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「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】

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 中小企業金融円滑化法が果たした役割と法律終了後に中小企業がとるべき行動
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              第1回  中小企業金融円滑化法が果たした役割


 平成21年12月4日に施行された「中小企業者に対する金融の円滑化を
図るための臨時措置に関する法律」(以降「中小企業金融円滑化法」という)が
平成25年3月31日で終了しました。

 リーマンショック後の厳しい資金繰りに苦しむ中小企業への貸し渋り・貸し剥がし
対策として一定の効果を発揮したと言われているこの法律は、どのような効果が
あったのかを探ってみたいと思います。


 金融庁は中小企業金融円滑化法の利用状況を公表しており、平成24年9月末
時点では3,437,155件の借入金の返済条件変更が行われていると発表しています。
 
 実際の企業数にすると約30万社から40万社になり、中小企業の約1割がこの法律を
利用して返済条件の変更を行ったことになります。


 多くの中小企業がこの法律を使い条件変更を行って来た訳ですが、その効果は
どのくらいあったのかを企業の倒産件数の推移という面から見てみたいと思います。

 東京商工リサーチが発表している負債総額1千万円以上の全国の倒産企業の推移を
見ますと、平成21年が15,480件、平成22年が13,321件、平成23年以降は1万2千件台
となっています。
 
 このように倒産企業は明らかに減少しており、企業の倒産を防いだという点では
一定の効果があったと言えます。


 一方で、条件変更に対応した金融機関は、本来であれば貸出金の条件変更を行えば
企業の評価を下げることになっておりますが、中小企業金融円滑化法により企業の
評価を下げなくても良いことになっているため、不良債権と判定する貸出金が不良債権
でない形で評価されております。

 金融再生法に基づく開示債権(不良債権)の推移を見ても、地銀や第二地銀は
平成21年3月期以降増えることなく推移しており、信用金庫や信用組合についても
若干の増加はあるものの、僅かであり問題になる程ではありません。

 このように金融機関の決算内容にも良い影響を与えたことは確かだと思います。


 以上、中小企業金融円滑化法は、資金繰り改善に一定の効果を示し、倒産件数も
減少させ、更に金融機関にとってもメリットを与える等、果たした役割は非常に
大きかったと言えると思います。


 しかし、平成23年10月10日付の日本経済新聞には中小企業金融円滑化法で
不良債権の基準が緩くなったことから、本来であれば金融再生法に基づく開示債権
として表示されるべき債権が約44兆円あると記載され、それらは「不良債権予備軍」
となっていて、ここ5年間で1.5倍になったと指摘されています。

 また、帝国データバンクは、全体的な倒産件数は減少したものの、中小企業金融円滑化法
利用後に倒産する企業は年々増加傾向にあると指摘しています。

 表面の取り繕いは出来ましたが、中小企業の経営の実態は変わらずに厳しい状態が
続いているという事です。

 今後はこのような状態をどのように改善していくかに力が注がれて行くことに
なると思われます。




              第2回  中小企業金融円滑化法終了に向けてとった国の対策


 「中小企業者に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以降
「中小企業金融円滑化法」という)は、リーマンショック後の厳しい資金繰りに
苦しむ中小企業への貸し渋り・貸し剥がし対策として一定の効果を発揮し、平成
25年3月31日に終了しました。

 当初この法律は平成23年3月末で終了する予定でしたが、延長を繰り返し、2回目の
延長を行った平成24年3月以降には、法律終了を見越したいくつかの対策が発表されました。

 その一つが、平成24年4月20日に公表された「中小企業金融円滑化法の最終延長を
踏まえた中小企業のための政策パッケージ」になります。
 
 この政策パッケージには、
1.金融機関によるコンサルティング機能の一層の強化
2.企業再生支援機構(現在は地域経済活性化支援機構に改組)および中小企業再生
  支援協議会の機能及び連携の強化
3.その他の経営改善・事業再生支援の環境整備
の3点が盛り込まれていました。

 金融機関には積極的に中小企業の経営改善に関与してもらい、かつ経営改善等を
支援する公的機関を積極的に使えるよう対策を示したものでした。

 その後、平成24年11月1日には、金融担当大臣が「中小企業金融円滑化法終了
後も金融機関の対応は何ら変わることは無く、特に不良債権の定義は変えること
なく対応するので、貸付条件の変更依頼には法律終了前と同様な対応をするよう
金融機関には周知徹底をしている」と談話で説明しています。

