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千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


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     中小企業における商品・サービスのデザイン戦略について
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              第1回 デザインは第5の経営資産

■商品やサービスは「良くて当たり前」の時代

 最近経営におけるデザインに関連する本が増えてきました。
 先日お茶の水にある老舗の書店「丸善」で「時代はCEOからDEOへ」という
タイトルで、経営者向けのデザイン本のコーナーが設けられていたほどです。
 DEOというのはおそらくDesign Executive Officeのことでしょう。
 つまり「デザイン」の考え方を経営に導入し、デザイン思考ができるクリ
エイティブな問題解決者としての新しいタイプのリーダーという意味だと思い
ますが、これからはこんな新しいタイプの経営者が求められている、という事
なのです。

 私は千葉県をはじめ、様々な自治体の産業振興課などで中小企業の販促の
ためのデザイン、商品開発、ブランディングのお手伝いをしてきました。
 中小企業を対象にセミナーを行ったり、技術支援やコンサルティングをさせて
いただいています。
 中小企業の経営者と一緒にデザイン戦略を成功させるために奮闘してきましたが、
私がデザイン会社を起こした20年前から、経営にとってデザインは重要である事
を提唱してきました。
 ここ数年でやっとこの事が世間で語られ始めたようです。

 デザインはお金がかかるので、お金がない中小企業はデザインには手が回ら
ないと思われています。
 それゆえ、経営者が自分でホームページやチラシを作ったり、パソコンが使
える若い社員に作らせたりしている場合がとても多いのです。 

 多少ヘタでも、まあいいだろう。コストを抑えて作れればそれで良い、と思っ
ていませんか。
 現在では販促ツールやホームページを自作する環境が整い、イラストや写真の
フリーデータや、無料のデザインテンプレートも自由にダウンロードできます。
 プロが使っている10万円もしたソフトウエアも今では月額数千円で使い放題
です。
 今こそ自作でデザインをする時代の到来のように思えますが、これは全く間違い
です。

 今まではそれでも良かったのかもしれません。
 しかしこれからはデザインに力を入れるべき時代なのです。
 経営の資源はヒト、モノ、カネ、情報と言われています。
 今まではこれらが優れていれば、つまり良い商品・サービスを作れば売れた
時代です。
 しかし、今では優れている会社がたくさん存在しており、商品やサービスは
「良くて当たり前」の時代なのです。

 今まではおそらく中小企業はあか抜けないデザインであってもあまり支障は
なかったのかもしれません。
 中小企業というものはそういうものだと思われてきたし、多くのライバル会社も
みんな揃ってあか抜けなかったのだから。

 しかしインターネットが販促の媒体としてここまで大きな影響を持ってきた今、
ビジネスの環境が大きく変化したことに気づかなければなりません。会社の規模
に関係なく商圏範囲も広げる事が可能になり、個人のビジネスですら日本全国
を市場として展開できるようになりました。

 つまり多くの人に選ばれると同時に競争相手も多くなったということです。
 そして購買する側の方も、まずはネットで検索して調査してみるという買い
方が増え、劇的に増えた選択肢の前で何を買ったら良いのか頭を悩ましている
という状況です。


■デザインの役割とは?

 それでは消費者はどのようにしてその同じような「良い商品・サービス」
を購買するのでしょうか。選択の基準は何なのか?
 それは「良さそう」かどうかという事です。
 もう少し詳しく書けば
「あっちの会社の商品・サービスよりも良さそうかどうか」
「私にとってメリットがありそうかどうか」
 これが基準になります。
 だから自分の会社の商品やサービスがいかに他社と違うのか、何が魅力的
なのかをきちんと伝えなければなりません。

 デザインの役割とはサービス・商品の魅力を見える化することです。
 そして情報をわかりやすく、見やすく伝えるための重要な機能であり技術
です。
 これはグラフィックデザインだけではなく、パッケージデザインにも
言える事です。
 経営にはこの「自社の商品・サービスの情報を正しく魅力的に伝える力」
が必要です。
 ですからこれからは第5の経営資産としてデザインを考えていかなけれ
ばなりません。
 伝わらなければ存在しないのと同じなのです。

