ネットビジネスも「ビジネス(商売)」である以上、『ビジネスプラン』を明確にしてどのように儲けるかを考える必要がある。多くの経営者は、頭の中でぼんやりとしたビジネスプランをもっていることが多いが、あまり良く整理されていないことが多い。きれいに明文化されていなくとも、ビジネスプランが整理されていれば、「これから何をしなければいけないか」、「どのようにお客様にアプローチしていくか」が明確になり、半年先・1年先を見据えて、今何をするべきかが判ってくる。これからネットビジネスを始めようとする場合には、まず、この『ビジネスプラン』を明確にすることから始めなければならない。
ビジネスプランは、以下のようなステップにもとづき考察する。
STEP1 | 自社の『こだわり』を明確にする |
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現在では、有名バーチャルモールに出店しただけでは、売上を伸ばすことはできない。リアル店舗の運営以上に、他社との差別化・集中化を図らなければ集客をすることができないのである。ここでいう差別化とは、競合他社と比較して、自社にしかない特徴(独自性)を前面に出して商品を販売することであり、集中化とは、自社の「こだわり」をキーワードとして商品展開を絞り込むことである。
■差別化・集中化の例
要素 | 例 | |
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差別化 | 商品の独自性 | ・商品そのものの独自性(オリジナル商品) ・デザイン・素材・色合い ・味・厳選素材・加工方法 ・希少性 |
販売方法の独自性 | ・商品の幅と深さがある(扱い品目数の多さ) ・商品に関する情報量の多さ ・ユニークな商品紹介 ・アフターサービスの良さ |
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集中化 (下線部が自社のこだわり) |
素材による絞込み | ・牛乳を素材とした乳製品全般 ・健康に良いといわれる天然鉱石のブレスレット |
最終製品による絞込み | ・大きいサイズの靴下 ・特定のデザインの輸入家具 |
特に、ネットショッピングを行う顧客は、キーワード検索によりネット上の商品を探すことから、購買目的(何を買いたいか、買う商品にどのような効果を期待しているか、購入価格帯)がはっきりとしているため、自社の『こだわり』を明確に伝えなければ、顧客の購入意思決定につなげることができない。
さて、ここで『自社のこだわり』とは何であるかを見出すことが一つの課題になると考えられる。
『自社のこだわり』は、これまで培ってきたデザインや製造技術、厳選した素材、商品知識等、顧客に商品を提供する上で、強くアピールすることができるものである。
例えば、昔ながらの製法を頑なに守っている食品製造会社の場合には、「昔ながらの作り方と味を頑固に守り続ける」ことが顧客にアピールできる『こだわり』になる。なお、このような「こだわり」は、全ての人に受入れてもらう必要はなく、受入れてくれる人達だけを顧客として絞り込むことが必要である。
STEP2 | 何を売るのか(対象商品の選定) |
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STEP1で明確になった『自社のこだわり』を的確に反映している商品を中心に販売する。
現在リアル店舗を運営している企業が、ネットショップを出店する場合に、リアル店舗で扱っている商品全てを対象とする必要はなく、自社のこだわりを強く反映することができる商品展開とすることが重要である。
例えば、「鮮度にこだわる」食品を販売する店舗の場合には、鮮度が味を左右する商品をネットショップで販売することは避けるべきである。ネットビジネスにおける商品販売では、商品を配送しなければならず(デジタルデータの販売を除く)、早くても翌日にならなければ顧客に商品が渡らないからである。このような店舗の場合には、「××という商品は、朝に加工して、その日のうちに食さなければ鮮度が落ちて、おいしくありません。ですから、商品××は、ネットショップでの販売をしません。」と販売しない理由をホームページ上で明確にすることにより、「徹底的に鮮度にこだわる」姿勢を強調することが必要である。
このように、『自社のこだわり』と販売する商品展開は密接に関わってくる。ここでいう「こだわりの商品への反映」は、オリジナル商品のように他社との差別化ができる商品が多ければ、オリジナル商品を中心に差別化された商品展開を行うことができるが、差別化要素が少ない商品を多く扱う場合には、販売方法において差別化を行う必要がある。
STEP3 | 誰に売るのか(対象顧客の選定) |
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ネットビジネスにおいては、以下のような特徴から、リアル店舗が持つ限界がなくなり、対象顧客層を拡大することができる。
