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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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          中小企業のクラウド・ファンディング
             〜活用方法と注意点〜
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         第1回 クラウド・ファンディングとは何か

 最近、インターネット等で見聞きするようになった「クラウド・ファンディング」。

 このクラウド・ファンディング(以下、「CF」)とは事業等を行うために
インターネットを通じて不特定多数の人から小口資金を集める仕組みを言います。
 クラウド=群衆(crowd)とファンディング=資金調達(funding)を組み
合わせた造語です。

 CFは、資金を投資する人に対し、資金を必要とする事業(プロジェクト)を
ネットサイトで紹介・手続きをするのが一般的です。
 このネットサイトの運営は2008年頃からアメリカで始まったとされています。
 CFを運営する会社の先駆けとして、INDIGOGO (http://www.indiegogo.com)
や、Kickstarter(http://www.kickstarter.com)などが有名です。
 この仕組みを使い、例えば「今までにない便利でかっこいいクーラーボックス
を開発する」というプロジェクトで13億円以上の資金が集まりました。

 日本では、東日本大震災があった2011年3月からCFの運営会社が本格的に立ち
上がったと言われています。
 当時は主に震災の復興支援がメインでした。
 例えば「南相馬市で絵本ライブや絵本棚作りをしたい」「被災で生き残った
神社を修繕したい」等が挙げられます。
 非常にボランティア精神に溢れ、社会的事業であることが特徴でした。

 一方で、社会的事業ではあるもののCFは資金を投資する仕組みですので、
資金を投資してくれた人に対しリターン(見返り)が必要となります。
 このリターンについて、日本ではプロジェクトに関わる物品やサービス等を
提供することが一般的です。
(「購入型」と呼びます。もちろん、配当金を提供する「投資型」、最終的
には利息をつけて資金を返済する「融資型」、株式を提供する「株式型」、
何のリターンも求めない「寄付型」もあります。)

 また、CFの運営会社にも成果に応じて手数料を支払わなければなりません。
 しかし、このようにリターンや手数料が求められても、CFは資金調達を必要
としている中小企業の皆様にとって、資金調達の有効な方法のひとつと言える
でしょう。

 では早速、CFを実行したいと思いがちですが、資金を集めるということは
当然のことながら容易なことではありません。
 資金を集めるにはネットサイトにおいて一定期日までに目標金額を達成しな
ければならなかったり、プロジェクトの目的や物語性を明確にして、ネット
サイトで分かりやすく表現をしなければならなかったりと注意すべき点が多く
あります。

 従いまして、まずは日本のCFネットサイトにアクセスをしてどのような
コンテンツになっているのかを複数見てみると良いでしょう。
日本での先駆けで最大級の規模を持つレディーフォー(https://readyfor.jp)や
家入一真氏が関わったキャンプファイヤー(http://camp-fire.jp)、サイバー
エージェントグループが運営するマクアケ(https://www.makuake.com)等が
有名です。

次回は「第2回クラウド・ファンディングを活用するには」でCFの実践について
お話をしたいと思います。





      第2回 クラウド・ファンディングを活用するには

 今回は、「クラウド・ファンディングを活用するには」と題して実際にどの
ように活用していけば良いのかご説明をします。

 前回は「クラウド・ファンディングとは何か」についてお話をしました。
 クラウド・ファンディング(以下、「CF」)は不特定多数の人から小口現金
を集める仕組みであることをお話しました(メルマガバックナンバー第508号
<1月15日発行>を参照下さい。)。

 不特定多数の方からお金を出してもらうためにはまず「目的」を明確にする
ことが必要です。
 そしてその目的が資金提供者の心を動かすような物語性(ストーリー性)が
大事になってきます。

 募金活動を想像して下さい。
 「障がい者のため」「震災に遭った方々のため」「発展途上国の子どもたち
のため」など必ず明確な目的があるので、お金を通して少しでも支援したいと
いう気持ちになります。

 CFでもこのような人道的支援を目的として資金を募るものもありますが、
もう少し幅広く目的を捉えています。
 では、例えばどのようなものが考えられるでしょうか。

・ものづくりを行うため…「町工場でユニークな新製品開発」「若手アーティ
ストの音楽CD制作」「新食材を使ったメニュー開発」

・物品を購入するため…「地域全体で読む絵本を購入するため」「古式インテ
リア備品を購入するため」

・建築や運営のため…「古民家を活用するため」「発展途上国に学校をつくる
ため」「老舗を継続させるため」

 この他、ミュージシャンの渡航費や地域イベントの開催等もあります。

 必要なことは目的を明確にして資金提供者に「支援をしたい」「ファンなの
で協力したい」と思って頂くことが大事です。

 CFは不特定多数からお金を集める仕組みと説明しましたが、実はそれだけ
ではありません。
 CFにより支援者やファンを増やすことで、人と人とのつながり(人的ネット
ワーク)が大きくなっていくこともあります。
 その結果、クチコミで知名度が上がったり、メディアに取り上げられたり、
お金以外の技術支援をしてもらったり、忌憚のない意見をもらったりと副産物
も多くあります。

 CFの目的が決まりましたらその活動内容(「プロジェクト」と言います)を
CFネットサイト(資金を投資する人に対し、資金を必要とするプロジェクトを
紹介・手続き等のサポートを行うサイト)に掲載する手続きをします。
 その際に「概要」「資金調達目標金額」「資金調達期限」「リターン設定」
等を決めて「説明文章」「画像」「動画」を準備します。
 特に「資金調達目標金額」については目標金額が行かないともらえない
「成功時報酬型」と集まった金額だけもらえる「実施確約報酬型」があります
ので注意が必要です。