 デザインにお金をかけるという価値観が乏しい中小企業の経営者がまだ
まだ多いようです。
 自社の商品・サービスを販売するためのパンフレットやホームページが
あか抜けず、きちんとしたものを使っていないので、 せっかくすばらしい
商品・サービスを持っているのに売れないで困っている中小企業はたくさん
存在します。
 これはとてももったいないと感じています。

 千葉県の九十九里浜にほど近い場所に大正12年創業の鴨の孵化場がある
のですが、私はその会社のブランディングをお手伝いさせていただいた事
があります。
 それまでは社長が自作のホームページを使っていたのですが、新しい事業
や商品開発をするにあたり、会社のブランディングを刷新したいというご依頼
でした。
 社員数5人で100年の伝統と共に、先進の技術を持った鴨のエキスパート
なのですが、あか抜けないホームページからはそのような感じは伝わって
来ず、特長のない会社に見えました。
 しかし新しいデザインで情報の出し方やイメージを変えたところ、展示会
での反応が高くなったり全国から問い合わせが増えたり、テレビ局からの取材
もかなり多くなりました。
 ほどなく「千葉県経営革新優秀企業表彰」を受賞するなどビジネスを加速
させています。
 実際のデザインや社長のコメントなど、詳しい内容はこちらをご覧ください。

http://www.noiedesign.com/project/voice04.html
 ((株)ノイエデザイン ホームページに移動します)


 それでは、デザインがかっこ良ければ売り上げは伸びるのでしょうか?
実はそうではないのです。
 第2回はデザインとマーケティングのお話です。






     第2回 売れる販促ツールを作るためにデザインよりも大切な事


■売れる販促ツールに必要な2本の柱

 自社の商品・サービスの魅力を見える化するためには、魅力的に見せるため
の技術が必要です。
 ですからデザインの訓練がされていない素人が行ってはむしろ逆効果の場合
が多く、表現技術をマスターしている専門家に依頼するべきです。

 しかしそれは正論ではあるのだけれども、中小企業が銀行からお金を借りて
きて、デザインに投資するというのは現実には難しいのかもしれません。
 デザイナーに高いお金を払ってきれいなデザインを作ってもらっても売れな
かった、だまされた!という経営者の嘆きを私も今まで数多く聞かされてきま
した。
 だからデザイナーにお金をかけるのが怖いという気持ちも理解できます。

 なるべくお金をかけないで自分で「売れる販促ツール(チラシやダイレクト
メール、パンフレット、ホームページ)」をどうやったら作れるのか、このコ
ラムでは、そのポイントをお伝えしようと思います。

 プロのデザイナーに依頼すれば見栄えが良いデザインを作ってくれます。
 しかし、かっこ良ければ売れると思ったら大間違いです。
 私は中小企業の社長や個人経営の人が手作りでワードやパワーポイントを使っ
て作った手作りのチラシが、売り上げを伸ばした例をたくさん見てきました。
 プロのデザイナーに比べたら、デザインはひどいものです。
 しかし、それでも売れてしまうのはどういう事なのでしょうか。

 売れる販促ツールを作るにあたって必要な2本の柱があります。
 まず、「何を言うか」。その内容が重要です。
 どんな要素が必要なのか、それをどのような言葉にするのか、これらを「売れる
仕組み」であるマーケティングの技術を使って吟味する必要があります。
 そして、その情報を「どのように見せるのか」。
 読みやすいデザイン、お客様に見てもらえるデザイン、関心を寄せてもらえる
イメージをビジュアル化する技術がデザインです。

 マーケティングとデザインの双方がある一定のレベルがなければ売れません。
 そしてこの2本の柱のうち、より重要なのはマーケティングのほう「何を言うか」
です。
 デザインも大切なのですが、マーケティングが85点あれば60点くらいのデザイン
でも売れるのです。しかしその逆では売れません。

 実際多くのデザイナーは売れるかどうかなんてあまり関心がないし、どうすれば
売れるのかというマーケティングはそもそもデザイン教育でも教えないので知りま
せん。
 デザインが85点でもマーケティングが20点のカッコイイデザインを作ってしまう
から売れない場合が多いのです。


■販促ツールを作る時に最初に確認しておかなければならない3つのこと

 私はデザインを始める前に必ず最初に確認する3つのことがあります。
 これが明確でないと売れるために必要な「何を言うか」が定まりません。

・自社の強みは何か( コーポレート)
・ターゲットとなるお客様は誰か( コンシューマー)
・競合は誰か、他社との差別化は何か( コンペティター)

