公益財団法人千葉県産業振興センターのサイトへ
中小企業経営に役立つホットなメールマガジン!

千葉県産業情報ヘッドライン

「千葉県産業情報ヘッドライン」バックナンバー
【連載特集】


     ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
             ◆ 連   載 ◆
     ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

          ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
           「ものづくり」を考える
    〜他社にはない新商品・新技術開発の課題とポイント〜
          ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

    【第1回】 中小企業のモノづくり、ここがポイント!

 今日から3回にわたって、モノづくりの課題についてお伝えします。

 今日のテーマは、「他社との差別化」です。

 差別化と言えば、このごろテレビでは、某大企業が、「スマホつながりやすさ
No1」とうたって積極的にCMを繰り返していますね。

 他社に比べて、自社の製品はどんな点で優れていて、どんな価値がお客様に
支持されているのか、それが明確になっていること、それが差別化です。

 経営資源が乏しい中小企業の技術開発においては、この「差別化」が特に重要
になってきます。

 わかりやすい差別化ができなければ、お客様にとっては価格のみが製品の選択
基準になってしまうので、結局は価格競争や広告宣伝競争という「戦い」になって
しまうからです。   
 一方、お客様にとってNo1のベネフィット(価値)を提供できれば、優先的に
選ばれるようになり、利益をもたらします。

 つまり、戦わずして利益を出す方法、それが差別化なのです。

 中小企業の差別化において気をつけておきたい事は次の3つです。

(1)すべてにおいてNo1を目指すのではなく、顧客やニーズの対象を絞り込んで
No1を目指す

(2)製品の機能(◯◯ができる)で差別化するのではなく、あくまでも顧客が
得られるベネフィット(◯◯がうれしい)で差別化すること

(3)差別化のポイントが開発側のひとりよがりにならないようにすること


 これらのポイントをはずさないようにするためには、やはり徹底的に顧客の
ニーズを理解しようとする姿勢が必要となるのですね。

 ここで、差別化に成功した事例を紹介します。

 はんだ付装置の専業メーカーとして40年の歴史がある(株)ジャパンユニックスは、
国内はんだ付ロボット市場において7割のシェアを有し、海外でも欧米・アジア
地域に幅広く展開しています。

 同社のロボットはんだ付装置は、他社のはんだ付自動設備と比較して消費電力
が低く、小型で設置面積が小さく、さらに細かい条件設定に優れています。

 そのため、はんだ付の品質の高さや、プログラミングや条件設定の変更により
様々な工程に対応できる汎用性の高さ、といったメリットがあります。

 同社の差別化ポイントは、顧客の求める性能を作り込む「システムインテグレー
ション能力」です。

 専門のエンジニアが、はんだ付条件の設定やシステム立ち上げまで、ユーザー
を徹底的にサポートし、ニーズの理解に努めています。

 近年、車載用電子機器、スマートフォン、太陽電池、蓄電池等で、ハンダ付け
需要が高まっていますが、分野ごとに異なる専門性とノウハウが必要とされます。

 こうした多様なユーザーニーズに応えるため、同社は今後も長年にわたって
培ってきたノウハウを強みに、さらなる展開を図っていくとのことです。

 
 あなたも差別化という言葉はよく聞かれることと思いますし、すでに日々考
えていらっしゃることとは思いますが、上記の3つのポイントをふまえて、もう
一度考えてみませんか?


※朗報です!
 革新的なものづくり・サービスの提供等にチャレンジする中小企業・小規模
事業者を支援する、【中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新
事業(ものづくり補助金)】の公募が行われています。
詳しくはこちら↓ 
http://www.chuokai-chiba.or.jp/chuokai/topics/13/20140217monodukuri2.html





          【第2回】 技術課題の明確化

 中小企業のモノづくりのポイント、第2回目の今日は、「技術課題の明確化」
というテーマでお送りいたします。

 これは、筆者がまだ企業の若手研究者だったときの話です。

 身体の中で消えてなくなる抜糸不要の吸収性手術用縫合糸の開発を行ってい
ました。
 高分子合成が専門だった私は、手術用縫合糸の原料樹脂の改良に取り組み、
縫合糸の強度を高め、体内での分解速度が制御できる材料を作ろうとしました。
 分子設計をして、実験計画を組み、朝から晩まで合成実験を繰り返したのです。

 あるとき、本社から開発マンがやってきて言いました。

 「課題の設定がまちがってるな、、、。」

 「えっ?」

 その方は、数々のヒット製品を生みだした優秀な開発マンで、顧客とのコ
ミュニケーションの中から、ニーズやウォンツを深堀りし、何が売れるポイ
ントかを常に意識する人でした。

 彼いわく、吸収性手術用縫合糸は、強度や分解速度は現状のままで十分。
 むしろ、医者が手術の際に、手元で縫合糸の結び目を作って縫合部分まで
スムーズに引っ張りおろし、しっかり固定できるかどうかがポイントになって
いる。
 そのために縫合糸の表面のコーティング剤をどうするかが重要だったのです。

