公益財団法人千葉県産業振興センターのサイトへ
中小企業経営に役立つホットなメールマガジン!

千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

          ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
             ◆ 連   載 ◆
     ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
                    
                 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
          生き残りをかけた下請中小企業の自立化とは何か
                 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

              第1回 下請中小企業の自立化について

 不況や昨年末までの過激な円高の影響で、沢山の企業が海外に生産拠点を移し、
国内の工場を縮小したり閉鎖をしています。

 その結果、長年続いてきた親会社から下請中小企業への注文が、ある日突然
なくなる例は枚挙にいとまがありません。

 政府の中小企業施策においても、このような状況に対応すべく、「下請中小
企業の自立化」を重要テーマの一つに掲げています。

 「ある日突然」は今や、いつきてもおかしくない時代なのです。

 しかし、こんな時代でも、しっかりと業績を伸ばしている企業があります。

  そういう会社に共通しているのは、顧客の要求に応えるなかで自社の「強み」を
構築し、差別化に成功していることです。

 そういう会社は、どうして差別化に成功しているのでしょうか。

 「行列のできるラーメン屋」というのがありますが、なぜその店には沢山のお客さんが
集まるのか、考えてみれば大変興味深いことです。

 「新製品の開発」というのは、ラーメン屋さんが牛丼を始めることではありません。

「麺」と「スープ」と「具」の組み合わせという極めてシンプルで限られた制約
条件の中で「自店の独自性」を徹底的かつ「愚直」に考え続けたお店だけが「行列の
できるラーメン屋」になれるのです。

 ありきたりのラーメンしかつくれない店がありきたりの牛丼に手を広げても、
いいことはなにもありません。

 同様に、今、優れた業績の企業も、「愚直」に自社の強みを磨きあげてきた企業です。

 本屋さんのビジネスコーナーに沢山の著書が並んでいる「痛くない注射針」を
創った岡野工業さんもそういう企業の一つです。

 それが顧客のニーズにかなっていることであれば、顧客からの「難題」を簡単に
無理とはねつけず、自社の課題として前向きにとらえて取り組むこと。

 それが結果として自社の付加価値を高めるチャンスになるのです。

 今年はアベノミクスのおかげか、沢山の補助金の施策が目白押しですが、その
ひとつに先日第2次の締切りが終了した「ものづくり中小企業・小規模事業者試作
開発等支援補助金」がありました。千葉県でも沢山の企業の応募がありました。

 また、現在、第2創業をターゲットとした「創業補助金」が募集中です。

 補助金というのは公募が始まってから締め切りまでが短いので、泥縄式で申請
しようとしても、とても間に合いません。

 申請ができるのは、自社内に既にシーズを持っている企業だけです。
 
 それにも関らず、これだけの企業が応募したのはすごいことです。

 日本の中小企業のエネルギーはまだまだ大丈夫だと感じました。

 日本の下請中小企業には、個々には優れた技術を持ちながら、それが必ずしも
決算書に成果として現れず、苦労をしている企業が沢山ありますが、今年こそが
日本の製造業の再生の年になればと願うばかりです。

 次回、第2回は、下請中小企業の自社製品開発についてお話しいたします。




               第2回 下請中小企業の自社製品開発について


 下請企業であるメリットの一つに、新たな販売先を開拓する営業活動をしなくて
よいことがあります。

 しかし、実はこのメリットこそが「自立化」の大きな障害になるのです。

 一般的に、企業における受注業務の流れは次のようになります。

 営業計画(企画)⇒営業活動⇒引き合い⇒設計⇒見積り⇒受注⇒製作⇒納品

 これらの一連の流れを十分に対応できて初めて自立化が可能になるわけですが、
親会社から図面をもらってつくるだけの下請企業には、「見積り⇒受注⇒製作⇒納品」
しかありません。営業といっても社長の「御用聞き」だけです。

 こういう会社が自立しようとしても、いったいどこに何を売り込んだらいい
のかわからず、途方に暮れることになります。

 コスト的にも、営業不在の低販管費のコスト構造に慣れているため、現行の
販売価格ではとても販売費が回収できません。
 
 長年こうしてやってきた企業が自社単独で新製品を開発しようとしても、
市場の情報収集がうまくできず、「売れるはず」という仮説(思いこみ)の検証が
不十分なまま商品化まで突き進んでしまいます。

 その結果、発売後に想定した見込客を訪問しても、あるはずのニーズがなかったり、
ニーズがあっても、コストが全く市場に受け入れられないレベルになってしまっていて
失敗することがあります。