 これらの頭文字をとってマーケティングの3C分析と呼ぶのですが、これらに
関して時間をかけてヒアリングし、確認していきます。
 驚くことに自社の強みやターゲット、差別化要因があやふやな経営者がとても
多いのです。

 ターケットは誰なのか?
 そもそもターゲットの設定は間違っていないか。
 ターゲットが漠然としていると、商品・サービスの強みもあやふやになって
しまい、魅力が伝わりにくくなってしまいます。

 強みとは単に商品・サービスの特長ではありません。
 他社が真似できない技術や想い、ビジネスモデルです。
 つまり「あなたから買う理由は何なのか」をきちんと言えるかどうか。
 本当にそのことはあなたのターゲットが必要としていることなのか?

 そして競合他社の商品・サービスと何が違うのか。
 そのために、競合他社の調査も必要です。

 そしてどう、自社の商品・サービスがお客様の人生に貢献するのか。
 その証拠がちゃんと書かれてあるかどうか。
 
 そのような情報が明確になっていなければなりません。
 それらをどのように魅力的にわかりやすく見せるかを考慮し、デザインして
いきます。

 ここでは文字数に限りがありますので細かく書けませんが、マーケティング
の3C分析について詳しく解説した動画がありますので、参考にしていただければ
と思います。

http://www.noiedesign.com/hissu.html
((株)ノイエデザイン ホームページに移動します)

 それでは手作りの販促ツールがマーケティングが85点でもデザインが20点
だったらどうでしょうか?
 その場合は残念ながら売れません。
 信用度が低くなり、誰も見てくれないからです。
 次回は20点のデザインを60点くらいにレベルアップするためのデザインの
コツをお伝えします。

              



   第3回 販促ツールのデザインを20点から60点に飛躍させるテクニック

 売れる販促ツールを作るにあたって必要な2本の柱があります。
  まず「何を言うか」。その内容が重要です。
  これを売れる仕組みであるマーケティングの3C分析の軸で考えるというお話を
前回ご紹介しました。

  今回はもうひとつの柱、その情報を「どのように見せるのか」。
  読みやすくお客様に見てもらえるデザイン、関心を寄せてもらえるイメージ
 をビジュアル化する技術であるデザインのお話です。

■デザインの4つの要素

  チラシやホームページなどの販促ツールのデザインの要素は大きく分けて4つ
 あります。

 (1)レイアウト
(2)色彩
 (3)タイポグラフィー
(4)ビジュアル

 各要素についてデザイナーではない人が自分で作ったときに、陥りやすい失敗
のケースを簡単に説明します。

■レイアウトに関して

 販促ツールの紙面には文字や写真や地図など様々な要素があります。
  それらをどのように並べれば効果的なものになるのか、というのがレイアウト
 です。
  素人さんが作ったツールで犯しがちな間違いは情報をたくさん詰め込みすぎて
 ゴチャゴチャになってしまう事です。
  気持ちはわかりますが非常に読みにくい物になってしまい、どんなに言いたい
事を山盛りに載せても誰も読んでくれません。情報を整理して絞りましょう。

  それから画面周辺の4辺の空きが狭い事も特徴です。
  紙のぎりぎりまで情報を置いてしまうので、窮屈な感じになってしまいがち
 です。
  ここは15ミリほど空白のスペースを取りたいですね。

  そしてよく見られるのがメリハリがないという事です。
  メリハリというのは「変化」のことです。
  タイトルと本文と小見出しの文字の大きさが似たような大きさだったり、余白
の部分が同じような面積だったりします。
  見出しは大きく太く、小見出しも本文とはもっと差をつけて、余白も広い面と
狭い面と変化を付けるなど、工夫が必要です。
  大切な情報は目立たせ、そうでない情報は思い切って小さくし、メリハリを
付ける事で読みやすくなります。

■ 色彩に関して

 いろんな色を使いすぎてゴチャゴチャに見えてしまう、逆に色の種類が同系色
ばっかりでまるで単色印刷のような地味なイメージになってしまう、などという
 ケースが多いです。
  色に関してもレイアウトと同じで、 色のメリハリをつけましょう。
  飛び出て見える暖色系、引っ込んで見える寒色系、鮮やかな色、彩度の低い落ち
着いた色など、各色には性質や個別のイメージがあります。
  その組み合わせは無限です。

