭的に進めてきた
蔵元です。
酒以外の商品開発にも積極的で、発酵技術を活かして開発された化粧品は、契
約栽培米を原料としたコメ発酵液が主成分であるという安心感も手伝って自然派
志向の女性の評価を集めています。
このように食品以外の加工品開発や、加工を前提に農産物の品種改良を行う
事例も増えており、大学や研究機関との連携が必要です。
さらに、食品販売とは異なる販促や広報を行うため、マーケティングの専門
家の参画も欠かせません。
(2)地域/農村体験型の観光企画
新潟県十日町市・津南町では、2000年から「大地の芸術祭」というアートイ
ベントが開催されています。
2012年は世界44カ国のアーティストが参加、作品は里山に点在して展示され、
訪れる人は地域の自然や歴史を体感しながら作品を巡ります。
宿は予約がとれない程になり、地元の料理を味わえる店も出て、地元の駄菓子
は、しゃれたパッケージでお土産品として並びます。
雪深い冬には、雪遊びを体験するツアーが企画され廃校を改装した宿泊施設は
親子連れで満室になります。
農産物だけではなく、1次産業がある農漁村そのものや里山が資源と考えると、
多様な業種の参画が可能です。イベント運営、交通の便の確保、ホームページで
の情報発信等、各業界のプロが必要なことに加え、全体を取りまとめる役割も必
要です。宿泊、飲食、お土産品など幅広い業種の連携が理想的です。
(3)海外への農産物、食品の輸出
少子高齢化が進む中、農産物の国内需要は頭打ちになるとされ、海外への輸出
も注目されています。
和食が無形文化遺産に登録され、海外での和食ブームは高まると考えられます。
日本の食材のニーズも増えるでしょう。フランスでは、味噌や醤油を使うシェフ
も多く、「うま味」という言葉も使われる程、和食への注目が集まっています。
一方、日本の食材輸出はこれからの段階のため、輸出業務の実績をもつ企業が
農産物を手がけることも期待されるところです。
千葉県は食材も豊富、発酵食品の歴史もあり、何より成田に近いというメリット
もあり、この強みをいかさない手はないのでは、と考えます。
今回は、幅広い事例をご紹介しました。皆さんのビジネスとの連携する可能性
を少しでも感じていただけたでしょうか?
それぞれ異なる事例ですが、ターゲットを明確にし、地域のブランドを訴求す
ることが信頼に繋がることは共通点といえるでしょう。
次回は、農商工連携を進める際に役立つ情報を交えた内容をお届けします。
第3回 農商工連携でつくる魅力的な千葉ブランドの構築に向けて
2回にわたり、各地の事例をご紹介しながら農商工連携の可能性について
お伝えしてきました。
最終回となる今回は、強い千葉ブランドづくりと農商工連携の活用、事業
を進める際の留意点を中心に、役立つ情報もお伝えします。
まず、地域のブランド力とは何か。1つの基準として、消費者の評価から
順位づけする、都道府県の魅力度ランキング(株式会社ブランド総合研究所、
地域ブランド調査)を参照します。
主な調査項目は、認知度、魅力度、観光意欲度、訪問率、食品購入意欲度、
等で、北海道(1位)、京都府(2位)、沖縄県(3位)と並びます。上位の
道府県を見ると観光意欲度の影響が大きいことが伺えます。
メディアへの露出度が高く、多くの人が観光に訪れ、食を堪能し、お土産を
購入する。いい循環があることが、上位3道府県の共通点でしょう。この3道府
県の産品は物産展でも安定した人気があることから、地域のブランド力と県産
品の購入意欲度は相関があると考えられます。
さて、気になる千葉県は2013年度18位。首都圏近県が下位に集中することを
考えると健闘しているものの、鹿児島県(14位)、愛知県・熊本県(同点16位)
に次ぐ順位と見ると、まだ伸びしろがある、とも感じます。
ランクアップを目指すには、農商工連携の活用が最適です。
海の幸、山の幸、花や果物、自然、観光地。素材は豊富に揃っています。
地元の食材を活用し、商品化、メニュー化。観光地や自然と組み合わせたサー
ビスの提供。農商工連携の定番ながら、グルメと旅情報は、メディア露出する
頻度が高く、情報発信しやすいテーマです。
ただし、商品やサービスに、驚きや発見、オリジナリティ、が必要です。
事業を進める際には、既存の商品やサービスと差別化することを意識してくだ
さい。
次に、発見とオリジナリティがある、県内の商業施設の事例を紹介します。
富浦の枇杷倶楽部は、2000年道の駅グランプリで最優秀賞を受賞、全国的に
知られた場所です。富浦の名産「枇杷」にテーマを絞り、枇杷をモチーフにした
オリジナル商品やサービスを開発。お土産品といえばどこでも同じような品で、
地名だけ変えたものが主流の頃に、食品だけでなくボディソープ等の雑貨類まで
オリジナル開発したりと、とても画期的でした。
最近では、市原サービスエリア(上り)です。
TABETABI MARKETの看板どおり、房総を食べて旅する、がコンセプトです。
バイヤーが足で発掘し、開発した房総ならではの品が並びます。
スタッフのイチ押しはごま油で作ったラー油、へしこいわしのバーニャカウダ
ソース。これまでの千葉土産とは違った驚きのある品々です。
飲食エリアでは房総の魚介や山の幸を使ったオリジナル料理が楽しめ、房総の
食材や牧場の牛乳を使った焼きたてパン屋もあり、地域密着型、地域発信型サー
ビスエリアです。何より、知らなかった房総の味に出逢え、発見があります。
この2つの業態に通じるのは「強いオリジナリティ」であり、「編集力」です。
テーマを絞り込み、コンセプトに添った商品構成で県産品の魅力を新しい切り口
で発信することで、驚きや発見を感じさせるものになるのです。
農商工連携を進める上で重要な点は、オリジナリティがあり、発見があるもの
を開発すること。既存商品とは異なる切り口で再構成、編集することと言えます。
難易度の高い課題でもあり、テーマに応じて専門家を加えて事業を進めることも
必要でしょう。
農商工連携は、様々な補助金、サポート体制があることも取り組みやすい点
です。少しでも農商工連携、あるいは千葉県ブランド力を高める事業にご興味
をお持ちいただけた方は、お気軽にご相談されてはいかがでしょう。
国、県なども様々な仕組みがありますが、身近な千葉県産業振興センターでは、
「ちば農商工連携事業支援基金事業」が用意されています。
(1)県産農林水産物を活用した新商品・新役務づくり
(2)消費者ニーズに迅速・柔軟に対応する販路開拓の支援
(3)農林漁業支援技術の研究開発への取組、
上記分野への支援が目的の事業です。
ご興味のある方は以下のURLをご参照ください。
http://www.ccjc-net.or.jp/category_list.php?frmCd=26-2-0-0-0
きめ細かなサポートを活用し、驚きのある商品やサービスが、次々生まれるこ
とを期待しています。
LINK PLANNING 代表 石井徳子
(6次化コーディネーター、ブランディングプランナー)