 しかも、気が付いたときには多額の投資をしたあとで、回収の見通しが立たない
ということも少なくありません。

 新製品開発の方向性を決めるのは、経営者の最も重要な仕事の一つです。

 そして一度方向性を決めたあとも、絶えず顧客目線による軌道修正が必要です。

 特に設備投資が必要な製品の場合は、徹底的な事前の検証が重要です。

 上記の「取引の流れ」の中で、今の自社に欠けているものは何か、普段から考えて、
しっかりと体制づくりをしておきましょう。


 最後に企業間連携による新製品開発についてお話します。

 企業間連携とは、独自技術を持つ企業が、それぞれの「強み」を持ち寄り、弱みを
補い合って一つの新製品を開発することです。

 最近、話題になった「下町ボブスレー」や深海探査機「江戸っ子一号」などは、
この代表的な事例です。

 もともと中小企業では、仲間取引などで複数の企業が協力し合うことは珍しい
ことではありません。

 しかし、この協力関係を必要に迫られてやるだけでなく、独自性と志を持つ企業が
意図的に集まって「新しい試み」を行うことで、脱下請への道を開くのです。

 政府も補助金等で、この「連携」をいろいろな形で積極的に支援しています。

 みなさんも身近なところから新しいシーズを見つけて挑戦してみませんか?

 次回、第3回は、新製品開発と販路開拓についてお話しいたします。




        第3回 新製品開発と販路開拓について

 私は、ある公的機関の販路開拓支援の仕事をしていますが、ここに持ち
込まれる案件に対応するなかで中小企業の経営者の方々に多く見られるのは、
「売る」ことには一生懸命であるが、「売れる」ための努力は不十分なことが
多いということです。

 ドラッカーは、マーケティングの目的について次のように言っています。

「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指す
ものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるように
することである」(マネジメント【エッセンシャル版】)

 「売る」ための努力と「売れる」ための努力は同じではありません。
 
 最も典型的な「売れる」ための仕組みはブランドです。ブランドが確立されれば
売るための努力をしなくても商品はひとりでに売れていきます。

 しかし、ご承知のようにブランドつくりは一朝一夕にはできません。ですから、
それ以外の「売れる」ための仕組みつくりが必要になります。

「売れる」ための努力をマーケティングの観点で言えば、次のようになります。

1.Product(製品):ニーズを的確にとらえた製品とブランド構築

2.Price(価格):市場に受け入れられる適切な価格設定

3.Place(チャネル):適切な代理店の開拓と営業マンが売りやすい仕組み

4.Promotion(販売促進):自社製品のよさを的確に伝える販促用具

 上記の1つ1つの努力を開発段階からしっかりと積み上げることで「売れる」
ための仕組みができていきます。
 
 この「売れる」ための仕組みのなかで最も身近なものにカタログ等の「販促用具」
があります。
 
 顧客の使用場面を具体的に想定したうえで、顧客目線で自社製品のよさを的確に
伝える販促用具を作るのは、簡単ではありません。
 
 これらの仕組みは顧客(見込客)との対話を繰り返す中で練り上げられていきます。

 売れないケースを見ていると、開発段階でほとんど顧客との対話がなされていないか、
極めて限られた顧客の意見しか聞いていないことが多いようです。

 私が過去に経験した事例においても、カタログに書かれている「顧客の悩み」が、
どの見込客を訪問しても見つからなかったことが何度かありました。

 また、カタログの製品機能に対する使用条件があいまいだったために、不適切な
機種を選択して客先の評価を下げたり、客先でデモ用の計測器が測定できなかった例も
ありました。

 カタログ以外にも、事前調査で見込客に価格の話をせずにニーズだけを聞いて売れると
思い新製品を販売し始めた企業が、価格の話をしたら高くて誰も購入しなかった事例もあります。

 発売前の段階での「売れる」ための努力が不十分だと、発売後にいくら「売る」ための
努力をしても、大きな成果はのぞめません。

 販路開拓の支援をしていても、それらの仕組みが既にある程度できている製品と、
そうでない製品とでは、結果が大きく違ってくるのです。

 これまで下請企業の自立化について3回にわたりお話をしてきました。
 
 最後になりましたが、より多くの下請企業のみなさまが、「自前の製品」を、
「自力で販売」できるようになって、自立化に成功されることを願い、今回の連載を
終了させて頂きたいと思います。
 
 ありがとうございました。            

               B.Gコンサルティング 代表 高屋敷 秀輝
                            (中小企業診断士)



このページの先頭へ一覧ページへ登録・解除ページへ