- 24時間年中無休の営業が可能になる
従来の営業時間では取り込むことができなかった顧客層を対象とすることができる。
例えば、従来の顧客は主婦層が中心であったが、学生やOL・サラリーマンを対象とすることができる。 - 日本全国が商圏になる
リアル店舗の場合には、商圏(ビジネスにより商圏の範囲は異なる)の制約があったが、ネットビジネスでは、商圏の制約はなくなる。 - 購買者個人を特定することができる
ネットビジネスの場合には、商品の配送が発生するため、顧客の基本情報(住所、氏名等)を得ることができる。
1. および 2. の特徴により、顧客層は拡大するが、必ず3つの要素にもとづいてターゲットとする顧客を絞り込まなければならない。
「商品そのもののオリジナリティ」、「厳選した素材や商品」、「古くからの伝統的な製法」等の商品のこだわりや「他社にない品揃え」等の販売方法に対する自社の「こだわり」をハッキリと顧客に伝え、自社のこだわりを支持してくれる顧客をターゲットとする事が必要である。
さて、ターゲットになる顧客を絞り込む際、顧客の基本属性(氏名、年齢、性別、住所等)のみでなく、顧客が置かれている状況や心理的な状況を考慮してターゲットを絞ることが重要である。
STEP4 | いくらで売るのか(価格戦略の決定) |
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ネットショップで販売する商品がすでに決まっている場合には、その商品の価格帯とターゲットとする顧客が受入れるであろう価格帯が適合しているかを考える必要がある。また、これから販売する商品を決める場合、あるいはネットショップ向けの商品を開発しようとする場合には、ターゲットとする顧客と商品との関係を勘案しながら価格帯を検討する必要がある。例えば、ターゲット顧客を「月に1回は旅行をしている定年退職を迎えた60歳代の老夫婦(アクティブ・シニア世代)」と設定した場合、旅行に関連する商品は、比較的高めに価格を設定することが可能になる。一般的に、このようなアクティブシニアに分類される顧客層は、機能性が高いと感じられる商品には、価格より質を重視する傾向にある。
なお、商品の価格帯を決定する際に、他社製品と差別化ができるかどうかが商品特性の重要なポイントになる。ネットでは、価格比較が非常に容易に行えるため、差別化されない商品を販売する場合、価格競争に陥りやすいので注意が必要になる。
STEP5 | どう知ってもらうか(広告宣伝方法の決定) |
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現在では、検索エンジンを利用してキーワード検索を行うと、数千以上のサイトが検索結果として表示される。このような状態では、ネット上にショップを開業しただけでは、顧客が来店することはない。顧客に自社のネットショップに来てもらう必要があるのだが、ここでは、「新規顧客への対応」と「既存顧客への対応」に分けて検討する。
■新規顧客への対応
- 費用をかけて実施する活動
(1)メールアドレスを購入して、『未承諾広告メール』の配信
(2)懸賞キャンペーンの実施
(3)アフィリエイトプログラムを利用して、人が集まるサイトからの集客
(4)既存広告媒体への掲示(1)『未承諾広告メール』においては、メール受信者が必ずしも自社の商品に興味があるとは限らないため、費用対効果はあまり期待できない。また、(2)懸賞キャンペーンは、懸賞目的の応募者であることが多く、継続購入にならない場合があるので、注意が必要である。
- 費用をかけずに実施する活動
(1)検索エンジン対策(SEO)の実施
(2)検索エンジンへの登録(一部有料の検索エンジンもある)
(3)無料電子モールへの登録
(4)自社商品に関連するテーマのサイトとのリンク
(5)ターゲット顧客が集まるサイト(例えば、同じ趣味を持つ人達が集まるサイト)とのリンク一般的に、検索サイトの結果は、2〜3ページ程度までしか閲覧しないと言われていることから、キーワード検索の結果、上位に表示されることは非常に重要なポイントである。このことから、(1)検索エンジン対策および(2)検索エンジンへの登録は、新規来店を促すためには必須である。
また、(4)、(5)については、自社商品に関連するテーマに関心が高い人達が集まっているので、集客の効果は非常に高い。
■既存顧客への対応
- メールマガジンを発行して、定期的に商品の情報提供を行なう
- ターゲット顧客を絞り込み、限定的な商品情報を提供する
- 試食会、イベント等の開催により、既存顧客との情報交流を深める
既存顧客に対しては、再来店を促すために、ショップからのアプローチが必要になる。すでに商品購入をしていたり、顧客属性が判っていることから、広告宣伝活動は比較的し易く、効果も期待できる。