 私は早速、世の中にある生体に安全なコーティング剤を多数取り寄せ、
次から次へと縫合糸に塗り、結び目を作ってすべりおろす実験をひたすら繰り
返しました。
「合成実験ができないなんて・・・」と、心の中では少し不満が残ったのですが(笑)。

 数ヶ月後、やっとの事で最適化したコーティングを施した縫合糸が、ギリシャ
の高名な外科医の手に渡りました。

 「うーん、この糸は、フレンドリーだ。」

 結びおろし性能が高く評価された縫合糸は一気に売れ始めたのでした。

 もし、あのとき、開発マンに言われなければ、あのまま間違った技術課題に
向けて、時間とお金と労力をムダに費やしていたのかと思うと、ぞっとします。

 「はしごを上る前に、そのはしごが正しい壁にかかっているかを見極める」
ということですね。

 そして、いうまでもなく、はしごが正しい壁にかかっているかどうかを見極める
ためには、やはり、顧客とのコミュニケーションが重要となります。

 技術開発は、単に技術を開発すれば良いと考えて課題を考えるのではなく、
「事業」を開発していくという視点でとらえることが必要なのですね。


 ※お知らせです!

 革新的なものづくり・サービスの提供等にチャレンジする中小企業・小規模
事業者を支援する、【中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新
事業(ものづくり補助金)】の公募が行われています。

詳しくはこちら↓ 
http://www.chuokai-chiba.or.jp/chuokai/topics/13/20140217monodukuri2.html





       【第3回】 新商品・新技術の市場ニーズの把握

 中小企業のモノづくりのポイント、第3回目のテーマは、「新商品・新技術の
市場ニーズの把握」です。

 せっかく開発した新製品も、売れなければ全く意味がないどころか、大きな
損失を抱える事になってしまいます。
 モノづくり企業に限らず、事業を行う上では市場ニーズを把握することが最も
大切なことになります。

 マーケティングの天才と言われるジェイ・エイブラハムは言います。

 「市場だけが答えを知っている」

 つまり、どの製品が売れるかは、その時々の時代背景、出来事、情報、雰囲気等、
複雑な要因が絡み合ってどんどん変わっていきますので、どんな天才にもわからない
のです。

 だから、やることは一つ。
 「仮説を立てて検証する」

 つまり、「◯◯ではないかな?」と考えて、それを確かめるためにテストする。
 これしかないのです。

 市場へのテストを繰り返して成功した例をご紹介しましょう。

 埼玉県深谷市の赤城乳業は、「子供が遊びながら片手で食べられるかき氷」と
いうコンセプトで技術開発を行い、1981年、アイスキャンディー「ガリガリ君」
を発売しました。

 販売ルートをコンビニ中心にする等して当初10年間で売上を3倍にまで伸ばした
ものの、次第に他社が同様の商品を出すにつれ、売上にかげりが見え始めました。

 そこで、同社は数万人規模の消費者調査を実施し、ガリガリ君のキャラクター
デザインを刷新しました。
 また、在庫になってしまった各種フレーバーを虹のように並べたレインボー
売り場や、文具や玩具、漫画、ゲームソフト、温泉旅館とのコラボなど、様々な
試みを実施。
 さらに、ファンクラブ「ガリガリ部」の創設、奇抜なフレーバーの多頻度投入、
ガリ子ちゃんやガリガリ君リッチシリーズなど、精力的に展開していったのです。

 同社の井上開発本部長いわく、

 「ちょっとしたギャグのようなキャンペーン(小ネタ)をいろいろ試しました。
 しかし、小ネタは所詮、小ネタなので、売上が大きく上がる事はありません
でした。
 それでも、小ネタを出し続け、うまくいったものを続けて行った。
 そして小ネタの数が一定量(閾値)を超えたとき、急に売上が上がったのです」

 つまり、消費者のニーズに地道に答えていくうちに、「ガリガリ君は何かを
やってくれる」という認知が閾値を超えたのですね。

 しかし、ここで気をつけておかなければならない事があります。

 製品開発は、基本価値を満たした上でウォンツを満たす。基本価値をはずしては
いけないということです。

 アイスの基本価値は、「美味しい」ということ。いくら企画がおもしろく、
びっくりするようなものであっても、おいしくなければ売れません。

 社内の大反対を押し切って発売したコーンポタージュ味は、奇抜さが受けて
大ヒット。でも、シチュー味は大失敗だったそうです。

「やっちゃいました(笑)」

 明るく笑う井上氏の顔に、仕事を楽しみながら挑戦を続ける経営者としての
強さを感じました。

 さて、これまで3回にわたり、中小企業のモノづくりのポイントについてお伝え
してきました。
 共通して言えるのは、やはり原点は顧客視点の重要性ですね。

 もちろん、革新的な新製品を開発する場合は、顧客に答えを求めてはいけない
という意見もありますが、経営資源の乏しい中小企業は、まず、顧客ニーズに
フォーカスしてリスクを低減するのが王道です。

 今回の連載が少しでもお役にたてば幸いです。



         ライフ&ビジネスクリエイト研究所 代表  篠田 法正






このページの先頭へ一覧ページへ登録・解除ページへ