 CFネットサイトからの審査を通りますと掲載となります。
 この際にCFネットサイト掲載を支援してくれるスタッフ(「キュレーター」
と言います)とやりとりをすることが多いようです。
 プロジェクトがCFネットサイトに掲載されるとプレスリリースサイトやSNS、
他の媒体へと転載されていきます。
 ただし、プロジェクトを立ち上げた本人もCFネットサイトに掲載した内容を
積極的に紹介していくことが成功への近道と言えるでしょう。

 調達期限が終了するとCFネットサイト運営会社から一定の手数料が引かれて
リターンを受け取ることができます。
 リターンを受け取る時には、資金を提供してくれた方への御礼を忘れないよう
にしましょう。

 次回は「第3回クラウド・ファンディング活用事例」で実際の事例を取り上げ
たいと思います。

※取材協力 (株)staircase  http://trunkmarket.jp/





       第3回 クラウド・ファンディング活用事例

 前回までにクラウド・ファンディング(以下、「CF」)とは何か、またその
活用についてご説明をしてきました。
 今回は実際にクラウド・ファンディングを活用した事例を紹介します。

【事例】『キウイとパパイヤ、マンゴース』
    〜南部アフリカ&南欧ツアードキュメント 2014〜 
    DVD制作のためのプロジェクト

 日本人アーティスト「キウイとパパイヤ、マンゴース」の2014年度ツアーDVD
を制作するプロジェクト

詳細はこちら http://trunkmarket.jp/project/s/project_id/8

●概要・きっかけ

 このプロジェクトはカメラマンである小暮哲也さんが日本人アーティスト
「キウイとパパイヤ、マンゴース(以下、KPM)」の南部アフリカ&南欧ツアー
のドキュメンタリーDVDを制作するために立ち上げられました。
 そもそも最初は日本人がアフリカでライブツアーを行うことは珍しいため、
記録に収めてテレビでは見られない面白いものを作りたいと思ったのがきっか
けでした。
 しかし、そのためには渡航費、制作費等がかかるためどうしたら良いか検討
していたところ、兼ねてより興味があったCFを活用しようと思い立ったのです。
 CFは資金を集めるだけでなく、KPMの知名度を上げることにもつながると考え
ていました。
 資金を得るという点においては「スポンサーをつける」という方法もありま
した。
 しかし、スポンサーは一般的にリクエスト事項も多く、自由に制作できない
デメリットがあったため、CFを選択しました。
 CF運営サイトは知り合いの関係で「Trunk Market」にしました。

●コンテンツ作成

 プロジェクトをサイトに記述するのは基本的にプロジェクトを立ち上げる
者が行います。
 小暮さんの場合はカメラマンであるため、映像や画像の掲載は難なくこなす
ことができました。 しかし、文章の記述には苦労されたようです。
 また、単純に掲載をすれば良いというものではなく、共感をしてもらうため
にどのようにストーリーを記述するか、誰がどういう目線で書くか等戦略が
重要となりました。

●プロジェクト掲載

 コンテンツが完成し、プロジェクトがホームページに掲載されると、開始
1週間で期待以上の反応がありました。
 すでにCFのファンが存在しており、見知らぬ方でも資金を提供してくれ
ました。
 もちろん、知り合いや友人からも反応がありました。
 しかし、ここで落とし穴がありました。
 知り合いではない方は比較的早めに資金を提供してくれるのに対し、
友人は期限が迫って資金を提供してくれるケースが多いということです。
 従って、友人に期限をしっかりと伝えておかないと期限切れになるよう
なケースもありました。
 これらのことからプロジェクト掲載は「最初の1週間」と「最後の1週間」
が重要な時期であることがわかります。

●告知の工夫

 今回のプロジェクトを掲載する上では、facebook等のSNS(インターネット
上の交流を通して、社会的ネットワークを構築するサービス) も告知として
重要なツールとなりました。
 CF運営サイトだけでは告知不足になりがちで、他の告知ツールをいかに使い
こなすかが重要と言えます。
 同時的に多く告知をしたりメディアミックス(異種の広告媒体を組み合わ
せて告知すること)を行ったり、シェア機能(情報の共有や拡散を行う機能) 
などを活用し口コミ効果を狙ったり、巧みな戦術が求められます。

●all or nothing契約(成功時報酬型契約)

 プロジェクトの掲載、告知など時間をかけて活動をしましたが、今回のプロ
ジェクトでは目標金額1350千円に対し、集まった金額は396千円でした。
 all or nothing契約(成功時報酬型契約)であったため、目標金額に到達で
きないと資金の提供が受けられないようになっています。
 従って厳しい結果となりました。

●今後の改善点

 今回の経験により、予算の設定をしっかりと行うことが重要であることが
分かりました。
 目標を高く設定して到達しない場合は全く調達できないですが、目標を低く
してはるかに高く資金調達ができた場合は成約となります。
 しかし、目標を低くして赤字になってしまうプロジェクトでは意味がありま
せん。
 従って、目標金額に関する予算をしっかり決めていくことが重要になります。
 また、CF運営サイトにもそれぞれ特色があります。
 あるCF運営サイトでは掲載コンテンツの書き方のこつまで教えてくれるところ
があり、また別のCF運営サイトでは、CFファンをしっかりと囲い込んでおり、
告知力に優れたりするところもあります。プロジェクト毎に使い分けることも
重要です。

※取材協力  コテツ/小暮哲也  http://koguretetsuya.net/
       (株)staircase  http://trunkmarket.jp/

 
             (株)コンサラート 代表取締役 岩岡  博徳





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