  ではどうやって配色していけば良いのかと言いますと、色の研究者がちゃんと
法則を作ってくれました。
  色彩のセンスがない人でも調和して見える配色のパターンがあるのです。

・トーンオントーン配色…同じ色相(色の種類)でトーン(色調)を変化させた配色

・トーンイントーン配色…色相は変えても、同じトーンでまとめた配色

・カマイユ配色…色相 、トーン共に近い色を組み合わせた配色 

・フォカマイユ配色…カマイユ配色よりやや色相差がある配色

・セパレーション配色…似ている色同士ですっきりしない場合や、反対色同士で
激しすぎるときに、その色の間にどちらにも影響しない無彩色などを入れて、
 中和する配色

・コントラスト配色…色相、明度、彩度のいずれも反対色を使った強い配色

・アクセントカラー…面積に大小をつけたり、反対色をラインで使用してアクセント
 とする配色

  これらの配色のパターンを組み合わせて色を決定していくと、良いでしょう。
これらの配色の見本をこちらのページに上げておきましたので、参照してください
http://r18.smp.ne.jp/u/No/358163/aFdAfHGFgni0_8788/358163_150326033.html
((株)ノイエデザイン ホームページに移動します)

■タイポグラフィーに関して

 タイポグラフィーとは「文字のデザイン」です。
  販促ツールで言えば、キャッチコピーやタイトル、本文や注意書きなど、文字
の部分のすべてに関わります。
  よく見られる失敗はフォントの種類を使い過ぎてやはりゴチャゴチャしてしまう
 というパターン。
  チラシでも多くて5種類ほどでまとめるとすっきり見えます。
  読みやすく美しい本文の文字組は難しい作業になりますが重要な部分です。
  行間を空け気味にすると読みやすくなります。
  文字を縦や横につぶして変形させる人もいますが、これはNGです。
  各フォントにもイメージがあります。
  そのイメージがターゲットや目的に合った物であれば良いのですが、ビジネスの
内容なのに平気でかわいらしいファンシーフォントを使うなどしてはいけません。
  これ、結構多いのです。

■ビジュアルに関して

 ビジュアルとは、写真やイラスト、図版など、全体のイメージの表現要素です。
  きれいなタイポグラフィーや配色でまとめてレイアウトしたとしても、ビジュ
 アルをどうするかによって「デザインの世界観」が違ってきます。
  そこに商品写真を大きく配置するのか、かわいい女性が商品を持っている写真を
配置するのか、猫のイラストが商品を説明しているのかなど、使用するビジュアル
案によって、その販促ツールの雰囲気やイメージやコンセプトが大きく違ってきます。
  何を使用するのかだけではなく、写真のクオリティやイラストのタッチによっても
雰囲気が変わります。
  この部分はセンスや経験が必要になってくるところかもしれません。
  プロの私たちでも相当悩む部分です。

  大切な事は、ターゲットが気に入ってくれるであろう「世界観」にフォーカスする
事です。
  ターゲットが20代の女性であればかわいい、おしゃれなパターンや色彩、フォント
 を使用する。
  ビジネス向けであれば信頼感のあるイメージの写真や色彩、文字のデザインに
 しなければなりません。

  以上デザインの4つの要素に関して簡単にポイントだけをお話ししましたが、
ここにご紹介したものだけを修正した場合でも、20点のデザインが60点くらい
 にはなると思います。
  一度ご自分の販促ツールをチェックしてみてください。
  まずは60点のデザインを作る事を目指しましょう。内容がきちんと錬られて
 いれば、効果を発揮する販促ツールに変われると思います。

  デザインのお話なので、文字だけでイメージが伝わったかどうかわかりません
 が、私のブログではデザイナーではない方がご自分でデザインをするときのポイ
 ントやコツを、もう少し詳しく図版を入れながらご説明しています。
  よろしければ参考にしてみてください。
http://r18.smp.ne.jp/u/No/358163/FCFva9GFgni0_8788/358163_150326034.html

http://r18.smp.ne.jp/u/No/358163/c5w211GFgni0_8788/358163_150326035.html
((株)ノイエデザイン ホームページに移動します)

            (株)ノイエデザイン 代表取締役 熊谷 淳一
                          (グラフィックデザイナー・販促コンサルタント)

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