 そして平成25年3月になると、今迄行ってきた対策を更に強固なものにするため
に、関係する省庁が連携し「中小企業金融円滑化法の期限到来に当たって講ずる総合
的な対策」を発表しました。

 内容は「1.金融機関による円滑な資金供給を促進する施策、2.中小企業・小規模
事業者に対する経営支援策、3.個々の借り手への説明・周知等」の3つを柱として
います。
 
 簡単に言い換えると、金融機関は今迄どおりに貸付条件の変更依頼に対しては断る
ことなく対応し、企業の経営改善に積極的に関与する。

 経営改善を行うための計画書の策定に関しては、国が設置する支援機関を活用し、
さらに計画策定が困難な事業者には国が認めた認定支援機関に計画策定の支援を
してもらい、一部費用も補助するというものです。

 そして、このような対策を講じていることを周知徹底させるため、相談窓口なども
数多く設置しています。
 
 これらの国がとった対策から言えることは、中小企業金融円滑化法は終了しますが、
金融機関には今迄通りの対応をするように指示をして、資金繰り等の安定化を図って
いる間に経営改善計画を策定し、その計画を確実に実施して借入金の返済が出来る
ようにしていこうと言うものだと思います。

返済を猶予するだけでなく、中小企業の経営改善にも国が積極的に関与した施策を
出してきたのではないでしょうか。





       第3回 中小企業金融円滑化法の終了後、企業は何をすればよいのか

 「中小企業者に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」
(以降「中小企業金融円滑化法」という)が終了し、まだ1ケ月しか経過して
いませんが、現時点では大きな混乱もなく平穏無事に推移しているように思わ
れます。
 
 これは国が採った対策が功を奏しているということだと思います。

 しかし、法律終了間際になって発表された「中小企業金融円滑化法の期限到来
に当たって講ずる総合的な対策」を利用している企業は、殆ど無いと思われます
ので、これからはこの対策を利用する企業が増えてくることと思われます。

 特に経営改善を行うための計画書の策定に関しては、国が認めた認定支援機関
から計画策定の支援を受け、その費用の3分の2を国が負担するということに
なっていますので、利用が増えて来るものと思われます。

 では、なぜ国は補助金を出してまで、中小企業の経営改善計画の策定を促すのでしょうか。

 それは、これから先、金融機関の返済を抑えて資金繰りを改善していただけでは
経営改善が進まないことが分かったからだと思います。

 経営改善にまで国が関与して、中小企業の経営改善を図っていこうというものだと
思います。

 中小企業金融円滑化法の施行により、金融機関には表面に出ない隠れた不良債権が
非常に多くなったと言われています。
 
 金融機関も経営が厳しくなっているところもあるのではないでしょうか。
 
 また企業の経営が好転しないと国の税収も増えず、雇用の拡大にも繋がりません。
 
 我が国にとってはあまり好ましい事では無いはずです。
 
 借入金の返済が出来ない状態が続いて良いはずがありません。
 
 これからどうなるかということを私なりに予想しますと、数年は金融機関の対応
は変わらずに推移すると思いますが、いずれは借入金の元金返済が困難な企業(不良
債権と判定される借入をしている先)は金融取引が止められる時期が来るのではないでしょうか。
 
 そうならないために今いろいろな対策を立てて、経営改善が出来るようにして来ている
のです。この機会を逃すわけにはいかないと思います。
 
 認定支援機関の力を借り、経営改善計画を策定し、さらにその後の計画実行のフォロー
アップまで国の補助が使えるのです。
 
 数年後に待ったなしの不良債権処理が始まるかも知れないのです。
 
 自助努力で経営改善が進まなければ、国の支援策(補助金等)を使い、早めに経営
改善を進めて下さい。
 
 これが今やるべきことだと思います。

 認定支援機関を使い経営改善計画書を策定し、その後のフォローアップを受ける
には、指定された手続きが必要になります。
 
 詳しくは中小企業再生支援協議会、または経営改善支援センターに連絡をしてみて下さい。
 
 3回にわたり、中小企業金融円滑化法の施行の経緯から終了後の対応までを記載
させていただきました。
 
 今後の参考にしていただければと思います。ありがとうございました。


中小企業診断士  戸塚 栄三郎






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